事業拡大と業務量増加のジレンマ

◆この記事の要約

事業拡大にともなう業務量の増加は、多くの企業が直面する重要な課題です。効率的なリソース配分や業務プロセスの最適化が求められ、成長と持続可能な運営のバランスを取ることが成功の鍵となります。そこで本記事では、事業拡大と業務量増加のジレンマに焦点を当て、具体的な解決策と実践的なアプローチを解説します。
 
▼注目ポイント▼

  • 事業拡大:企業成長のための市場拡大や新規事業展開にともなう業務負荷の増加を指す。
  • 業務量増加:事業規模の拡大により発生する作業量の増大と、それにともなうリソース不足の問題。
  • リソース配分:限られた人財や時間、資金を効率的に割り当てることで業務効率を高める手法。
  • 業務プロセス最適化:無駄を削減し、業務の流れを改善することで生産性向上と負荷軽減を実現する方法。
事業の拡大は企業にとって成長の証ですが、それにともなう経理機能や人事機能の業務量の増加は、経営層や管理部門にとって大きな課題となります。人財不足もあり、経理人財や人事人財の採用も困難になっております。事業拡大の足枷せに経理機能や人事機能がなってしまうということはあってはならないことです。これに対処するため、BPOやAIの活用、業務の効率化が急務となっています。
そこで今回は、事業拡大で増加する業務をいかに効率化するかのポイントについてご説明します。

事業拡大にともない経理、人事の業務が増加する

事業の成長は企業にとって喜ばしいことですが、その一方で業務量の増加という避けては通れない課題をともないます。特に経理や人事といったバックオフィス部門は、事業の拡大に比例してその負担が増大します。新規拠点の設立や取引先の増加、あるいは従業員数の増加によって各種業務が複雑化し、ますますこれまでのリソースだけでは対応が難しくなるのです。

このような状況下で、多くの企業は「事業拡大=業務量増加」というジレンマに直面します。拡大による利益を得る一方で、増加する業務負担が社員の負担を増やし、場合によっては組織全体の効率を下げることにもつながりかねません。この課題を解決するためには、伝統的な業務のやり方の見直しが必要です。
例えば、経理機能では新規拠点の設立となれば、固定資産管理や減損管理の業務が増えていきますし、取引先が増加すれば、債権債務の管理や処理の業務も増えていきます。従業員が増えれば、経費精算の業務や各種問い合わせが増えてきます。人事機能では従業員が増えれば、各種手続きが増え、勤怠管理の対象も拡大するため業務量が増加します。

経理機能や人事機能に求められるのはオペレーション業務ではなく、『専門家』として法制度対応やグループ方針の策定、また『戦略家』としての事業計画立案支援、投資戦略、資金戦略、人財戦略、人財育成計画などに注力してほしいというのが経営からの要請です。事業拡大にともない、オペレーション業務が増加し、オペレーション業務に追われてしまうのは望むところではありません。

【図1】事業拡大にともない増加する業務量

固定業務と変動業務の特定

事業の拡大とともに、企業内の各部門で業務量が増加するのは自然な現象です。しかし、事業が成長する中で重要なのは、増加する業務を正確に特定し、それに適切に対応することです。
業務には事業の規模にかかわらず一定のリソースを要する「固定業務」と、事業拡大に応じて増減する「変動業務」が存在します。例えば、経理部門における月次決算や年次報告書作成などの業務は固定業務ですが、新規拠点の設立や取引先の増加にともなう債権管理や固定資産管理といった業務は、既存事業の成長・拡大により増加する変動業務です。また、新規事業を展開していこうとすると、新たな会計ルールの設定や会計プロセスの追加、勘定科目の設定など、新たな業務(変動業務)が追加になってきます。

固定業務はある程度の予測が可能であり、リソースの配分も計画的に行うことができます。しかし、変動業務は事業の成長に応じて突然増加するため、予期しない負担が発生しがちです。これを放置してしまうと、企業全体の効率が低下し、リソースの無駄遣いを引き起こすリスクがあります。したがって、事業拡大にともない増加する変動業務や、新規事業展開にともない発生する変動業務をしっかりと認識し、それに対して事前に対策を講じることが非常に重要です。

変動業務をしっかりと認識し、中長期の事業計画を踏まえて、どのくらいの規模で変動業務が増加していくのかを把握し、現メンバーの業務許容量でいけるのか、どのくらいリソースが不足するのかを見定めることが重要となります。

【図2】固定業務と変動業務

固定業務と既存の変動業務の効率化

まずは、固定業務と既存の変動業務の中で効率化できるものを洗い出し、効率化していきます。
そのためにはまず、現メンバーの全員に対して業務項目別の業務量を把握し、多くの業務工数がかかっているものを明確にし、具体的な業務内容をチェックして、業務課題を整理していきます。
例えばですが、下記のような業務が見えてきますので、廃止、簡素化、標準化、集約化、IT化、外部化といった効率化施策を実施していきます。

  • 業務プロセスが整備されておらず、都度確認しながら進めているため非効率になっているもの
  • 他部門と二重になっている業務があり、業務分担の見直しが必要なもの
  • 必要情報・資料が分散しており、都度情報を集める工数が発生してしまっているもの
  • そもそも業務プロセスが煩雑なもの
  • システムに一部不備(〇〇と□□が対応していないため手作業で紐づけ等)があり、
    手間が発生しているもの

効率化の事例を少しご紹介すると、もうすでに多くの企業で対応されているかと思いますが、単なる「問い合わせ」と、専門知識を必要とする「相談」とを切り分けて、単なる問い合わせであれば、AIを活用したチャットボットでの一次対応をすることで効率化が図られます。また、いまだに会議資料でExcelを使い、手作業で作成し、分析もExcelでやっているケースも見受けられます。会議の場で質問されても深掘りをその場でできず、次回の会議までの宿題ということで1か月後になってしまうといったことが起きています。BIツールを活用し、BIツールのレポート画面で報告し、質問に対してもその場で深掘りして回答する形でリアルタイムに対応していくことが求められます。このようにその場でリアルタイムに対応することは、スピード経営にもなりますし、経理部門の効率化にもなります。

【図3】単なる問い合わせと専門的相談の仕分け

新規事業展開のための業務効率化

新規事業展開にともない、経理部門では新しい会計ルールの策定や、適切な勘定科目の整備、そして会計プロセスの設計といった新たな業務が増加します。経理部門に対しては、事業の透明性と効率を確保しつつ、適切な財務管理を実現するための対応が求められます。しかし、よくあるのが新規事業の企画が通り、新規事業を実行するという時に、後追いで経理部門に相談がなされて、経理部門も期限の短い中で新ルールや勘定科目の整備などに追われてしまうことがあります。やはり大事なのは、フロントローディングで新規事業企画が立ち上がったら経理部門も参画し、一緒にビジネスを作っていく、そして業務やルールを作っていくことが大事です。経理がビジネスや業務ルールの構築に積極的に関与することで、事業の成功と財務管理の質を高めることができます。

また、ビジネスプラットフォームを構築しておくことも重要です。ビジネスプラットフォームとは、ビジネスを行うための制度・ルールや組織、業務運用基盤等の共通インフラです。
新たなビジネスモデルが生まれた場合でも、ビジネスプラットフォームに乗れば事業運営がスムーズにスタートできるようになります。そうすることで、各現場では事業の探索と深化に専念でき、身軽な事業運営を実現できます。ビジネスプラットフォームの構築を事業部門・子会社に任せ切りにしたり、都度その場しのぎで経理部門として対応したりすると、グループでバラバラとなり、全体最適や価値創造の足枷せになってしまいますし、せっかくの「知」が属人化して暗黙知になってしまいます。ビジネスプラットフォームは経理部門が「専門家」としてしっかりと企画・構築し、運営していくことが重要となります。

【図4】経理財務領域のグループビジネスプラットフォーム

データでガバナンスするためにデータをガバナンスする

ビジネスプラットフォームの具体的な話を例示として1つご説明していきます。しっかりとデータでガバナンスしていくことが大事ということで、データドリブン経営というのを色々なところで耳にします。
データでガバナンスしていくためには、データ自体をしっかりとグループ全体で標準化していく必要があります。いわゆる「データをガバナンスしていく」ことです。経理部門では、勘定科目、各種コード体系、会計方針、処理ルール、および会計期間の統一などが重要となってきます。

【図5】データをガバナンスする

データをガバナンス(APM・COA・データ標準)することで、グループの経営情報が適正化・均質化され、そのグループ経営情報を活用し、事業部門・子会社の事業活動や各種取引をモニタリングすることが有効的になります。

【図6】データでガバナンスする

このようにビジネスプラットフォームを構築していくことで、経理部門の新規事業展開による業務増加を抑制し、オペレーション業務に追われることを阻止していきます。企業が成長していくためにも既存事業拡大や新規事業展開は必要です。そのために経理や人事の人数がどんどん増えていくことは企業としては望んでおらず、そもそも人も採用しづらいため、固定業務と変動業務を見定め、それぞれ効率化していくことが重要となります。その手段の一つとして、ビジネスプラットフォーム構築は有効となります。

有効手段としてのBPO

最後に、効率化の有効な手段として「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」についても触れていきたいと思います。既存事業の拡大や新規事業の展開にともない、経理機能や人事機能については業務の効率化が急務となってきます。ポイントは、いかにしてスピーディーに改革を進めるかというところになります。このような課題に対してBPOの活用が非常に有効です。

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今回はHP書面の関係上、具体的内容や事例などのご紹介ができておりませんので、是非ともお打ち合わせの中で、ご紹介させていただければと思います。

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この記事の執筆者

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