激動の時代を勝ち抜く、超スピード開発のススメ
今回は、3Dモデル活用による超スピード開発におけるリードタイム短縮のポイントをご紹介します。
超スピード開発のポイントは3Dモデル“正”にあり
既存の開発リードタイムを大胆にかつ抜本的に短縮するには、3Dモデル “正”を実現できるかがポイントです。ここでの3Dモデル“正”とは、2D図面は作成せずに3Dモデルだけであらゆる業務を完結することです。しかし、なぜ3Dモデル正の運用に切り替えることが開発リードタイム短縮につながるのでしょうか?
2D図面作成工数の削減も一つですが、最も大きな理由はこれまで実機で試作を行っていた業務の一部を、デジタルに置き換えることが可能となるからです。
例えば、これまでは試作した製品の写真を撮影し、マニュアルで作成していた作業手順書も、3Dモデルとモデルに埋め込まれた寸法情報を用いて自動作成でき、モデルをベースに机上での組立性検証も可能となります。近年では設計者が作成した3Dモデルを使い、デジタル上で耐性や伝熱、空気の流れ等を予測するCAE(※1)の技術も加速しており、これまで実機で行っていた試験業務の一部を担いつつあります。
(※1) CAE:Computer Aided Engineering
【図1】3Dモデルを活用して実機試作レスを実現し、リードタイムを短縮
なぜ3Dモデル“正”が進まないのか? その①
実際に3Dモデル単体で運用している企業は17%(※2)と多くはありません。3Dモデルで設計したとしても、2D図面を正式な成果物としている企業が多いからです。
ではなぜ、3Dモデル正が進まないのでしょうか?
一つ目の要因は、3Dモデルでは寸法が認識しにくく、また注記情報がないため、ものづくりの現場で活用しづらいからです。2D図面には寸法や製造指示、部品構成・員数等ものづくりに必要な情報が網羅的に描かれているのに対して、一般的な3Dモデルにはそのような情報を掲載することができません。
しかし、3DAモデルを導入することで解決できます。3DA(3D Annotated Model)とは3Dモデルに、構造特性(寸法・注記、数量等)や、製造情報(表面仕上げ、加工面等)を加えたモデルを指しています。これをPDF等、現場が使いやすいフォーマットに変換することで、2D図面の代用をすることが可能となります。また3DA図面では実際に3Dデータを回転したり、断面を切ったりすることで、あらゆる角度から形状を確認することができるため、2D図面より有用性が高いといえます。
(※2)経済産業省 製造業を巡る動向と今後の課題 (2020年6月)経済産業省製造産業局調べ
【図2】2D図面から3DAモデル(3DA図面)活用へ
なぜ3Dモデル“正”が進まないのか? その②
二つ目の要因は、精緻な(各部門が必要な情報を盛り込んだ)3Dモデルを作りこむための設計工数(余力)がないことです。先ほどご説明した3DAモデルを作るには、寸法や製造指示等のあらゆる情報をモデルに登録する必要があります。また2D図面に記載していた内容を3Dモデルに反映するためには、3Dモデルの精度向上や記載ルールの変更などが必要になるケースもあります。ニーズの多様化に伴い、多くの製品を設計している設計者にとってこれらの対応は非常に大きな負荷となります。
この課題に対しては、3Dモデル化に伴い2D図面を抜本的に廃止し、設計工数を削減することで解決できます。実際に過去の事例では、3Dモデル化への移行に伴い、2D図面を廃止・簡素化することで設計工数を10%削減することに成功した企業もあります。
【図3】2D図面を抜本的に廃止・簡素化し、設計工数を削減
3Dモデルで開発からものづくりまで一気通貫活用
また昨今の技術革新に伴い、開発だけではなく製造、検査といったサプライチェーンにおいても3Dを活用して生産業務をデジタル化する動きがあります。
例えば、製造の領域においては3Dモデルの形状や寸法、穴位置の情報から自動で加工プログラミングを生成することができます。また調達部品の形状を3次元測定機から読み込み、3Dモデルとの差異を比較して検査業務を代替することも可能になっています。
このように3Dモデルを開発からものづくりまで一気通貫で活用することをMBD(※3)と呼び、開発リードタイムだけでなく生産リードタイムも短縮することで、より早く顧客に商品を届けることができます。
(※3) MBD : Model Base Design
【図4】3Dモデルを開発からものづくりまで一気通貫活用
まとめ
顧客ニーズが変化・多様化する中で競合に打ち勝つには、顧客ニーズをギリギリまで引き付けて見極め、短いリードタイムで開発し、他社より早く市場投入することが重要といえます。3Dモデル正に切り替えるには業務やシステムを見直す等、改革の負荷は少なくはありません。しかし、3Dモデル正への切り替えはエンジニアリングチェーン全体のリードタイム短縮に貢献するうえに、サプライチェーンのデジタル化にも寄与できる点から取り組みの効果が大きいといえます。
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この記事の執筆者
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宮下 剛SCM事業部
シニアマネージャー -
佐藤 航SCM事業部
マネージャー
職種別ソリューション