なぜ我が社のシステム統合(システムPMI)はうまくいかないのか?
例えば、各部門がそれぞれのシステムに合わせた独自の業務プロセスを維持し続けることで、標準化が進まないだけではなく、管理業務や間接業務までもが二重、三重になり、明らかに無駄な業務コストが発生してきます。また、システム保守にかかる費用も常に重複し、二倍、三倍のコストとなっていきます。
バラバラなシステム環境では、顧客や販売、営業等の情報共有も困難で、迅速な意思決定を妨げたり、買収・合併時に企図していたシナジーの実現もままならなくなったりします。最も懸念すべきは、システム統合の遅れが「見えないコスト」として企業の成長を阻害し続ける点です。
このままでは、競争環境において他社に後れを取るだけでなく、長期的には企業の存続にも影響を及ぼしかねません。
システムPMIが進まない原因
システムPMIが円滑に進まない背景には、いくつかの根本的な原因があります。
第一に、マネジメントの意識不足が挙げられます。多くの経営層はシステム統合を技術的な問題として誤解し、戦略的課題としての重要性を認識していないことが多いのです。しばしばシステムの統合はIT部門だけの問題であると見なされ、十分なリソースが割り当てられないまま進められます。このような状況が続けば、統合の進捗は後回しにされ、プロジェクトの優先順位が上下することになります。
次に、統合効果が分かりにくいという問題も存在します。システム統合の成功がもたらす利益は長期的なため、経営陣にその価値を短期的に理解させる拠り所となる具体的なデータが不足しがちです。結果として、統合によるメリットが実感されず、プロジェクトへの投資判断が先延ばしにされる傾向にあります。
最後に、人材不足が大きな障害となっています。システムPMIを成功させるためには、専門的な知識と経験を持った人材が必要ですが、そのような人材の確保は容易ではありません。また、リソースが限られた組織内のシステム部門では、日々の業務に終始してしまい、そもそもシステム統合の検討に工数を割く余裕がないというケースも見受けられます。
バラバラなシステムを放置すると…
システム統合を長期間に渡って放置すると、企業にとってのコストやリスクが増大していきます。
最も直截的な影響は、M&Aによって期待されるシナジー効果や業務の合理化が達成できない点です。
システムが統合されていないと、組織全体の業務プロセスが最適化されず、重複する作業やリソースの無駄遣いが生じます。これにより、企業が買収時に期待した合理化・効率化のメリットが実現されず、企業価値の向上が困難になります。
さらに、業務間で異なるシステムを使用することにより、データを経営目的で活用するのが難しくなります。各システムが異なるデータ定義やフォーマットを持っていると、全社的なデータ統合が難航し、統一的なデータ分析が不可能になります。結果として、経営に必要な情報がタイムリーに提供されず、これが誤った判断や機会損失につながるリスクが高まります。
また、未統合のシステム環境はセキュリティリスクも増大させます。複数の異なるシステムを並行して運用していると、セキュリティポリシーの一貫性が保たれず、システムごとに異なる脆弱性が存在する可能性が高まります。こうした状況下では、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが増大し、企業の信用にも影響を与えかねません。
これらはシステム非統合の放置が及ぼす悪影響のほんの一部ですが、企業の成長と存続にとって無視できない重大なリスクを包含しています。
【図1】システム統合が進まない原因と非統合の放置による影響
システム統合を成功させるための要諦
システムPMIを成功させるためには、まずシステム統合の目的を明確にすることが求められます。
業務効率の向上、情報の一元管理、顧客サービスの充足など、システムPMIによって得られる短期的な効果は様々ありますが、経営計画の達成、競争力の強化など、中長期的な視点で投資対効果をとらえることが重要です。
システム統合を実現させるためには、経営層の積極的な関与とコミットメントが求められます。経営層がシステム統合の戦略的重要性を理解し、自らが推進役として積極的に関与することが、プロジェクトの遅延を防ぎ、全社的なリソースの適切な配分を実現します。統合推進オフィスの設置や定期的な進捗レビューは、関係者全員の意識を高め、プロジェクトの透明性を確保するために有効です。
また、買収元企業と買収先企業、両社の業務・組織構造の違いを明確に把握することも重要です。そのうえで、双方の事業規模などにこだわらず、優位なシステムに片寄せするなど、無理な押し付けを避け、再構築を行うことが成功の鍵となります。
さらに、システム統合プロジェクトにアサインするメンバーの選定も非常に重要です。次世代の経営者候補や現場のキーマンなど、企業の将来を真に考え、本音のディスカッションを行えるメンバーをアサインするのがよいでしょう。社内人財不足が課題であれば、外部のリソースをガイド・行司役として取り入れる検討も必要です。
まとめ
企業の買収や合併におけるシステムPMIは、長期的な成長と競争力強化に不可欠です。
統合の遅れは「見えないコスト」として業務効率の低下やデータ活用の制約、セキュリティリスクを招きます。成功には、経営層の積極的関与、明確な目標設定、専門人材の育成が重要です。
当社では、システムPMIの具体的な成功事例や効果的な推進方法について、豊富な経験とノウハウをもとに、お客様の状況に応じた最適なソリューションをご提案させていただいております。詳しい情報や個別のご相談については、お気軽に当社までお問い合わせください。
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この記事の執筆者
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大久保 勇希DX事業部
シニアコンサルタント -
小池 宗彦DX事業部
マネージングディレクター
職種別ソリューション