2023/03/06
KPIとは?意味やビジネスにおける指標の設定や手順をわかりやすく説明
1.KPIとは
KPI(Key Performance Indicator)とは、「重要業績評価指標」を指します。ビジネスの目標を達成するプロセスで、達成度合いを計測したり、監視したりするために置く定量的な指標です。後述しますが、経営やビジネスの最終的なゴールを定量評価するKGIに向かうための、マイルストーン的な意味合いがあります。目標達成のためには、その進捗状況を把握することが成否のカギとなるだけに、重要かつ不可欠な指標と言えます。
2.KPIとKGI、KSFの違い
KGIとは、企業や組織が展開するビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標です。「Key Goal Indicator」の頭文字を取り、「重要目標達成指標」と訳されます。最終的なターゲットであるため、売上や営業利益、近年ですとROE、ROICなど、金銭的な目標が設定されることが一般的です。KPIが目標達成の過程であるのに対し、目標のゴールがKGIにあたります。まずは最終目標であるKGIの数値を確定した上で、中間目標であるKPIを設定することが重要となります。
KSFとは、企業や組織の経営戦略実現のために、どのような要因が必要であるかを定めることです。「Key Success Factor」の頭文字を取り、「重要成功要因」と訳すのが一般的です。KPIが定量的な指標であるのに対し、KSFは目標達成のためにすべきアクションやプロセスを指し、定性的な意味も含まれます。KPI管理の話を進める上で、最低限、KGI、KSFとの違いを理解していなければいけません。
3.KPI管理の目的
企業が最終的なゴールであるKGIに向かってさまざまな指標を立てます。その目標を達成するためには、各事業部門の現場がアクションを起こして必要な施策を打ち、ブレイクダウンしなければなりません。そこで、目標達成するためのプロセスにおいて、管理指標となるKPIを設定し、モニタリングしていくことで、現場の活動がKGIの達成に繋がっていきます。KPIに連動性を持たせつつ、KPIをマネジメントしていくことが企業活動の肝であり、非常に重要となります。
4.KPI指標の設定
KPIの指標を設定する際、以下5つの考え方が重要です。
①Specific(明確性)
目標は明確でなければなりません。曖昧な解釈が入る余地をなくし、現場が実感しやすく、組織全体で誰もが理解できる具体的かつ明確な指標を使いましょう。
②Measurable(計量性)
達成度を客観的な数値として評価できることが必要です。例えば、営業であれば、顧客への訪問回数など、実際に計測できる指標を使えば客観性を担保しやすくなります。
③Achievable(達成可能性)
達成が可能でなければなりません。無根拠なものではなく、目標として現実的なものであり、かつコントロール可能な数字を設定しましょう。
④Relevant(関連性)
KPIの達成がKGI(=成果)に直結することも大切です。例えば、最終的な成果目標が利益の場合には、営業利益に直接的な関連のある指標(売上高、売上単価、販売数 等)を使用します。
⑤Time-bound(期限)
達成期限を定めることも重要です。達成期限があることで、KPIが努力目標ではなく、いつまでに達成する、という必達目標として機能します。
5.KPI管理手順
STEP1:目的・スコープの明確化
まずは各企業の方針や経営戦略を踏まえて整理した上で、目的やスコープを明確にします。何のためにKPIを使うのか、どういうKGIを目指すのか、という目的設定がKPI管理を成功させる肝です。KGIや目的が明確でなければ、KPIそのものもブレてしまい、目標達成は厳しくなります。
STEP2:KGI・KPIストラクチャ策定
目的とスコープを明確にできれば、次に経営目標であるKGIから現場の施策やKPIに落とし込みます。KPIを設定し、モニタリングしながらストラクチャを策定していきます。
STEP3:KGI・KPIマネジメントの運用業務・体制構築
ストラクチャを策定しただけでは、絵に描いた餅になってしまいかねません。どのようにPDCAを回していく体制やプロセスを構築するのか。運用ルールやスキームをどう設計していくのかが重要なポイントです。
STEP4:KGI・KPI可視化の仕組み構築
最後にKPIを可視化し、どのように回していくのかという視点で、ダッシュボードなどシステム構築を含めた仕組みを構築しなければなりません。その仕組みを完成させるまでがKPIマネジメントのステップです。
6.KPI管理の5つの失敗例
①KGI・KPIの定義が不明確
KGIとKPIが混在しているケースでは、目標やプロセスを含めた全体像が不鮮明となります。先述しましたが、KGIとKPIへの理解が足りていなければ、会話が噛み合わなくなります。
②経営目標とKGI・KPIの関係性に整合が取れていない
KPIとKGIに整合性が取れていなければ、例え、KPIの指標を達成できても、KGIが達成できないケースがあります。中間目標であるKPIと最終目標であるKGIは必ず連動させましょう。
③設定されたKGI・KPIが多すぎてマネジメントしきれていない
管理するKPIの指標が多すぎると、結局現場が受け止めきれず、その指標を見ることで精いっぱいになり、マネジメントまで手が回らないケースも多く見られます。こうなってしまうと本末転倒ですので、リソースの視点も取り入れながらKPI管理のPDCAが回る持続可能な仕組みづくりを心がける必要があります。
④KGI・KPIが適切に更新されていない
四半期に一度、KPIとKGIの目標を立てても、その四半期に一回の会議での現状報告の域を出ないことがあります。KPIマネジメントの一環として、会議は適切なアクションがしっかり行われているかを検証することが目的ですが、報告するためのKPI設定に陥っているケースがしばしば見られます。適切にKPIやKGIが更新されなければ、十分な改善活動を行うことはできません。
⑤KGI・KPIの責任者が不在で十分な改善活動が行われていない
責任の所在や責任者が不在のため、現場ではKPIマネジメントをしているにも関わらず、モニタリングの結果分析や改善活動が実行されないケースもあります。責任者を設置し、KPI管理の効果を生み出す環境を整えることが重要です。
7.KPI管理で注意するべきポイント
①経営指標(KGI)からのリンケージ
KPIとKGIを連動させることが重要になります。KPI管理は数値を追いかけるだけが目的ではなく、その数値を分析し、次の改善のアクションに繋げてKGIを達成することが真の目標です。
KGI・KPIは、経営指標から分解して構成されるツリー構造で策定します。例えば、ROIC(投下資本利益率)をKGIとして設定する場合、ROICの数値に直接影響を与える投下資本、営業利益といった目標値がその下位に置かれます。同様に投下資本の下位には運転資本と固定資産、営業利益の下位には売上と費用の目標値が置かれます。
さらに落とし込んでいくと、最終的に現場のプロセス指標まで分解され、特に重要な指標をKPIに設定します。明確に数値が連動するKGI・KPIストラクチャを策定することが一つ目のポイントです。
②活用局面・アクションプラン、マネジメント運用の明確化
今期の売上や利益などKGIの目標設定はできていても、現場の活動であるアクションに紐づいていないことがあります。具体的なKPIを現場の施策に落とし込んでいく深さが重要となります。
KGI達成のためには、実績数値の動向をにらみつつ施策実行を判断します。具体的な施策とその施策モニタリングのためのKPIを明確にしておけば、どの局面で、どのKPIを確認し、どの施策を打つかをスピーディに判断できます。
また、KPIを軸にしたPDCAの運用イメージも明確にしておく必要があります。マネジメント側と現場側で情報連携の精度・頻度が担保できていなければ、個別対応を取るのが精一杯となり、KGI達成に向けた全体最適の視点での対応が難しくなります。KPIの数字を共通言語とし、適切な粒度・頻度でコミュニケーションをとり、PDCAサイクルを回していくことでマネジメント側と現場側が一体となり、継続的改革を実現することができます。
③KPI改善→KGI達成の数値化、シナリオ検証
KPI、KGIのシナリオ検証はKPI管理の非常に重要なファクターの一つです。スピーディかつ的確にKGI・KPIマネジメントのPDCAサイクルを回すには、KGIが未達になる場合の想定要因を把握し、分析シナリオとして整理しておくことが重要です。シナリオをシミュレーションし、それぞれのメリット、デメリットを検証しながら、アクションに繋げていくと改善効果が高まります。そのためには分析、アクション、改善するシナリオを事前に勘案してKPI設定をしなければなりません。
一方でKPIを達成した場合、上位の指標が改善し、KGIを達成できるかどうかのシナリオ検証も必要です。これら原因分析のドリルダウンと改善実施による目標達成シミュレーションを繰り返し実施することで、KGI・KPIマネジメントの質が高まり、現場が能動的に改善しつづける強い組織を生み出すことができます。
④実績の自動収集等ICT活用による効率化
KGI・KPIの実績集計をはじめ、アラート検知、報告データ作成などのKGI・KPIマネジメントのシステム化も重要です。KPI管理において、数字の把握に時間を取られ、次のアクションにつなげられないケースが多々あります。一方で、集めた数字を活用し、KPIをモニタリングするための仕組みを構築しようにも、細かい業務などデータ収集にはかなりの手間と時間がかかります。現場の生産性向上を図るためにも、ICT活用などでダッシュボード化していく仕組みの整備もKPI管理の重要なポイントです。
ドリルダウンの分析ができる仕組みや、あらかじめ設定した数値を元にしたアラート検知も有効です。アラートを検知するごとに、その都度レポーティングするタイムリーな仕組みを構築しなければ、理想的なKPI管理はできません。つまり、システムの実装も併せてKGI・KPIマネジメント導入計画を立てるべきなのです。
8.KPI管理の成功例(大手精密機器メーカー)
抱えていた課題
海外製造拠点に対して、月次で収集するデータについて標準化を進め、PLや原価情報は管理できていました。ところが、結果のみを収集しているに過ぎず、分析されていないため、データに対する説明まではできていませんでした。また、各製造拠点内の管理手法も拠点ごとにバラバラで確固たる型もありませんでした。そのため、本部から各拠点に対して随時、さまざまな問い合わせがなされ、データマネジメントや報告業務が肥大化する事態に陥っていました。
レイヤーズ・コンサルティングのアプローチ
まず本部として確固たる思想に基づいた「型(KGI/KPIストラクチャー)」を構築し、各種指標を整理・集約しました。ストラクチャー構築では、ROICを頂点としてブレイクダウンし、現場KPIまでを紐付け。そうすることで、「KGIと紐付いた現場KPIの見える化」に加え、「KGIシミュレーションによる将来予測」の2軸で検討することが可能となりました。その結果、現状の悪さをいち早く捉えた改善活動が迅速に進み、改善効果を把握した全体感を持った改革を実現することができました。
成果と顧客満足
財務視点でのROICの目標値を上位に設定したことで、「KGI/KPIストラクチャー」により現場のKPIをつなぐことができるようになりました。また、ダッシュボードによる見える化によって、手作業で作成していた多くのレポート業務が解消された上、不特定のユーザーが同じ情報にアクセスできるようにもなりました。これによりレポーティングの速さや効率性が向上し、お客様に大変評価されました。
9.まとめ
KGIを達成するためには、それを上位にストラクチャーを策定し、KGIと連動したKPI管理は欠かせません。KGI・KPIマネジメントを単なる指標の可視化で終わらせないためにも、変革に必要な数値・ITを徹底的に議論し、再定義することが重要です。レイヤーズ・コンサルティングのKGI・KPIマネジメント導入支援では、必ず最初に目的・スコープの明確化を行った上で、プロジェクトの全員が共通の考え・目的を持つプロセスを大事にしています。