FP&Aへの旅

FP&Aを支えるデータ整備のポイント

当社のご支援先のFP&A業務ご担当者の方々から、
「昨日ニュースで見た○○の動向。当社のメイン事業××に影響がありそうだけど、 3か月前の連結パッケージの情報しかないため損益への影響が試算できない…。」
「△△事業の見込みはよいけれど、実績が出るたびに下振れしがち。 毎回、もっともらしい理由が説明されるけれど、次の実績が出るとまた下振れしている。 原因を探りたいけれど詳しい情報が取れない…。」
「そもそも決算が締まるのが遅く、対策検討がいつも後手後手になってしまう…。」
というような困りごとをよく耳にします。
 
皆様の会社では、上記のような困りごとを感じたことや、耳にしたことはないでしょうか。
また、経営層が意思決定に必要としているデータの整備はできていますでしょうか。
今回は、日本企業の経理財務部門DX化の現状を見たうえで、意思決定のためのデータ整備のポイントについてご紹介します。

意思決定におけるデータ利活用の現状

昨今、日本企業の中でも経理財務部門のDX化に向けて、様々な取り組みがなされている状況かと思います。しかし、意思決定におけるデータの利活用という観点で見た時に、果たしてDX化が進んでいるといえる状況でしょうか。

下記の調査では、「システム統合が進んでおり、全社横断で各種データを入手できる仕組みがある」と回答したのは全体のわずか8%にとどまり、半数以上の企業がシステムデータの分散により、定型業務以外では必要なデータを呼び出す仕組みがまだ構築できていないのが現状だとわかります。データの民主化が叫ばれて久しいものの、まだ部門ごとのサイロ化されたデータが根強く残っているといえるでしょう。

【図1】日本企業の経理財務部門DX化の現状

このような状況の中で、経営・ミドル・現場における情報の分断が見られるようになってきています。
ミドル層・現場層では、DX推進によってセルフBIなど様々なツールが普及し、リアルタイムで事業データを分析する動きが加速しています。一方で経営層においては、未だに月一回のExcel報告資料を頼りにしているケースが多く、また意思決定プロセス自体の見直しもされていないため、せっかく蓄積された事業データが経営判断に充分に活かしきれていません。

事業環境が刻々と変化する今日において、情報の分断は意思決定スピードそのものを鈍らせます。
DXのゴールはシステム導入ではなく、データに裏打ちされた迅速な経営における意思決定の実現です。
我々は、この意思決定に資するデータ整備をどのような観点で検討・実施していくべきでしょうか。

【図2】意思決定におけるデータ利活用の現状

経営層の意思決定に必要なデータとは

データ整備の方法について検討する前に、まずは経営層が意思決定に必要としているデータとはどのようなものかを理解する必要があります。何が起こるかわからないVUCAと呼ばれる現代において、経営層が事業環境の変化をいち早く捉え、機動的に経営の意思決定をしていくためには、「正確で、詳細で、鮮度のよいデータ」が必須です。具体的には下記①~③となります。

① 正確なデータ:
「正確性」が無ければ、分析結果や報告も信頼性を欠き、誤った判断を導く可能性があるので、当然重要な要素です。ここでいう「正確性」とは、子会社・事業側の単体業務システムと一致したデータであるという意味です。データ収集に際し、人手を介して加工されたデータでは事業実態を正しく把握する事ができないので、基本的には生の事業データを捉えることが重要になります。

② 詳細なデータ:
勘定科目、部門、年月といった最低限の仕訳情報だけでなく、取引先、品目、地域など、様々な観点からの分析のための詳細なデータが必要です。例えば、売上に関する分析では、商品別、地域別、顧客別の詳細な実績分析結果をもとに、市場や顧客セグメントに対する戦略を考えるということが可能になります。

③ 鮮度のよいデータ:
「鮮度」は迅速な意思決定を支援するために不可欠な要素です。当然、データが新しければ新しいほどよいですが、なんでもリアルタイムの最新データが必要かというとそうではなく、データ収集頻度は事業特性や費用対効果による見極めが必要です。

【図3】意思決定支援に必要なデータ

データ整備のポイント

「正確で、詳細で、鮮度のよいデータ」を収集するために、どのような観点でのデータ整備の検討が必要になるか、いくつかご紹介したいと思います。企業が意思決定のためのデータを収集・統合する方法は、大きく4つのパターンに分類できます。

【図4】グループ経営情報の収集・統合方法は大きく4パターン

まずLv.1は、Excelにて各社のデータを収集し、BIにて統合する方法です。
Lv.2は、統合データベースに各社の残高データを取り込み、統合する方法です。この二つの方法では、各社のサマリーされたデータ、もしくは残高データしか収集できず、かつタイムリーに統合することが困難なため、冒頭に記載したように、経営層には定期的にExcelにサマリーされた報告資料しか届かず、正確な情報を元にした意思決定ができている状態にはなりえません。

次にLv.3は、各社の生の事業明細データを統合データベースに取り込み、統合する方法です。この方法であれば、経営層がリアルタイムで明細レベルのデータを確認することができ、正確な情報を元にした意思決定ができる状態になります。

最後にLv.4は、全社で同一インスタンスのERPを使用することでデータを統合する方法です。この方法は統制レベルも高く、経営層がリアルタイムで正確な情報で意思決定ができる状態であり、最終的に目指すべき姿だと思います。しかし、特にグローバルなグループ企業において、各国の事業やシステムの違いにより、データ形式が異なるということが往々にしてあります。その点を踏まえると、まずは三つ目のパターンとして挙げた、明細レベルのデータ統合を目指すべきだといえます。

また、「正確性」を担保するデータ整備には、勘定科目の統一やマッピングが必要不可欠です。各社からデータを集めていくと、データ名称・コードの違いなどから勘定科目の総数は膨大になります。全てをマッピングするのはあまりに非効率です。金額的な・質的な重要性を見極め、メリハリをつけたマッピングをすることがポイントです。

ある企業の例では、売上原価科目が総数808科目あったものの、金額面で80%のカバーであれば全体の2%の20科目、95%のカバーであれば全体の7%の55科目で済むということがわかりました。販管費科目についても同様に、総数228科目のうち、金額面で80%のカバーであれば全体の8%の18科目、95%のカバーであれば全体の21%の47科目で済み、大幅に絞り込むことができるということがわかりました。正確なデータを準備することを目指しつつも、経営判断を見誤らない範囲を、金額面や質的重要性から見極め、精度を絞り込むということも重要です。

【図5】メリハリをつけたマッピング

今回はFP&Aを支えるデータ整備のポイントについてご紹介しました。
詳細については、是非お問い合わせください。

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この記事の執筆者

  • 富重 成顕
    富重 成顕
    経営管理事業部
    マネージャー
  • 矢島 紀保
    矢島 紀保
    経営管理事業部
    シニアコンサルタント

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