未来を切り拓く力:「潜在力」を解き放つための三つのカギ

VUCAの時代で勝ち残るためには、いかに社員それぞれの「潜在力」を引き出し、迅速な価値創造・イノベーションを推進できるかがカギとなっています。本記事では、社員の「潜在力」を解き放ち、企業のあるべき姿へ向け、戦略を実現する人財へと変身させる方法をご紹介します。

「潜在力」とは

「潜在力」とは、人の表面に表れていない能力や成長する力のことで、物事を変革する原動力となるものです。「潜在力」は、一人一人の個性を活かす上で、それぞれのマインド・スキルを見定めていくことが必要であります。一方で、各社それぞれのあるべき姿を実現する上で、潜在力としての新たなアイデアや目標を創造する「構想力」や、与えられた課題に対して自分の判断軸を持ち、最適なアウトプットに向けて行動を決める「決定力」、及び自ら周囲を巻き込み業務を進める「推進力」などがあります。
今回は、変化の激しい現代において、競争環境の変化に素早く反応し、新たな価値を提供し続けるための、①「潜在力」を壊す業務の削減②「潜在力」の伸ばし方、及び③「潜在力」を引き出す人事という3つの視点から、社員の「潜在力」を高める方法をご紹介します。

【図1】「潜在力」とは

「潜在力」を壊す業務

「潜在力」を引き出すためには、「潜在力」自体を強化する以前に、「潜在力」を壊す業務を減らすことで、余力を創出していくことが重要です。
決められたルールに従う業務や、単純で繰り返しするような業務であるオペレーション業務は、量として「潜在力」を発揮する機会を圧迫するだけではなく、そもそもの「潜在力」を引き出すことに対する阻害要因となります。
このような「潜在力」を壊す業務を減らすための方針として、オペレーション業務の標準化及びデジタル化によって業務量を最小限に抑えることと、業務を最小化した上で、残った業務を外部化によりグループ外に出すことが重要になります。
しかしながら、日本の労働慣行として、新卒から雇用し続けることが求められる傾向が根強く残っており、会社が置かれている環境や事業の状況に合わせて機動的に人員を調整することが難しいため、グループから段階的に業務をなくしていくことが肝要です。

✓ 第一段階 SSC(Shared Service Center)化の徹底
業務を集約化し、グループ会社からオペレーション業務をなくしていきます。今までオペレーション業務を行っていた従業員に対しては、そのままグループ会社にとどまり、「潜在力」を醸成する業務で活躍いただくか、SSCの中でグループ全体の改革に従事いただくことが考えられます。

✓ 第二段階 BPO(Business Process Outsourcing)化の徹底
SSCで集約化した業務を徹底的に標準化・効率化し、グループ内でやるべき仕事と単純なオペレーション業務を仕分けることで、オペレーション業務についてはBPO化を図ることが可能になる。

上記の段階を踏む活動を通じ、「潜在力を壊す」オペレーション業務をなくすことが可能になります。

【図2】「潜在力」を壊す業務とは

オペレーション業務の削減方法

「潜在力」を壊す業務である、オペレーション業務をなくすための考え方として、大きく分けて、事業部門側からオペレーション業務を減らすことと、コーポレート部門の側から減らすことの二つが挙げられます。

事業部門においてオペレーション業務をなくすためには、第一に、お客様に直接的に関わる業務と、会社の内部で間接的に行われる業務に仕分けることが必要となります。仕分けられたうちの間接的な業務については、業務の過剰品質を見直し、その上での標準化、デジタル化、及び外部化を徹底的に推進し、社内に残るオペレーション業務を最小化していくことが重要です。具体的な実例としては、大手情報機器メーカーの事業部門における生産性の向上プロジェクトがあります。当該事例では、直販営業部門及び代理店営業部門において、業務の集約化と過剰品質の見直しを徹底に行い、最小化された業務についてデジタル化・外部化を行うことで、▲40.6人の人員削減を達成しました。

一方で、コーポレート部門においては、全社的な戦略を担うCoE、事業部門としての改革事業を担うBP、日常のオペレーション業務を担うOPEの三つの区分けを行う必要があります。特に、OPEは多くの企業において、コーポレート部門における業務全体の約8割もの割合を占めているため、OPEを的確に切り出し、業務の過剰品質の見直し、標準化、及びデジタル化による業務の最小化をグループ全体で徹底することが肝要です。OPEを最小化した上で、グループ内で取り組むべき付加価値の高い業務のみを残し、その他の業務を全て外部化することによって、オペレーション業務を完全になくし、余剰人員をオペレーション業務からCoE及びBP業務へシフトすることが可能になります。具体的な実例としては、大手私鉄グループ各社の経理部門において、オペレーション業務の効率化によって6.2億円の削減を達成した事例があります。本事例では、管理部門の従業員490人のうち300人を営業・調達・店舗部門へ職種転換し、残り190人は「潜在力」を醸成するCoEやBP業務に従事いただきました。また、BPO化された300人分のオペレーション業務については▲80人分を達成し、220人分の業務として最小化しました。

【図3-1】事業部門の間接業務の効率化_大手情報機器メーカー事例

【図3-2】コーポレート部門における業務の区分け

【図3-3】大手私鉄グループにおけるオペレーション業務の効率化事例

「潜在力」の伸ばし方

「潜在力」を壊す業務から解放した上で、より価値創造・イノベーションを推し進めるためには、個人の「潜在力」自体を引き出すための業務にシフトしていくことが求められます。
ただし、「潜在力」と一言にいっても、その伸ばし方は、個人が持つ資質や性質によって変わってきます。「潜在力」の引き出し方を考える上では、個人の資質や性質を考慮して、それぞれが目指すべきリーダーシップの型を考えていくことが重要です。
とはいえ、100人100通りとなると、マネジメントしていくことが難しいので、ある程度類型化していくことも一つの考え方であると考えております。

一例としては、以下の四つの型があります。

✓ カリスマ型:ビジョンやミッションを強力に打ち出し、人間的な魅力によって方向づけ、具体的なロードマップの作成やプロジェクトの推進についてはチームメンバーが自発的に行う

✓ 啓蒙型:ビジョンやミッションを設定し、それらをチームメンバーに落とし込み、時にはロードマップの作製なども協働し、しっかりと行動付けを行ったうえで、プロジェクトの推進をチームメンバーに任せる

✓ 互恵型:ビジョン、ミッション、及びロードマップの作成までもチームメンバーと協働して行い、チームメンバーと同じ目線に立って、お互いに権利を保持するとともに、義務を果たしあう、相互に互恵的な関係を築く

✓ フォロワー:リーダーではなく、チームメンバーとしてリーダーの補助を行う

上記は、一例でありますが、各企業の成り立ちや文化を考えた上で、必要な要素を考えていくことが肝要です。必要な要素を考える上では、以下の三つの指標をもとに行うことが推奨されます。

  1. 変化することへの選考や適性
  2. 周囲への影響力の強さ
  3. 働くことへの動機付け

以上のように、「潜在力」を壊す業務から社員を開放し、「潜在力」を引き出す上で、各人が求めるものを定義することが重要です。

【図4】リーダーシップと潜在力として求めるモノ

「潜在力」を引き出す人事

リーダーシップ型の把握によって「潜在力」の方向性について考えた上で、実際に「潜在力」を伸ばしていくためには、「潜在力」の表出を支援する人事部門の体制が重要となります。

人をバルクで見て管理するのではなく、一人一人の人財と個別に向き合うことで、各自が「潜在力」を発揮できるような適切な人材配置を達成する人事の体制が重要です。この体制における、人事部門の役割は大きく分けて二つあり、第一に、現場社員に対しては、”声”の傾聴や自分ブランディングのための支援、ラインマネージャーに対しては、働きがいや活力向上のための対話支援などを行うことで、個人の内面的な性質や能力への理解を促し、「潜在力」の表出を支援することです。個人に対する支援を行う上では、企業の方向性に個人の方向性を合わせるよう調整することで、現場で「潜在力」を最大限に発揮し、イキイキと活躍できるようにアシストすることが肝要です。第二に、傾聴や対話の過程で収集した人財に関する情報や現場の状況をもとに、事業戦略を実現するための人財戦略の策定や採用・配置・育成を検討することです。以上二つの役割を人事部門が果たすことで、現場と戦略の両面から、各人の「潜在力」を引き出すことが可能になります。

以上のように今回は、「潜在力」を壊す業務の削減、「潜在力」の伸ばし方を考えるリーダーシップの型、及び「潜在力」を引き出す人事という視点から、社員の「潜在力」を高める方法についてご紹介いたしました。詳細については、事例を交えながらご説明させていただきますので、是非お問い合わせください。

また、組織論や人員シフトイメージに限らず実際の業務の集約化・標準化設計方法についてもお問合せいただければと思います。

【図5】潜在力を引き出すPeople Management機能

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