非財務資本管理(製造・知的・人的・社会関係・自然)

非財務資本とは

非財務資本とは、財務諸表には記載されない情報のことです。近年、ビジネスを取り巻く環境が変わっていく中で、ESGやインタンジブル・アセット等との関連で、いわゆる非財務資本への注目が増してきています。

非財務資本の種類

国際統合報告評議会(IIRC)が公表している国際統合フレームワークでは、資本は財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本という6つに分類されています。これらのうち、財務資本を除いた5つの資本が非財務資本と言われています。

製造資本

製品の生産またはサービス提供にあたって組織が利用できる建物や設備、インフラ等の製造物のことです。また、製造資本は一般に他の組織によって創造されますが、報告組織が販売目的で製造する場合や自ら使用するために保有する資産も含みます。

知的資本

特許や著作権、ソフトウェア、権利およびライセンス等の知的財産権や暗黙知、システム、手順およびプロトコル等、組織的な知識ベースの無形資産のことです。

人的資本

人々の能力、経験およびイノベーションへの意欲等のことです。例えば、組織の戦略を正しく理解して実践する能力や、プロセス、商品およびサービスを改善するために必要なロイヤリティおよび意欲、リーダーとしての能力やマネジメント能力等のことです。

社会・関係資本

個々のコミュニティ、ステークホルダー・グループ、その他のネットワーク間またはそれらの内部の機関や関係、および個別的・集合的幸福を高めるために情報を共有する能力のことです。共通の価値や行動、共有された規範、組織が構築したブランドおよび評判に関連する無形資産を含んでいます。

自然資本

組織の過去、現在、将来の成功の基礎となる物・サービスを提供する全ての再生可能および再生不可能な環境資源およびプロセスのことです。空気、水、土地、鉱物および森林や生物多様性、生態系の健全性等を含んでいます。

非財務資本と企業価値

企業価値の大半は財務諸表の数値によって説明することができていました。しかし、企業を取り巻く環境が段々と変化し、財務諸表の数値だけでは企業価値を十分に説明することができなくなってきています。つまり、企業価値において、目に見えない非財務資本の価値が大きくなってきているということです。
 
非財務資本が企業価値にどれだけ寄与しているかは、PBR(株価純資産倍率)によってわかります。PBRが1倍であれば、会計上の価値(純資産)と企業価値(時価総額)は同等だと見なすことができます。つまり、PBRが1倍より高く、会計上の価値を超えている分は、非財務資本による付加価値だと言えます。
 
PBRは、1株当たりの利益が株価の何倍かを示す(=企業の将来価値を表す)PER(株価収益率)に、企業の現在価値を表すROE(自己資本利益率)を乗じることによって、求めることができます。そして、PERは「株主資本コストー持続的成長率」の逆数で示すことができるため、資本コストを減少させ、持続的成長率を上げることができれば、企業の将来価値を向上させることにつながります。
 
企業の将来価値を向上させる方法の例として、SDGsの目標達成に向けて、ESGに取り組むこと等が挙げられます。ESGに取り組むことによって、企業を評価する団体(FTSEやMSCI等)からの評価が上がれば、投資家からの投資を受けやすくなり、資本コストが減少します。また、SDGsの目標達成に向けて取り組むことは、企業自身の持続的成長にも繋がります。したがって、非財務資本を重視した経営を行うことで、企業価値を向上させることができるのです。

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