「形だけデータドリブン経営」からの脱却
~本質をおさえ成功に導く~
[2. 打ち手編]

前回コラムでは「データドリブン経営」とは何か、という大前提から、データドリブン経営の導入意義や、成果を上げるに当たって乗り越えるべき壁までをご紹介させていただきました。
今回コラムでは、その続編として、それら壁を乗り越えるために、どのような打ち手が必要なのかを中心にご説明いたします。

データドリブン経営の実現に向けた壁の乗り越え方

前回コラムにて、データドリブン経営の実現を阻む壁として、弊社のこれまでのコンサルティング経験に基づき、失敗企業の共有原因としての5つの壁をご紹介させていただきました。
(前回コラム未読の方は、本コラム末尾の「関連する最新ソリューション」のリンクからもジャンプ可能でございますので、ご一読いただけますと幸いです。)
 
【データドリブン経営の実現を阻む壁(前回コラム再掲)】

  1. データ戦略欠如の壁
    データ活用の目的として、解決すべき課題が明確化されていない
  2. 経営スタイル不一致の壁
    データ活用の意義・必要性が十分に浸透せず、旧来型のKKD(勘・経験・度胸)の意思決定プロセスから脱却ができない
  3. 組織サイロ化の壁
    データがサイロ化し、他組織のデータを活用できない、又は分析に向けて事業部側とIT側で互いに協力関係が築けない
  4. スキル・人材不足の壁
    最適な分析・解析の手法が分からない、又は、それが分かる人材が社内にいない
  5. システム・データ不足の壁
    システム等の問題から分析に必要な情報を、データ化できていない、又は、必要なデータ量を蓄積・整備できていない

これらの壁を乗り越えるためには、どうすれば良いのでしょうか?
まず、アプローチ論として、こうした変革系プロジェクトでの定石的なアプローチである「トップダウン」や「スモールスタート・クイックウィン」、「アジャイル」などは、データドリブン経営の実現に向けても有効であるため、是非採り入れていただければと思います。但し、これらはあくまでも進め方に過ぎず、これだけでは片手落ちになってしまいます。
 
壁を乗り越えるためには、打ち手として、データ活用の目的としてデータ活用戦略の明確化と、データ活用の推進に向けた仕掛けづくりが非常に重要となります。
 
【壁を乗り越えるために必要な打ち手】

  1. データ活用戦略の明確化:データ活用の目的である解決すべき課題と、その解決に向けた手段としての必要なデータを明確化
  2. データの民主化:社員が必要なデータに必要なタイミングでアクセスできる環境を整備
  3. 推進組織の設置:データ活用の推進組織として、データの統制・活用推進と分析の役割を担う組織を編成
  4. データリテラシー教育:社員のデータ活用に対する抵抗感を無くすため、最低限のスキルセットやマインドセットを教育
  5. 解析技術の民主化:各社員が高度な解析技術が無くても、データ活用ができるよう分析のサポートツールを整備

次章以降で、それぞれの詳細についてご説明いたします。

【図1】実現を阻む壁を乗り越えるための5つの打ち手

打ち手①「データ活用戦略の明確化」

まず、データ活用戦略の明確化ですが、出来ている企業には当たり前の話に聞こえると思いますが、意外にこれが出来ていない企業が多いのは事実です。具体的には、今あるデータを何とか上手く活用する術はないかと「データ起点」で考えてしまう企業や、他社で実施している分析を自社でもと「分析先行」で考えてしまう企業、何となくこの問題への対処が重要だからと「目的盲信」する企業、などです。当然ながら、データ活用の目的である活用戦略がないと、そのデータ活用が本当に意味があるか分からない状態で、結果、無駄骨になってしまう、又は最悪、逆効果になる可能性すらあります。
 
それでは、データ活用戦略は、どのように考えていけば良いのでしょうか?
上記の例の通り、データ活用の仕方を短絡的に考えてしまう企業が多いのですが、データ活用は課題解決の一つの手段であり、すなわち、データ活用戦略を検討することは、課題解決プロセスに他ならないと考えています。このため、データ活用戦略を、意味あるものにするためには、課題解決ステップと同じく、上流から順々に検討していくことが必要です。
 
【データ活用戦略の検討ステップ】

  1. 解決すべきビジネス課題の特定:
    改善すべきKPI指標をビジネス課題として特定
  2. 課題解決に向けた意思決定の変革ポイントの導出:
    ビジネス課題を深掘りして、意思決定の各プロセスの中から課題の真因を特定
  3. 意思決定の変革に必要な情報の定義と取り組み判断:
    意思決定の変革に必要な情報を仮説定義するとともに、そのデータ活用テーマに取り組むかどうかの是非を判断

特にポイントとなるのが、ステップ3として、データ活用の骨子が見えた段階で、データ取得や加工などの実現容易性と、データ活用の期待効果から、そのデータ活用テーマは取り組み意義があるかの是非判断を行うことです。データ活用は、データの前処理8割:分析2割といわれるように、活用準備だけで相当な工数が必要となるため、着手する前にしっかりと是非判断を行うことで、リソースを無駄にしないことが重要です。

【図2】データ活用戦略の検討ステップ

打ち手②「データの民主化」

「データの民主化」とは、データを各組織でサイロ化させず、部門横断的に、関連する社員が必要なデータにアクセスできるようにすることです。
データの民主化の方法としては、システム統合(ERP化)とデータ統合の2つの方法があり、システム統合が王道的ではありますが、導入期間やコスト面から相応の体力が必要となるため、短期的にはデータ統合から着手することが現実解となってきます。
 
いずれの方法にしても特に課題になるのが、原点となる、コード統一やデータの整合性確保です。各組織でそれぞれ独自管理されてきたデータは、粒度・定義や管理体系も異なっているため、仮にアクセスできたとしても、そのままの状態だとデータの意味が分からず全く活用できない、又は誤った活用をしてしまうことになります。
とはいえ、コード統一やデータの整合性確保を全てのデータに行うとすると、それだけで相当な工数がかかり、データ統合が目的化してしまいます。そうならないためにも、データのメリハリ付けをすることが重要であり、打ち手①のデータ活用戦略に基づき、必要なデータから集中的に順次データ統合を進めていくことが重要です。

【図3】データ民主化に向けたアプローチの方式と違い

打ち手③「推進組織の設置」

推進組織の編成タイプは大きく分けて3つあり、「本社への集権型」と「各事業への分散型」、集権型と分散型のハイブリッドである「連邦型」です。集権型と分散型は一長一短であり、両者の利点を上手く組み合わせた、「連邦型」が最適と考えています。
 
まず、「本社への集権型」ですが、データ活用に必要な基本機能「分析」「統制」「推進」を、本社に集約して配置するというものです。本社に集約することで、必要人材は最小限で済み、また、事業に引きずられず統制・推進を利かせやすいというメリットはあるものの、他方で、事業との距離感から分析のスピード感や業務とのフィット感が低下するというデメリットがあります。
続いて、「各事業への分散型」ですが、集権型の逆で、各機能を各事業に分散配置する体制となり、事業との近さというメリットはありますが、分散配置する人材確保の問題や、サイロ化のリスクが問題となります。
 
最後に、両者の組み合わせとなる、「連邦型」ですが、マネジメント機能である「統制」「推進」のみを本社に集約し、一方で事業サポート機能である「分析」を各事業に配置するというものです。これにより、ガバナンスを利かせつつ分析も各事業に最適化ができるため、理想的な編成と言えます。但し、各事業に分析人材を分散配置する必要があり、その育成が課題となるため、まずは「集権型」からスタートし、段階的に「連邦型」に移行するのが良いと考えます。

【図4】データ活用推進組織の編成タイプ

打ち手④「データリテラシー教育」

「データリテラシー教育」とは、データリテラシーとして、データ活用の意義・必要性への理解やデータ分析スキルを高めていくものです。
データリテラシー教育は、データ分析に関わる知識的なものもありますが、大部分は、意識の変革や、経験の積み重ねが必要な習熟スキルに関わるものであるため、当然ながら、Eラーニング等によって広く薄く教育を行っても、形式的で一過性の取り組みとなってしまいます。このため、演習やOJTなども含めた濃密な教育が必要となり、全社員一斉の底上げは困難であるため、これに対しては、アンバサダーをハブとした、段階的な教育が有効だと考えます。
 
具体的には、まず本社集権の段階で、各事業部からアンバサダー候補を公募や選抜等により選定して、本社から集中教育を行います。次に、アンバサダーが一定レベルに到達した際に、今度は、アンバサダーが事業部の各メンバーに対してデータリテラシーの教育や啓蒙を行うというかたちで、段階的に進めるものです。なお、アンバサダーの役割は、事業部内の教育だけでなく、ベストプラクティスの事業部内+事業部横断で流通させる役割も担い、各事業部におけるデータ活用をリードしていきます。

【図5】データリテラシーの教育ステップ

打ち手⑤「解析技術の民主化」

スキルの問題に対して、前述のデータリテラシー教育も当然ながら重要な打ち手となりますが、教育できる領域には一定の限界はあり、例えばアルゴリズム構築や高度な解析の技術は、一朝一夕で身に付けることは不可能です。このため、その技術を専門人材の外部調達などにより確保する必要がありますが、昨今では、それらを補完してくれているツールが色々と登場してきています。
例えば、高度な解析技術がなくてもAI・機械学習のアルゴリズムをワンクリックで自動構築してくれるツールや、商談などこれまで現場に眠っていたアナログ・テキスト情報を可視化・解析してくれるツールなどがあります。また、このようなツールの数は、AI・機械学習の技術進化により、年々加速度的に増加しています。
 
従って、こうした解析技術を持つ人材=データサイエンティストを、社内で養成や外部採用することも一案ではありますが、データサイエンティストが慢性的な人材不足の中、こうしたツールを積極的に採り入れていくことで、社内の誰でも解析技術を再現できるよう敷居を下げることの方が近道であり、また、人材・技術のトレンドにも合っていると考えています。このため、こうしたツールについて継続的に情報収集していくことと、その中から自社にとって有用なツールを目利きしていけることこそが、今後重要となります。
 
以上、概略にはなりましたが、データドリブン経営に向けた必要な打ち手5つをご紹介させていただきました。総合的に見ますと、データドリブン経営自体は多くの業界においてパワフルな経営ツールではありますが、安易な取り組みでは、なかなか成果に結びつけることが難しく、成果実現には周到な検討が必要となります。
弊社では、データドリブン経営の実現に向けて、様々な企業様をご支援させていただいており、支援メニューとして、戦略・業務~ITインフラの各領域に対して、また、企画~実行までをトータルでご支援させていただいております。
本コラムや弊社コンサルティングサービスにご興味をお持ちいただきましたら、ご質問だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

【図6】データドリブン経営に向けた進め方と弊社ご支援メニュー(例)

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