CFOがリードするDX時代の投資マネジメントとは
こうした流れに乗り多くの日本企業は、設備投資や人的資本投資だけでなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた投資をより積極的かつスピーディに行おうとしています。
しかし、こうしたDXに向けたデジタル投資は従前のモノの投資とは異なる難しさがあり、投資マネジメントの中核であるCFO組織の役割がより重要になってきています。
今回は、積極的なデジタル投資が必要となっている中で、デジタル投資を成功に導くための投資マネジメントの要諦をご紹介いたします。
【CFO組織とは】
CFOを核に熱き思いと冷徹な計算で企業価値創造をドライブする集団
広くは、経営戦略、経営管理、財務会計、ファイナンス戦略、税務戦略、内部統制、リスクマネジメント、監査、サステナビリティ、IR等の領域を担当
投資マネジメントの全体フレームワークを明確化する
投資マネジメントにおいては、投資に関して「誰が」「どのタイミングで」「何を」「どのように」見るべきなのかを制度化し、組織として統制を図っていくことが必要です。そのためには、下図のような投資マネジメントの全体フレームワークを明確化し、それぞれ5W1Hが決まっているか検証していくことが重要です。
【図1】投資マネジメントの全体フレームワーク
特に投資の種別には、研究開発投資、製品開発投資、事業投資(M&A、新規事業投資等)、設備投資(新規、更新等)、IT投資(DX投資、合理化、IT基盤等)などがありますから、それぞれの投資パターン毎に5W1Hを整理していくことが必要です。
また、DX化の中でそれぞれの投資が密接に関連しますので、そうした観点から整理することも重要です。
デジタル投資とビジネスモデルの関係性を明確化する
通常の設備投資や基幹システムなどへのICT投資については、投資マネジメントプロセスが定義されていることが多いですが、DXによるビジネスモデル変革のためのデジタル投資は、投資と投資、投資と回収が複雑に絡み合うため、そのマネジメントプロセスが曖昧なケースが多く見受けられます。
DXのためのデジタル投資については、それぞれのビジネスモデル毎に投資とリターンの関係性を明確化して投資採算性の評価を行うことが重要です。そのためには、個々のデジタル投資の種類とそれに対するマネジメントプロセスを定義した上で、デジタル投資のマネジメントプロセスとビジネスモデル開発のマネジメントプロセスを連動して定義しなければいけません。
【図2】デジタル投資とリターンの関係
投資マネジメントにおけるWBS管理を徹底する
個々の投資案件においては、個別案件のWBS(Work Breakdown Structure)毎に、詳細計画立案、計画実行、事後報告評価を行うことが重要です。WBSは、例えばシステム開発案件では基本設計・詳細設計・製造・テスト・移行・運用等が該当します。
WBS管理においては、管理単位としてのWBSを投資タイプに応じて共通化しておくことが不可欠です。
何故なら、グループ全体でWBSを定義しておかないと、各社ごとに投資マネジメントにおける言語体系が異なってしまい、コーポレートからの各投資案件の進捗管理やリスク管理などに支障をきたしてしまうからです。
【図3】個別投資案件の執行管理のイメージ
また、DXによるビジネスモデル変革については、前述のとおりマジメントプロセスが曖昧なケースが多いため、下記のように「ビジネスモデル変革や事業開発のステージゲート」を明確にした上で、各ステージでのWBSを明確化していくことが重要です。
【図4】ステージゲート管理のイメージ
投資の実行過程をデジタルでリアルタイムに見える化する
投資マネジメントにおいては、投資の実行プロセスに応じた情報をタイムリーにとらえた計画・見込み・実績管理を実現することが重要です。
投資に係わる情報は、実行プロセスの進行に合わせて情報の精度が高まります。下記の図のように、実行プロセスは、例えば計画→稟議→発注→検収→支払→資産計上といった情報があります。実行プロセスの進行に合わせ、これらの情報を常に先行情報としてリアルタイムで見える化し、その変化を的確に掴んでいくことが重要です。
【図5】情報のライフサイクルイメージ
しかし、これらの情報は、紙であったり、色々なシステムに別々に管理されていたりすることが多いため、未だ人海戦術で計画・見込み・実績管理を行っていることが多いと言えます。従って、これらをデジタルで統合的にマネジメントできる仕組みの構築も必要となってきます。
中期経営計画・事業計画の計画・見込み・実績管理と連動する
投資の「案件別計画」を策定し、これと「経営計画(中期・年度)」を連動させ、且つ案件別の「計画・見込み・実績管理」を中期経営計画や事業計画の「計画・見込み・実績管理」と連動させることが重要です。
【図6】投資管理と中期経営計画・事業計画管理の連携イメージ
これにより、投資の期間損益に与えるインパクトを十分把握し、投資の前倒しや後ろ倒しの経営判断が迅速にできます。特に、投資額が多ければ多いほど、期間損益やキャッシュフローに対するインパクトも大きいため、こうした投資案件のポートフォリオ・マネジメントと中期経営計画・事業計画の連動は重要になってきます。
また、このような計画・見込み・実績情報の連動は手作業では膨大な工数を要します。従って、投資管理における計画・見込み・実績情報をデジタル化し、これを中期経営計画・事業計画に連動する仕組みの構築も必要となってきます。
産業機器メーカーにおける投資マネジメント制度の構築
産業機器メーカーでは、デジタルテクノロジーの進展に伴い取り巻くビジネス環境が大きく変わり、既存事業・新規分野へのデジタル投資やデジタル企業のM&A等への投資が増大してきていました。中期経営計画策定時において、これらのビジネス投資が経営的で甚大なインパクトを占めるほど増大してきたため、経営層よりこれらビジネス投資を着実に進め、且つ投資における不要なリスクを回避するためのマネジメント制度の革新が求められました。
そこで、次期中期経営計画における投資には、事業投資、製品開発投資、設備投資、IT投資など各種投資が含まれていたことから、これらの投資種別を明確にした上で、投資種別毎に「誰が」「どのタイミングで」「何を」「どのように」見るべきなのかを明らかにし制度化しました。
具体的には、投資パターン毎の投資管理の方針・ガバナンス体制、全社/事業・ パターン別の投資枠、案件単位での投資判断基準、投資実行プロセス、モニタリング手続き等を制度化しました。
以上のように、デジタル化によって投資マネジメントの重要性は非常に高まっており、また投資マネジメント自体のDX化も求められています。
本記事のDX時代の投資マネジメントの詳細については、是非お問い合わせください。
皆様と一緒に、より経営に資する投資マネジメントの構築に貢献して行きたいと思っております。
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この記事の執筆者
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薄井 賢治経営管理事業部
プロフェッショナルディレクター
公認会計士 -
大橋 遊経営管理事業部
マネージャー -
木村 祐也経営管理事業部
マネージャー
職種別ソリューション