
FP&Aのキホンのキ
~原価の費目別計算はどうやるの?~
原価はどのような手続きで計算するのか?
原価の計算において製造原価は、原則としてその実際発生額をまず費目別に計算し、次いで原価部門別に計算し、最後に製品別に集計します。
【図1】原価計算の手続き
(1)費目別計算
原価の費目別計算とは、一定期間における原価要素を費目別に分類・集計する手続きです。財務会計における費用計算であると同時に、原価計算における第一次の計算段階です。
(2)部門別計算
原価の部門別計算とは、費目別計算において把握された原価要素を、原価部門別に分類・集計する手続きです。費目別計算に次ぐ後の原価計算における第二次の計算段階です。
(3)製品別計算
原価の製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し、単位製品の製造原価を算定する手続きです。部門別計算に次ぐ原価計算における第三次の計算段階です。
今回は、原価計算の第一次計算段階としての費目別計算をご紹介します。
原価と認識しない非原価項目とは何か?
費目別計算の前提として、原価計算においては、原価と認識しない非原価項目があるので注意してください。企業会計審議会が定めた「原価計算基準」で非原価項目は、下記のように示されています。
- 次の資産に関する減価償却費、管理費、租税等の費用
(1)投資資産たる不動産、有価証券、貸付金等
(2)未稼動の固定資産
(3)長期にわたり休止している設備
(4)その他の経営目的に関連しない資産 - 寄付金等であって経営目的に関連しない支出
- 支払利息、割引料、社債発行割引料償却、社債発行費償却、株式発行費償却、設立費償却、開業費償却、支払保証料等の財務費用
- 有価証券の評価損および売却損
(二) 異常な状態を原因とする価値の減少、例えば
- 異常な仕損、減損、たな卸減耗等
- 火災、震災、風水害、盗難、争議等の偶発的事故による損失
- 予期し得ない陳腐化等によって固定資産に著しい減価を生じた場合の臨時償却費
- 延滞償金、違約金、罰課金、損害賠償金
- 偶発債務損失
- 訴訟費
- 臨時多額の退職手当
- 固定資産売却損および除却損
- 異常な貸倒損失
(三) 税法上特に認められている損金算入項目、例えば
- 価格変動準備金繰入額
- 租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額を超える額
(四) その他の利益剰余金に課する項目、例えば
- 法人税、所得税、都道府県民税、市町村民税
- 配当金
- 役員賞与金
- 任意積立金繰入額
- 建設利息償却
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
簡単にいえば、下記などが非原価項目です。
(1)営業活動に関わらないものや財務活動に関わるもの
(2)異常な状態で発生したもの
(3)税法で特に認められているもの
(4)利益剰余金の増減にかかわるもの
逆にいえば、正常な状態での営業活動に関わって発生したものが原価項目といえます。原価の費目別計算では、この非原価項目を除いた原価を対象として計算を行います。
費目別計算はどのように行うのか?
前述のように原価の費目別計算とは、一定期間における原価要素を費目別に分類・集計する手続きです。
財務会計における費用計算であると同時に、原価計算における第一次の計算段階です。
費目別計算においては、形態別分類(材料費、労務費、経費)を基本に、直接費と間接費、変動費と固定費、管理可能費と管理不能費、さらに機能別分類など必要に応じて分類します。
費目別計算における原価の分類は次章で説明します。
なお、「原価計算基準」のおいては、費目別計算における分類として下記が示されています。
直接材料費
主要材料費(原料費)
買入部品費
直接労務費
直接賃金(必要ある場合には作業種類別に細分する)
直接経費
外注加工賃
間接費
間接材料費
補助材料費
工場消耗品費
消耗工具器具備品費
間接労務費
間接作業賃金
間接工賃金
手待賃金
休業賃金
給料
従業員賞与手当
退職給与引当金繰入額
福利費(健康保険料負担金等)
間接経費
福利施設負担額
厚生費
減価償却費
賃借料
保険料
修繕料
電力料
ガス代
水道料
租税公課
旅費交通費
通信費
保管料
たな卸減耗費
雑費
間接経費は原則として形態別に分類するが、必要に応じ修繕費、運搬費等の複合費を設定することができる。
※企業会計審議会制定の「原価計算基準」より抜粋
費目別計算で原価はどう分類するのか?
費目別計算は、(1)形態別分類を基本に、(2)機能別分類、(3)製品との関連における分類、(4)操業度との関連における分類、(5)原価の管理可能性に基づく分類など、必要に応じて分類します。
(1)形態別分類
形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類です。原価要素は、下記の分類によって材料費、労務費および経費に分類されます。
【材料費】
材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分します。
固定資産となるモノ以外のモノを買って消費すれば材料費になります。
1. 素材費(または原料費)
2. 買入部品費
3 .燃料費
4. 工場消耗品費
5. 消耗工具器具備品費
【労務費】
労務費とは、労働用役の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分します。
1. 賃金(基本給のほか割増賃金を含む)
2. 給料
3 .雑給
4. 従業員賞与手当
5. 退職給与引当金繰入額
6. 福利費(健康保険料負担金等)
【経費】
経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分します。
原価要素の形態別分類は、財務会計における費用の発生を基礎とする分類ですから、この分類に基づいて、実務的には勘定科目が設定されます。したがって、原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による勘定科目別の発生データを受け取り、これに基づいて原価を計算します。
(2)機能別分類
機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類です。原価を製造原価と販売費および一般管理費に分類することは、この機能別分類に該当します。機能別分類では、試験研究、開発、調達、製造、物流、販売、アフターサービス、管理等の企業活動における機能に応じて、分類・細分化していきます。
- 材料費:主要材料費、修繕材料費・試験研究材料費等の補助材料費、工場消耗品費等
- 賃金:作業種類別直接賃金、間接作業賃金、手待賃金等
- 経費:各部門の機能別経費等
(3)製品との関連における分類
製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類です。下記の分類基準によって、原価は直接費と間接費とに分類します。
【直接費】
直接費は、原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識できる原価です。
簡単にいうと、製品を作るためにいくらかかったかが明確にわかる原価です。また、直接費は、形態別分類と合わせて直接材料費、直接労務費および直接経費に分類し、さらに適当に細分化されます。
【間接費】
間接費は、原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識できない原価です。
簡単にいうと、製品を作るためにいくらかかったかが明確に分からない原価です。また、間接費は、形態別分類と合わせて間接材料費、間接労務費および間接経費に分類し、さらに適当に細分化されます。
※加工費=直接労務費と製造間接費とを合わせ、または直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費と呼びます。
直接費と間接費を判断する一定単位の製品とは、一単位の製品を指すのではなく、相対的に一定単位の製品グループ(様々な大小のグループ)を指している点には注意してください。例えば、グループに上下関係がある場合、原価の発生が下位のグループで直接的に認識できなくても、下位グループを含んだ上位グループで直接的に認識できる場合、上位グループに対しての直接費が存在するということです。
(4)操業度との関連における分類
操業度との関連における分類とは、操業度の増減に対する原価発生の態様による分類です。ここでいう操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいいます。下記の分類基準によって、原価は固定費と変動費とに分類します。
【固定費】
固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価です。
【変動費】
変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価です。
【準固定費と準変動費】
ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これを超えると急増し、再び固定化する原価要素、例えばば監督者給料等は準固定費といいます。また、操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素、例えば電力料等は準変動費といいます。準固定費または準変動費は、固定費または変動費とみなして、これをそのいずれかに帰属させるか、もしくは固定費と変動費とが合成されたものであると解し、これを固定費の部分と変動費の部分とに分解します。
(5)原価の管理可能性に基づく分類
原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかによる分類です。下記の分類基準によって、原価は管理可能費と管理不能費とに分類します。
【管理可能費】
管理可能費とは、原価の発生が一定の管理者にとって管理可能な原価です。
【管理不能費】
管理不能費とは、原価の発生が一定の管理者にとって管理不能な原価です。
一定の管理者とは相対的な見方であり、下位の管理者層にとって管理不能費であるものも、上位の上級管理者層にとっては管理可能費となることがあるので注意してください。
まとめ
今回は、FP&Aのキホンのキとして原価計算の第一段階の計算である「費目別計算」の概要をご紹介しました。詳細については別途お問い合わせください。なお、費目別計算の詳細としての材料費計算、労務費計算、経費計算は別途ご紹介いたします。




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この記事の執筆者
-
上山 吾郎経営管理事業部
マネージングディレクター -
佐藤 美穂子経営管理事業部
ディレクター -
徳永 大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション