ChatGPTが支店長・営業課長の役割を代替?
活用の広がりに伴う役割見直しの必要性
この記事では、そもそもチャットGPTが何なのかから、営業領域への活用の広がりや、導入に伴って支店長・営業課長の役割に与える影響について解説いたします。
そもそもチャットGPTとは何か
チャットGPTは、OpenAIによって開発されたチャット型のAIツールです。「文章生成AI」に分類される生成AIであり、他に生成AIの類型として代表的なものでは、「画像生成AI」「音声生成AI」「音楽生成AI」などがあります。
チャットGPTが公開されたのは2022年11月ですが、その回答精度の高さとプログラミング不要・対話型インターフェースによるユーザーの敷居の低さから爆発的な普及を見せており、公開から僅か2ヵ月で1億ユーザーを突破しています。この早さは驚異的で「TikTok」と「Instagram」が1億ユーザー到達に要した期間はそれぞれ9ヵ月と2年半で、それ以外のサービスで見ても「Google翻訳」が6年半と、チャットGPTに対する関心や評価の高さが表れています。
一見すると突如登場した一時的なブームの技術のように見えますが、実は数年の研究開発と進化を経てリリースされたものです。ですので今後の発展性はまだまだあるものの、しっかりと地に足の着いた技術と言えます。
① GPT-1(2018年)
– 学習データ:4GB(BooksCorpus:様々なジャンル約7,000冊を超える書籍データ)
– パラメータ数:1.2億
– 精度:短い文章の理解と単純な推論ができるレベル
– UI:Pythonスクリプト
② GPT-2(2019年)
– 学習データ:40GB(大量のWebページを中心とした800万の文書)
– パラメータ数:15億
– 精度:常識的な推論ができるレベル
– UI:Pythonスクリプト
③ GPT-3(2020年)
– 学習データ:約45TB(より大量のテキストデータ)
– パラメータ数:1,750億
– 精度:人間と同等以上の推論ができるレベル
– UI:API
④ GPT-3.5=チャットGPT(2022年)
– 学習データ:? ? ?TB(不明)
– パラメータ数:3,550億
– 精度:より長文かつ複雑な推論にも対応できるレベル
– UI:チャット
【図1】チャットGPTの公開までの進化イメージ
チャットGPTの機能とビジネスへの活用可能性
では、チャットGPTは具体的にどのような機能があるのでしょうか? 中核機能であるテキスト生成だけで見ると、機能が非常に限定的でビジネスへの活用が難しそうに見えてしまいます。実際には、その派生として様々な機能を有しており、分類的に「テキスト提案」「テキスト変換」「テキスト調査・解析」の3つに大別されますが、うち代表的なものとして6つの機能があります。
【テキスト提案機能】
① 文章提案機能:
テーマや文字数など、指定された要件にもとづき最適な文章を生成しアイデアとして提案
② プログラミングコード提案機能:
VBAコードなど、ユーザーの要求機能を実現できるプログラミングコードを生成
【テキスト変換機能】
③ 文章要約機能:
入力した文章に対してサマリ文章を生成、または要点や指定するトピックスを抽出
④ 文章翻訳機能:
入力した文章を指定する外国語の文章に翻訳
【テキスト調査・解析機能】
⑤ 文章調査機能:
ユーザーからの質問に対して、既存の情報に基づき最適な文章を回答文として生成して回答
⑥ 文章解析機能:
ユーザーが入力した文章に対して、単語・文法ミスの校正やより最適な文章を提案
ビジネスとして、会社という組織において文章は切り離せない要素であり、チャットGPTの活用局面も多岐にわたって存在します。具体例としては、関係者にメールをする、上司向けに日報を作成するなどの局面において、チャットGPTによりメールの文面を作成する、日報としてメモを要約するなどに活用することができます。
また、その精度について2023年公開のGPT-4 は、GPT-3.5と比較して精度が更に劇的に向上しており、各機能によって違いはあるものの、基本的には、ビジネス実用に堪えうるレベルになっており、多少の手直しだけでほぼそのまま実務に活かすということも、ものによっては可能になっています。
【図2】チャットGPTの主な機能
チャットGPTによる営業改革への活用の広がり
では、本稿の本題であるチャットGPTの営業改革への活用ですが、営業プロセス全域まで活用の幅が広がっています。
具体的に、基本的な営業プロセスに沿って活用例を見ていきます。
① 顧客理解
例)顧客関連情報の調査
– 用途:顧客の事業環境など基礎情報の調査
– 使い方:業界や関連制度をチャットGPTに問いかけ・深掘り質問
(個別企業や最新動向は、基本的に不得意)
② 顧客とのコンタクト
例)営業メールの文面作成
– 用途:新規訪問のアポ獲得や、新商品の案内など、顧客への営業メールの文面を作成
– 使い方:メールのターゲットや目的、説明・訴求ポイント(自社や商品の情報)を指定して、
チャットGPTに作成指示
③ 提案準備
例)提案・プロモーションのアイデア出し
– 用途:提案における自社の訴求ポイントやプロモーションアイデアを抽出
– 使い方:提案テーマと顧客・業界を指定のうえ、チャットGPTに考えられる訴求ポイントや、
売り込み施策の抽出を指示
④ 顧客へのプレゼンテーション
例)セールストークの改善点抽出
– 用途:プレゼンにおけるセールストーク・販売話法の改善点抽出
– 使い方:プレゼンでの発言内容をテキストとして入力するとともに、チャットGPTに改善点の
抽出を指示
⑤ 社内報告
例)議事メモの要約文作成
– 用途:音声認識AI等でテキスト化したプレゼンの会話内容を要約
– 使い方:プレゼンでの対話内容をテキストとして入力するとともに、チャットGPTに要約を指示、
または特定トピックスに対する抽出を指示
⑥ クロージング・提案後フォローアップ
例)ネクストアクションのアイデア出し
– 用途:プレゼン後の状況に応じた動き方のアドバイス抽出
– 使い方:プレゼンでの相手の反応や状況から、受注に向けた必要アクションの抽出を指示
上記の用途を見てみると、営業担当に対するサポート・アドバイスの役割を担っていることが分かります。すなわち、チャットGPTは、ある意味支店長・営業課長の業務の一部を代替できるようになっています。当然業務の全てではないですし、また精度や具体性の面で不十分な点はありますが、人間がやると対応品質にバラつき・ムラが出てしまうことに加え、チャットGPT自体の今後の精度向上を考えると十分に代替の可能性はあります。
それでは、支店長・営業課長は今後どのような役割を担っていくべきなのでしょうか?
【図3】営業プロセスごとのチャットGPTの活用例
チャットGPTで代替できない、支店長・営業課長が担っていくべき役割
支店長・営業課長の今後の役割として、チャットGPTでは(今のところ)代替できない「営業のリーダー役」に特化していくべきと考えています。従来も当然担っていた役割ではありますが、今後前述のとおり単なる「営業担当のサポート・アドバイス役」の役割がチャットGPTに置き換えられていく中で、益々その役割が重要となり支店長・営業課長の存在意義にもなってきます。
それでは、「営業のリーダー役」として具体的にどのような役割が求められるのでしょうか。大きく「営業の指導者役」「現場の変革推進役」の2つが必要と考えています。
まず、「営業の指導者役」ですが、これは営業担当のサポート・アドバイス役のような業務レベルの関りとは異なり、上位の戦略・計画レベルにおいて営業担当の進むべき方向性を導くことです。具体的には、エリア・顧客等のターゲットを定めるとともに、そこに対する攻略アプローチや行動計画を策定する役割です。この役割は、何を自組織の課題とするかの見極めも含めて多岐にわたる前提情報の中で、複雑な判断が必要になってくるため、チャットGPTでは代替が難しい領域です。
次に、「現場の変革推進役」ですが、「意識変革」「リスキル」の2つの推進がありますが、特に「意識変革」を推進していくことが重要な役割となります。具体的には、リーダーが考える危機感共有やビジョン周知により、変革の必要性や動機付けを行っていくことです。単なる共有であればコミュニケーションツールで代替可能ですので、いかに腹落ちさせていくかが重要であり、ストーリーやリアリティをもって説明し、現場の活用意欲や実現感を高めることが重要となります。すなわち、人をいかに動かし・機能させていくかが、チャットGPTにはできない重要な役割となってきます。
これらの役割は、表現は違えど数年前から言い古されてきたことではありますが、同時に十分に実現できていない部分でもあると思います。なかば理想論化しつつありますが、チャットGPTをはじめとしたAIの進展により、ますます思考系業務の代替が加速化していく中で、確実に役割の再定義・再構築が必要な局面は訪れますので、是非先送りにせずに兆しが見え始めている今の段階から対応をはじめていただければと思います。
【図4】支店長・営業課長の今後のあるべき役割




オンライン相談問い合わせる メルマガ登録
最新情報をお届け! メルマガ登録
この記事の執筆者
職種別ソリューション