攻めの調達が未来をつくる!
~調達から仕掛ける開発フロントローディング~

グローバル化が進み変動が大きな時代、市場ニーズ対応力向上に向けて、開発フロントローディングの必要性は広く認知されるようになりました。我が国のものづくり企業においても、設計・開発部門においてはデジタル開発への変革が進められています。しかしながら、調達部門では人員工数・投資予算(IT等)の制約から、依然として設計の後工程ポジションから抜け出せず、受け身の業務に終始してしまうケースも多く見受けられます。

調達部門が受け身から攻めに転じ、開発初期段階から設計・開発部門と積極的に連携し、設計提案を行うことで製品の品質・利益の向上や部品の安定供給に向けた開発フロントローディングを実践すべきです。
今回は、調達から仕掛ける開発フロントローディングのポイントについてご説明します。

開発プロセスにおける調達の果たすべき役割

製品開発プロセスは、企画、設計・試作、生産準備の3つのステップに大別されます。開発フロントローディングを実現する上で、その3ステップに応じた調達活動を実施していく必要があります。

【図1】開発ステップにおける調達の役割と改革テーマ

各調達活動のうち、多くの企業で課題となる重要な改革テーマは3点です。

  1. サプライヤー探索/技術動向調査による製品ライフサイクル加速への対応
  2. 部品認定の仕組みの確立(標準部品・代替部品)による標準化&リスクヘッジ
  3. ソーシング活動の早期化によるコスト・品質改善(設計・原価企画との連動)

以下に各点を掘り下げて解説します。

サプライヤー探索/技術動向調査による新技術導入

近年、マーケットのグローバル化や顧客要望の変化に伴い、製品ライフサイクルが加速しているため、部品・テクノロジーの陳腐化スピードが一段と早くなり、コモディティ化が進んでいます。そのため、社外の多くのサプライヤー/候補と接点を持つ調達部門が、いち早く社外技術を取り入れ、自社技術とミックスした新たな製品の企画に積極的に関与することが求められています。そこで、日常から最新技術の動向を押さえた上で、有用な技術や機能部品を有するサプライヤーを探索しておくことが重要となります。

調達部門によるこれらの探索活動には、具体的に以下のポイントを押さえる必要があります。

  • 自社の製品・技術ロードマップおよびサプライヤー活用目的に沿った実施する
  • 評価知識の観点からサプライヤー探索の専門部隊を組織する
  • グローバルに視野を広げることで、代替材掘り起しなどフレキシビリティー向上に寄与

【図2】サプライヤー探索/技術動向調査の流れ

部品認定の仕組みの確立による標準化&リスクヘッジ

開発フロントローディングを実践するうえで、設計・試作ステップに入る前に部品認定の仕組みを確立し、使用を推奨する認定部品・素材をデータベース化・更新しておくことが必要となります。その理由は以下の3点です。

  1. 過去部品の流用が開発工数を減らし、フロントローディングを加速するため
  2. 流用の際、設計後に部品・素材の品質チェックを行うと手戻りが発生するため
  3. 同一仕様には同一部品を使いスケールメリットを出すことで、購買力が高まり、開発初期段階からの交渉を有利に進められるため

【図3】部品・素材認定の観点と仕組み

部品・素材の認定は、品質、コスト、納期、環境等さまざまな部品に関する情報から総合的に判断します。特に納期については、部品安定供給の観点から標準部品だけではなく、代替部品も合わせて認定しておくことで、供給リスク顕在化時のレジリエンス(適合力)が向上します。なお、先述のサプライヤーに対する購買力向上は安定供給にも寄与します。

具体的な認定の仕組みとして、効率的に認定を行うためには、部品、素材に関する属性情報の整備と集計、比較が容易にできる情報分析ツールが必要になります。また、推奨部品・素材の仕組みを継続的に運営するには、部品・素材認定のサイクルのみならず、設計者が推奨品目を使っているかをチェックする業務チェックサイクルの構築も必要となります。

ソーシング活動の早期化によるコスト・品質改善

特に製造業においては、外部調達費が製造原価の70%近くを占めるため、仕様とコストの大半が決定する設計・開発ステップで、調達がソーシング活動を早期化する取り組みが重要となります。また、その際にはコストを主軸にしたサプライヤー選定ではなく、品質・供給安定性も考慮した部品・サプライヤーの選定に昇華する必要があります。
まず、大まかな流れとしては、ソーシング方針としてソーシングスケジュールやプロセスを定めたうえで、ソーシング計画書を策定・社内合意を経て、RFP/RFQによるサプライヤー選定に進みます。
サプライヤーソーシングを効率良く、的確に進めるためには、ソーシング計画書、RFP/RFQの作成に必要な情報を開発部門と連携して早期に明確化することが重要です。

【図4】ソーシング活動の流れ

(1)ソーシング方針
調達が率先して開発プロセスに関与していくためには、開発プロジェクトの組成直後にソーシング方針を策定することが重要になります。
ソーシング方針は、開発対象製品のコンセプトから、製品構成の変化点を洗い出し、部品カテゴリごとに内外製案策定およびソーシング方式、ソーシングスケジュールを定めることがポイントです。

(2)ソーシング計画書
内外製案に基づく候補サプライヤーの探索・候補出しがポイントとなります。
また、ソーシング計画書は、全社もしくは事業ごとにテンプレートを定めることで、担当者によってばらつきが発生しない仕組みを構築できます。

【図5】ソーシング計画書テンプレート

(3)RFx(RFI:情報提供依頼、RFP:提案依頼、RFQ:見積もり依頼)
新規部品や機構部品など優先順位をつけて推進することが、ポイントとなります。
ソーシング計画書と同様にテンプレート化することが重要となりますので、下記にテンプレートの項目例とポイントを挙げます。

【図6】RFxテンプレート

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