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低利益体質からの脱却
~各社に適した利益管理の再考~

コーポレートガバナンスの観点からROEを世界水準に高めることが企業統治強化の1つの目安とされていますが、日経平均のROEが約8%であり、NYダウの約19%に比べて半分以下という状況です。こうしたROE向上も当然必要ですが、そもそも日本の営業利益率は約5%(東証一部)と投資効率云々以前に利益率を抜本的に改革する必要があります。
今回は各社に適した利益管理のポイントをご紹介します。

利益管理は細部に至る

皆様の会社に置かれましては、製品軸×時間軸×地域軸でどの程度の粒度で損益・原価を管理されていますか?当たり前ですが、連結ベースの四半期での損益・原価管理では、「製品MIX」、「最適地生産・生産資源配分」、「顧客分析・販促費戦略」など、なにもかも成り立ちません。もちろん各社の状況によって必要な粒度は異なりますが、基本的に損益・原価管理は細部に至る必要があります。即ち、製品軸、地域軸、時間軸の観点から目指すべき利益管理・原価管理を実現していくことが重要です。

【図】利益管理における多次元管理イメージ

【図】利益管理における多次元管理イメージ

製品軸:まずは製品原価を如何につかむか

製品別損益管理の第一歩は製造原価の実態をつかむことです。製造原価の実態とは工程の日々の活動がそのまま製品に集約されていくことです。材料単価・消費量しかり、作業工数・機械ショット数しかりです。
その際の原価計算制度は大きく3種類存在します。

1つには製品別の“転がし”実際原価計算制度です。製品の受入・投入・完成・払出実績により当該工程の原価を加算していく方法です。この方法の場合はその結果がそのまま決算となり財管一致となります。

2つ目は製品別の“積上”実際原価計算制度です。可能であればその日・その製品の部品表・レシピをもとに、実際の材料単価・消費量・工数等をコストBOMとして登録し積上計算を行います。在庫が加味されないため決算数値とは異なるため、決算と整合をとるためには調整が必要となります。

最後に標準原価計算制度です。一般的に標準原価は年次ないし半期に予定単価や予定操業度を基に設定されることが多いため、実態と乖離しがちです。標準原価のみで利益管理を行うということは「今」の意思決定を「1年前」の利益で行うということです。実際転がし法・積上法を採用しない場合には、少なくとも月次での標準原価改定が必要だ、とも言えます。

上記3つの方法のどれを取りえるかは、工程の生産情報の充足度合によります。製品の受払なしに転がし法は困難ですし、部品表の設変反映が遅れたり、製造現場判断で代替品を自由に使える状況ですと積上方式は的外れな原価を計算することになります。生産情報をよく調査のうえ、実際原価計算の方式を決めることが重要です。

地域軸:拠点別採算管理と連結一気通貫での製品別利益管理

法人として分かれている場合と同一法人内の双方に言えることですが、拠点(工場・工程)別に利益管理を行っていく拠点別採算管理は一般的に見られる手法です。拠点別採算管理は、拠点別に利益目標を設定して計画実績対比をすることで改善を促すだけでなく、最適地生産シミュレーションや投資シミュレーション等の基礎値となります。

ところが拠点別利益管理を行うと前拠点からの受入は前拠点の利益も含む「材料・部品」となり、製品一気通貫での利益管理の障害となります。単純合算だけでは本当の利益は見えなくなるのです。そこで連結での製品原価計算が必要となります。

【図】連結一気通貫での製品別利益管理

【図】連結一気通貫での製品別利益管理

連結製品原価計算の考え方は前章で記載した“転がし”方式か“積上”方式で製品別に計算することになりますが、品種レベルでの利益管理で意思決定に問題がない場合はP/Lを合算する方式も考えられます。

連結製品原価計算においては原則海外含めた全拠点の生産情報が前提となります。多くの企業においては国内の生産情報整備だけならまだしも、海外の生産情報整備は追いついていないのが実状です。各拠点の状況を鑑み、生産情報整備が不十分な拠点は、「標準原価+原価差額調整」など、ある程度割り切ってしまうことが重要です。

また勘定科目や原価費目、品目コード等のコードの整備が必要となるため、その状況を認識した上で、「コード統一」or「コード変換」の検討を行う必要があります。

時間軸:鮮度と精度のトレードオフ

製品別利益管理、連結での利益管理の必要性を記載させて頂きましたが、一般的にはその集計は月次であり、その集計に、ややもすれば1カ月以上の時間をかけている会社も珍しくありません。

競争環境が安定的な時代は精度を追い求めることが重要でした。しかしながら不確実性の高い現在のVUCA時代においては鮮度(スピード)の重要性も増しています。この2つはトレードオフ関係にあるので、使用局面に合わせてどのレベル感の利益管理を行うかを検討する必要があります。

【図】鮮度(スピード)と精度のトレードオフ

【図】鮮度(スピード)と精度のトレードオフ

時間軸:ライフサイクル利益管理によって見えなかった収益が見えてくる

通常利益管理はある会計期間で切り取って集計します。当然ながら製品によって開発段階のものもあれば、量産段階・終売しアフターの期間のものもあります。その期間だけをとってみても製品の単純比較は難しく、製品ライフサイクルを通した利益管理が重要となります。ライフサイクル利益管理によってはじめて、本当の製品利益貢献度がわかり、販売戦略・改善施策にいきてくると言えます。

【図】製品ライフサイクルでの損益管理

【図】製品ライフサイクルでの損益管理

部品メーカーにおける製品別一気通貫損益・原価管理

ある部品メーカーでは、原価は年度改定の標準原価、損益は製品群別の把握となっており、会計情報は決算及び経営報告資料という位置づけで、製品開発の原価企画にも、営業の見積にも、製造の改善活動にも使い切れていませんでした。

そこで経理を中心に開発・営業・生産等のメンバーで損益・原価管理の抜本改革プロジェクトを立ち上げ、まずは他部門における活用用途・必要損益・原価情報を整理し、業務・システムを刷新しました。複数の拠点・子会社を一気通貫で“転がし”原価計算を行うことで連結の実際製品損益を見える化しました。

その結果、原価企画のコストテーブルは実際原価情報で適切にアップデートされ、営業見積の精度も改善され、工場での原価低減も当初想定を越えて改善され、現場の活動に役立つ原価管理を実現しました。

以上のように利益管理を再度見直していくことは、低利益体質からの脱却のために不可欠です。先ず、これが出来て初めて営業利益率10%以下から脱却できる素地ができたと言えます。利益管理の見直しの詳細については、是非、お問合せください。皆様と一緒に営業利益率20%を目指していきたいと思っております。

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