ISO 30414

ISO 30414とは何か

ISO 30414とは、国際標準化機構(ISO)が2018年12月に発表した、人的資本情報開示に関する初の国際標準ガイドラインです。11の大項目、58のメトリクスで構成されており、大企業または中小企業の企業規模や、内部開示または外部開示の区分が示されています。人的資本の定量的な尺度を提供し、具体的な定義や計算式についても触れられています。
 
ISO 30414の特徴的な視点として、第一に、これまでコストと捉えられてきた人財を資本と捉え、人的資本に対するリターン(人的資本ROI)の視点が挙げられます。また、正社員のみではなく、幅広い外部人財の活用、多様な働き方を視野に入れた、トータルワークフォースの視点も特徴的です。さらに、従来からの企業戦略に紐づく「クリティカル人財」についての計画的な人材開発を行うことが会社には求められています。

ISO 30414に関する世界の動向

企業の人材マネジメントについて、国による市場環境、制度の違いのために、国際標準が長く未整備となっていました。しかしリーマンショック以来、投資家による非財務資本への情報開示圧力が高まりました。HRデータやHRテクノロジーの活用拡大も相まって、人的資本情報開示が重要な投資指標となったのです。ISO 30414はこれらの実情に鑑みて公表されました。
 
ISO 30414が公表されて以来、欧米の人的資本開示を取り巻く状況変化は加速しています。欧州では、ドイツ銀行を中心にISO 30414の認可を受けたレポートを発表する企業が出始めています。また、米国証券取引委員会(SEC)は、2020年8月に30年ぶりに情報開示ルールを改訂、人的資本マネジメント情報の開示が義務付けられました。
 
そして、現在は、さらに踏み込み、ISO 30414への準拠を義務付ける法案が下院を通過しており、企業がグローバルに展開していくためには、ISO 30414への理解が不可欠となっています。

日本企業はISO 30414をどのように活かしていくべきか

日本企業は、すぐにISO 30414の認証取得と進まないまでも、人的資本マネジメントの国際的な指標、ベンチマークとして、ISO 30414の活用を積極的に取り入れていくことが望ましいと考えられます。
 
ISO 30414は、今や会社のグローバル展開に不可欠な要素になりつつありますが、想定されている労働形態はジョブ・ディスクリプションが明確な欧米型であり、日本型の働き方と乖離している点が多くあります。したがって、日本企業がすぐにISO 30414を全面適用するのは非常に難しいです。
 
他方、2021年6月のコーポレートガバナンスコードの改訂により、日本企業でも人的資本情報開示が求められました。開示方法は定められていませんが、企業のグローバル展開や海外投資家からの投資を鑑み、国際標準を踏まえた人的資本のマネジメント及び開示を進めることが日本企業においても求められていると言えます。

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