会計システム刷新

【第6回】会計システムの基本設定のポイントとは

◆この記事の要約

ERPや会計パッケージで「会計システム刷新のキホンのキ」を実現するには、会計期間・勘定科目・組織・会計単位・会社コード・通貨などの基本設定と、各種マスター設計をどのように行うかが重要です。
そこで本稿では、経営に資する会計システムを作るための基本設定の考え方と確認すべきポイントを整理します。

  • 会計期間の設定とオープン/クローズの考え方、月次・四半期・週次決算や先日付仕訳との関係を整理します。
  • 勘定科目体系の設計、階層管理と表示科目の考え方、有効日管理や元帳残高テーブルのキー設定のポイントを解説します。
  • 組織・会計単位・会社コードの役割の違いと階層管理、P/L・B/S項目や権限・承認ルートと連動した設定の留意点を示します。
  • 記帳通貨や多通貨対応、言語設定、取引先・セグメント・プロジェクトなど各種マスター設定を通じて、グローバルやグループ経営に対応した会計システムの基本設計の方向性を提示します。
ERPや会計パッケージを使用するためには、いくつかの基本的な設定項目があります。
例えば、各種マスターの設定を行わないと、会計システムとして想定する入出力処理が適切に行えません。こうした設定はERPや会計パッケージによって異なりますが、会計期間、勘定科目、組織、会計単位、会社単位、各種マスターなどの設定が基本的なものになります。これらの基本設定をうまくやるか否かで、会計システムの使い勝手や経営に必要な情報提供に大きな違いがでます。
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムの基本設定についてご紹介します。

会計期間の設定

会計期間とは
会計期間とは、企業が経営成績や財政状態を評価するために財務諸表を作成する「一定の期間」のことで、通常は1年間を基本としており、「事業年度」とも呼ばれます。会計期間については、企業が一年を超えない範囲で自由に決めることができ、通常定款に定めています。

会計期間の設定
会計システムの導入にあたっては、この会計期間の設定が必要になります。通常は、会社の会計期間に応じて会計期間を設定します。3月決算なら4月1日から3月31日、12月決算なら1月1日から12月31日と設定します。

ただし、会社によっては、月次で決算を締めたい、四半期で決算を締めたいといった要望があるため、1年間をいくつかに区切った会計期間の設定も必要になります。こうした会計期間の細分化については、ERPや会計パッケージごとの機能によって異なっているため、導入時には確認が必要です。例えば、週次決算を行う場合、会計期間は通常52週か53週の細分化設定が必要になるため、そうした設定ができるかといったことの確認です。

会計期間のオープンとクローズ
会計期間は、通常はオープン処理とクローズ処理を行う必要があり、それにより仕訳入力等の可否の制御を行います。ある特定の会計期間をオープンすればその期間の仕訳が入力でき、クローズすれば仕訳が入力できなくなるといったことを制御するのが一般的です。なお、先日付の仕訳を日常的に起こしている場合、先日付仕訳の入力と会計期間のオープン・クローズの関係は、導入時に確認が必要です。

また、ERPや会計パッケージによっては、クローズ処理を行うと残高が計算されるなどの特定の処理が行われたり、特定のレポート出力が可能になるなどの特別の処理が行われたりすることがあります。したがって、ERPや会計パッケージを導入する際には、オープン処理やクローズ処理がシステム上どのような意味をもっているかも確認してください。

【図1】会計期間とオープン処理・クローズ処理のイメージ

勘定科目の設定

勘定科目とは
会社は、通常日々の取引を複式簿記の形式で仕訳し、期末にこれらの仕訳を基に損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成します。勘定科目は、複式簿記で取引内容をその性質ごとに分類して記録するための項目です。勘定科目は資産・負債・純資産・収益・費用に大別され、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の作成に利用されます。

勘定科目の設定
勘定科目は、会社が通常使っている勘定科目を会計システムに設定します。新システムを入れる際に勘定科目体系を一新する会社もありますし、グループ共通の勘定科目体系を作り、それを個々の会社で登録していくこともあります。

勘定科目の設定では、科目コード、科目名称、科目分類(資産・負債・純資産・費用・収益)、システム用のコントロール区分(ERPや会計パッケージによって複数存在)などを設定します。科目コードの桁数は、ERPや会計パッケージの制限があるため、それに沿って変更しなければいけない場合もあります。

勘定科目の中に、顧客、取引先、プロジェクト、セグメント等を意味する項目を設定している企業もあります。ERPや会計パッケージでこれらの項目が別に設定できる場合、勘定科目体系からこれらの項目を分離したほうが望ましい場合があります。勘定科目の設定においては、ERPや会計パッケージのマスターの種類や元帳残高テーブルのキー項目、仕訳入力の項目などを確認して勘定科目体系を決定してください。

勘定科目の階層管理
勘定科目は、大科目・中科目・小科目や勘定科目・補助科目・内訳科目といった階層構造をもって定義している会社が多いのではないでしょうか。こうした勘定科目の設定は、ERPや会計パッケージによって異なるため、導入時に確認が必要です。例えば、階層構造がまったくないものもありますし、2階層や3階層のものもあるからです。

勘定科目の表示上の階層管理
損益計算書や貸借対照表を作成する場合、個々の勘定科目をどのように集計し表示するか(表示順番も含めて)の設定が必要になります。こうした表示上の階層設定の仕方やオペレーションのしやすさは、ERPや会計パッケージによって異なりますので導入時に確認が必要です。

また勘定科目については、仕訳に使う勘定科目(入力できる科目)と財務諸表の表示に使う勘定科目(入力できない科目:表示科目)を分けて設定するERPや会計パッケージもあります。表示科目とは、例えば「〇〇合計」といった表示上の科目などが該当します。

一般的にERPや会計パッケージではこうした階層構造を管理する機能をもっており、階層は複数パターンを登録できますが、パターン数等の制限についてはERPや会計パッケージによって異なりますので、導入時には確認が必要です。

勘定科目の変更管理(有効日管理)
勘定科目は変更されることがあります。そのため会計システムでは、勘定科目コードの有効日管理を行います。例えば、勘定科目コードの使用開始日と使用停止日を登録して、特定のタイミングで使える勘定科目コードに入力の可否制限を与えるといったことを行います。

【図2】勘定科目コード体系のイメージ

組織の設定

組織設定とは
会計システムにおける組織の設定とは、会社の組織階層を会計システム上に反映させることを指します。
会計システムに組織を設定することにより、組織単位でデータを区分管理したり、組織単位でアクセス権や承認権をコントロールしたりすることが可能になります。

会計システムの組織は、通常会社の実組織に対応してマスターを設定し、実組織ではないダミーの組織を設定して、データの区分管理に利用する場合もあります。例えば、ある費用を各組織に配賦する場合、ダミーで負担組織を設定し、実組織の費用と配賦費用を区分したりします。こうした組織設定によるシステム上の意味は、ERPや会計パッケージによって異なりますので、導入時には確認が必要です。例えば、組織の設定上の区分により、P/L項目しか持てない組織や、B/S項目が持てる組織を制御するといったこともあります。

組織の階層管理
通常組織は階層をもっています。したがって、会計システムにおける組織も階層管理機能があります。
一般的にはその会社全体を頂点に、各組織をピラミッド型に上下関係を定義しています。階層設定の仕方やオペレーションのしやすさは、ERPや会計パッケージによって異なりますので導入時に確認が必要です。特に、頻繁に組織を変更する場合、メンテナンスの手間が問題となるからです。

一般的にERPや会計パッケージではこうした階層構造を管理する機能をもっており、複数パターンを登録できますが、パターン数等の制限についてはERPや会計パッケージによって異なりますので、導入時には確認が必要です。

組織の変更管理(有効日管理)
通常、組織は変更されることがあります。そのため会計システムでは、組織コードの有効日管理を行います。つまり、その組織コードの使用開始日と使用停止日を登録して、特定のタイミングで使える組織コードに入力の可否制限を与えるといったことを行います。

【図3】組織設定のイメージ

会計単位の設定

会計単位とは
会計単位とは、会社の会計処理や財務管理を行う際の「管理単位」や「集計単位」のことを指します。
通常は、会社全体が1つの会計単位になりますが、さらに分割した会計単位を設定することもあります。
例えば、事業部門、事業所、支店などの範囲で会計データを区分・管理する場合です。

会計単位と組織は何が違うのか
通常は、組織を設定し、その組織の中で会計単位を設定します。会計単位は、会社の組織の中で会社と同様のデータ管理が行われます。会計単位として設定することで、財務諸表の出力が可能になったり、会計期間のオープン・クローズが可能になったりする場合もあります。こうした会計単位に設定することによるシステム上の制御は、ERPや会計パッケージによって異なりますので、導入時に確認が必要です。

会社の設定

複数の会社を同一システム内で管理する場合など、システム内で会社を区別するために「会社コード」という名称のコードが設定されることがあります。ERPや会計パッケージをグループで共同利用することが多くなり、複数会社対応ができるものが多くなっています。

ERPや会計パッケージによって、会計期間、勘定科目、メニュー、権限、各種マスターや処理方法などをグループ共通で設定しなければいけない範囲と、会社コード単位で分けて設定できる範囲とが異なりますので、導入時に確認が必要です。

通貨の設定

会計システムでは、金額を記帳するための記帳通貨の設定が必要です。記帳通貨は、会社単位、会計単位、組織単位など単位ごとに設定します。ERPや会計パッケージで、記帳通貨をどの組織単位で設定できるかは異なりますので、導入時の確認が必要です。

また、記帳通貨とは別に通貨を設定できる場合もあります。例えば、親会社が日本で円を記帳通貨にしており、子会社は所在地の通貨を記帳通貨にしている場合、子会社の会計情報を現地通貨で表示したり、円で表示したりする機能設定です。グローバルで展開している企業では便利な機能ですが、これもERPや会計パッケージで異なりますので、導入時に確認が必要です。

その他の設定項目

言語の設定
会計システムを利用する場合、会計システムの画面や帳票に表示される言語の設定もあります。
言語としては、日本語以外、英語、中国語、スペイン語など様々な言語がありますが、ERPや会計パッケージで対応できる言語には制限があるため、導入時に確認が必要です。
※システムが複数言語に対応していることを、「多言語対応」と一般的に称します。

その他のマスター設定
会計システムのマスターとしては、勘定科目マスターや組織マスターなどのほかに、取引先マスター(得意先マスター、仕入先マスター、銀行マスター等に分かれる場合もあり)、セグメントマスター、製品マスター、プロジェクトマスターなど仕訳情報の入力や残高データの生成に必要なマスターがあります。
また、権限マスターや承認ルートマスターなどシステム制御系のマスターもあります。ERPや会計パッケージでは、マスター設定や基本設定項目がことなるため、導入時に確認が必要です。

まとめ

今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムの基本設定についてご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」として実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非多数の支援実績を持つレイヤーズ・コンサルティングへお問い合わせください。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録
いますぐ会計システム刷新事例を見る

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。