従業員がイキイキするタレントマネジメント3.0

タクシーに乗車すると、そこには多くのタレントマネジメントシステムのクラウドサービスのCMが流れています。当社にも様々な企業から「どれを採用したら良いか」といった問い合わせが多くあります。ただ、注意しなければならないのは、手段に走っていないか、というところです。自社のタレントをどう活かしていくのか、目的を明確にしていくことが非常に重要となります。
今回は当社が掲げる、従業員が自律し、イキイキする「タレントマネジメント3.0」についてご説明いたします。
 
※この記事では、「タレントマネジメント」と「タレントマネジメントシステム」を使い分けて、ご説明していきます。それぞれ以下のように定義します。
タレントマネジメント:従業員が持つ才能・能力を最大限に引き出して最適に活用する自社内の仕組み、制度
タレントマネジメントシステム:タレントマネジメントをサポートするツール、クラウドサービス

ツール導入ではなく『人で勝つ組織』への変革

正解のあった平時の一昔前の時代では、やることも決まっており、決められたことをしっかりと実施していくことが求められました。しかし今は、変化が激しく、正解のない、もしくは正解があっても賞味期限が短いため、人の力が非常に求められ、人的資本経営が注目されています。
 
各社においても、人事サイクルの採用から育成、配置、評価、報酬、代謝の中で、様々な施策が実施されております。公募・応募、リスキリング、パーソナライズトレーニング、ダイバシティ推進など様々な施策があります。そこでは人事サイクルと各種施策で蓄積された人財情報と職務情報から、最適なマッチング(最適活用)として適所適材を実現し、組織として成果を出していきます。そこを支援するシステムがタレントマネジメントシステムです。

【図1】人事サイクルとタレントマネジメント

タレントマネジメントは、従業員が持つ才能・能力を最大限に引き出して最適に活用する自社内の仕組み、制度であり、タレントマネジメントによって「人で勝つ組織」を作っていくことが目的となります。自社にとって、どのようなタレントマネジメントを目指すのか、自社としてのこだわりは何か、その議論をせずに「タレントマネジメントシステム」に飛びつくことは、手段に飛びついていることとなり、思うような成果が出ません。ただ、実態として手段に飛びついてしまっている残念な企業が多いとも感じています。

2つの起点のタレントマネジメント

我々は、タレントマネジメントは2つの起点があると考えます。1つ目は経営に貢献するタレントマネジメントとしての「経営・事業戦略起点」です。2つ目は個がイキイキするタレントマネジメントとしての「人財起点」です。
 
1つ目の「経営・事業戦略起点」は、経営戦略の実行、実現のために必要な人財を質と量の両面から定義して、現状の人財と必要人財のGAPを明らかにして、そのGAPを埋めるための施策を検討していきます。例えば、配置転換などの人財シフトや、必要な人財に変身させるためのリスキリング、必要な人財を外から採用してくる新規採用といった施策を実施していきます。
 
2つ目の「人財起点」は、まだ実現できている企業は少ないですが、取り組んでいる企業は実際にあり、従業員が自律し、イキイキするためのタレントマネジメントで、個人の内面の表出を支援していきます。その個人が大事にしている価値観や軸、その人らしさ、心の状態の表出を支援していきます。単にその人の持っているスキルや資格、経験、経歴といった目に見えるものだけではなく、目に見えない内面をデータ化、言語化して共有できるようにしていきます。その個人のキャラクターや特性を理解し、活かし、会社と従業員、上司と従業員の関係性を向上させ、人で勝てる組織を作っていきます。

【図2】両利きのタレントマネジメント

「経営・事業戦略起点」「人財起点」の2つが重要で、もちろん、それぞれの企業の状況に応じてどちらに力を入れるかなどは判断をしていきます。
我々は「経営・事業戦略起点」「人財起点」の2つの起点のタレントマネジメントを『両利きのタレントマネジメント』と言っております。
2つのタレントマネジメントについてもう少し説明していきます。

経営に貢献するタレントマネジメント

1つ目の経営に貢献するタレントマネジメント「経営・事業戦略起点」については事例を紹介させていただきます。
 
あるサービス業では、今の既存事業のままでは企業価値が下がっていってしまう中で、既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を両利きで行っていく必要であり、特に新規事業の「探索」が喫緊の課題となっておりました。既存事業を今までの100のパワーから90でできるように効率化施策も並行して実施し、浮いた余力10のパワーを新規事業の「探索」にシフトしていくという構想を描きました。構想実現のためには、新たな組織に人財を再配置するにあたって、異動した人財が早期に活躍できるように支援していく仕組みが特に必要でした。そこで、短期選抜型リスキルプログラムを企画し、早期立ち上げ・実践を行いました。
 
リスキルプログラム構築においては、最初に、新規事業の方向性やビジネスの特性を確認し、必要な人財要件を明確にしました。そして次に新規事業探索メンバーの今時点で保有するスキル、経験を棚卸してGAPを抽出しました。そしてスキルギャップを踏まえたリスキルカリキュラム(プロジェクトマネジメント、DXスキル等)を策定し、実行していきました。

【図3】経営・事業戦略起点のタレントマネジメント リスキリングプログラム

このように「経営・事業戦略起点」で経営に貢献するタレントマネジメントが重要となります。

個がイキイキするタレントマネジメント

2つ目の個がイキイキするタレントマネジメント「人財起点」についても事例を紹介させていただきます。
 
ある製造業において、キャリアディベロップメントプログラム(CDP)をどのような形にしていくか議論し、あるべき姿を従業員起点から検討した内容となります。

【図4】人財起点のタレントマネジメント CDP

CDPのありたい姿は上記①から④を循環して成立している状態であると議論していきました。
①としては個々人の強み/弱みをまずは自己認識することから始めていきます。スキルアセスメントを行ったり、個人自らキャリアアンカー診断書を作ってみたりしていきます。
続いて②として個人としてどうなっていきたいのか、あるべき姿を描いていきます。その際に、単に闇雲にあんなのがいいこんなのがいいと考えるのではなく、しっかりとその会社の各種事業を踏まえた各仕事の内容が分かるものを作って、この企業では「仕事図鑑」と名付けましたが、それを活用して自分のキャリアプランを検討していくことを実施していきます。ここまで実施すると、次は③として上司と一緒になって、個人のキャリア形成プランを議論し、上司からは助言・支援をもらい、さらに解像度を高めていきます。そして④として、そのキャリア実現に向けた学習と経験をしていくために、e-learningなどで学び、複業制、公募制を活用して経験していきます。
また一定期間経過した際には、自分の強み/弱みを再度分析していき、上記①から④を循環させて成長していくことを実施していきます。
 
このように経営・事業戦略起点だけではなく、個人の成長、キャリアプラン、そして生き生きと働くための「人財起点」からのタレントマネジメントも非常に重要となります。

タレントマネジメントの進化

我々は、タレントマネジメントは進化していくものであり、最終的には3.0を目指すべきと考えております。
タレントマネジメント1.0は、いわゆるタレントの見える化で、多くの企業では実は1.0でとどまっているようにも感じます。クラウド型サービスのタレントマネジメントシステムを導入して、人財はどんな人がいるかが見えるようになった、顔がわかるようになった、しかしそこで止まってしまっているという声をお聞きします。
続いてタレントマネジメント2.0として、仕事の内容を仕事図鑑のように明確にしていくことで、供給側と需要側でのマッチングが可能となり、最適配置を実現することができます。ジョブ型をしっかりとやっていくという企業が2.0に進んでいたり、一部を実現したりしています。
そしてその先に、各個人の目に見えない内面をデータ化、言語化をしていくタレントマネジメント3.0があります。個人の持っている顕在化した力だけでなく、潜在力を活かしていこうとしている企業は3.0に進んでいます。

【図5】タレントマネジメント3.0

経営・事業戦略起点も重要ですが、正解がなくイノベーションが非常に求められる今は、人的資本経営が注目され、人財起点で、個人がイキイキするためのタレントマネジメントも重要となります。単にタレントマネジメントシステムを導入し、見える化だけを実現するタレントマネジメント1.0にとどまらず、3.0に進化していくことが人で勝つ組織になっていくために、そして勝ち残る企業になるために、重要となります。

この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×