製品開発段階での原価企画では遅すぎる!
~原価企画の超絶フロントローディング~

製品開発のフロントローディングの重要性が訴えられてから久しいですが、実現できている企業は多くありません。また、製品原価の8、9割は製品開発初期段階で決まると言われていますが、製品開発初期段階からの原価企画では圧倒的なコスト競争力の実現に限界があります。なぜなら、製品を構成する重要な要素技術が既に決まっているからです。
 
今回は、原価企画を先行技術開発や要素技術開発から実施することにより、圧倒的なコスト競争力を獲得する「原価企画の超絶フロントローディング」のポイントをご紹介します。

原価の多くは商品企画・製品設計以前で決まる

一般に、原価企画は商品企画段階から開始すべきと言われています(現実には中々できていない会社も多く見受けられますが)。では、原価企画は商品企画段階からで十分でしょうか。

通常、商品企画段階では、販売予定時期に適用される要素技術や生産技術をベースに企画が立てられます。換言すれば、商品企画段階では製品を構成する重要な要素技術等が既に決まっているということです。例えば、マツダであればSKYACTIVと呼ばれるエンジン群を先行的に研究開発し、その後これらのエンジン群を搭載したモデルを企画・開発して販売しています。このように重要な要素技術を先行的に研究開発して、この技術を搭載した製品を開発することは一般的といえます。

【図1】一般的な先行技術開発・要素技術開発と製品開発のイメージ

しかし、製品に搭載を予定している要素技術を前提に原価企画を開始しても、既に要素技術ごとのコスト低減の幅には限界があります。
製品原価の8、9割以上は出図前の商品企画・製品設計で決まると言われますが、その段階で製品に適用される要素技術や生産技術が決まるから原価が決まるということです。つまり、適用する要素技術や生産技術に対して原価企画を実施すれば、その8、9割に大きな影響を与えることができるということです。

特に、組立系メーカーでは、製品を構成する主要な基幹技術(モジュール、基幹部品等)が原価に占める割合が非常に高いため、これらの技術開発段階での原価企画は非常に有効な手段と言えます。

原価企画の超絶フロントローディングとは何か

原価企画の超絶フロントローディングとは、製品を構成する主要な先行技術や要素技術の研究開発段階から原価企画を開始することにより、圧倒的なコスト競争力を実現することです。

【図2】原価企画の超絶フロントローディング

しかし、研究開発段階では技術面の実現性検討に重点がおかれるため、コスト面での検討が疎かになりがちです。例えば、「この技術を開発したら、差別化できるから、少々高くついてもなんとか採算にあう」といった甘い認識でいることが多いのではないでしょうか。

原価企画の超絶フロントローディングは、研究開発段階からコスト面・収益面での検討を行い、コスト競争力のある技術を生み出すことを目的とします。

超絶フロントローディングを実現する原価企画部門とは

当社の経験では、原価企画部門が独立した専門組織(CoE:center of excellence)として原価企画を強力に推進している企業は多くありません。しかし、研究開発や先行技術開発、要素技術開発に対して原価企画を行うためには、強力な原価企画部門が不可欠です。この原価企画部門が、先行技術開発・要素技術開発 → 製品企画・開発 → 量産・販売 → アフターに至るまで、コストの番人として一気通貫で関与しなければ、圧倒的で革新的なコスト競争力は実現できません。

また、研究開発段階での研究者や技術者と同等に議論できる専門性を持たなければいけません。自社だけでこうした人財を保有することが十分でなければ、外部を活用することも必要です。技術分野に応じて、その道のプロをテクニカルゲートキーパーとして確保したり、キャリア採用したりすることも有効な施策と言えます。

技術開発段階での原価企画部門の役割としては、下記があげられますが、特に重要なのは、有望なビジネスパートナーの探索と提携です。

【図3】原価企画部門の技術開発段階での役割

超絶フロントローディングはビジネスパートナーとの提携が不可欠

研究開発においては、自社で保有していない技術領域の知見を補完・強化するために、サプライヤーに代表されるビジネスパートナーとの連携が不可欠です。具体的には、サプライヤーの研究開発部門との密接な連携が必要となります。例えば、サプライヤーとは中長期的なビジネスパートナーとして、お互いの技術開発テーマや開発目標、開発ロードマップなどを共有し、連携しながら技術開発をコンカレント化していかなければいけません。
また、サプライヤーの原価企画力が十分あれば問題ないですが、ない場合は一緒に原価企画を実施していくことが必要です。

中長期的なビジネスパートナー戦略としては、原価をガラス張りにしながらプロフィットシェアしていくことが今後求められてきます。お互いに、無駄な駆け引きをやめ、本当に市場性のある圧倒的な技術を生み出すことに注力しなければ、早晩パートナーシップは瓦解するといえます。

先行技術開発・要素技術開発と製品開発の連携

先行技術開発・要素技術開発段階で原価企画を実施し、圧倒的なコスト競争力のある先行技術や要素技術の開発に成功すれば、あとはそれらをどの新製品に搭載していくかを決める段階になります。基幹技術(モジュール、基幹部品等)が技術的かつコスト的に洗練されていれば、製品開発段階での原価企画はそれを前提に実施することになり、よりコスト競争力のある製品が開発できると言えます。

こうした観点から、常に先行技術・要素技術の開発ロードマップと製品開発ロードマップは連携していく必要があります。

【図4】技術開発ロードマップと製品開発ロードマップの連携

今回は、原価企画を先行技術開発や要素技術開発から実施することにより、圧倒的なコスト競争力を獲得する「原価企画の超絶フロントローディング」のポイントをご紹介させていただきました。
こうした取り組みはまだ限られた先進的な企業でしか進んでおりません。是非皆様と圧倒的なコスト競争力の実現に取り組んでいきたいと思っております。

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この記事の執筆者

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