【第4回】全体構想策定フェーズの秘訣は何か(前編)
◆この記事の要約
基幹システム刷新を経営層に承認してもらうには、基幹システムだけでなく「全体構想策定フェーズ(グランドデザイン)」で中長期的な目指す姿と経営効果を示すことが重要です。そこで本稿では、現状概要分析(業務・システム)を軸に、ユーザー部門主導でFit to Standardにつなげる秘訣を解説します。
- 全体構想策定フェーズ:現状概要分析→目指す姿検討→全体ロードマップ策定→プロジェクト計画策定で、基幹システム刷新を手段(HOW)として位置付け。
- 現状業務概要分析:標準業務鳥瞰図/標準業務一覧を起点に、業務レベル分析(5段階)・業務量分析・イキイキ度分析で課題を把握。
- 業務量分析の視点:各業務の業務量だけでなく、業務における思考分析/情報収集/実作業/資料作成/会議の割合を分析し、End to Endで「対処療法」に陥らず本質的に必要な業務を見極め。
- 現状システム概要分析:現状システム棚卸・現状インターフェース棚卸・将来システム構想把握に加え、ERP概要調査で候補製品・サービスを絞り込み。
全体構想策定フェーズとは
全体構想策定フェーズの位置付け
全体構想策定フェーズ(グランドデザイン)は、プロジェクトの全体像や基本方針を定める最初のフェーズです。
【図1】全体構想フェーズの位置付け
この全体構想の可否によって、プロジェクトが経営に承認されるか否かがかかっています。
したがって、主管部門であるユーザー部門(販売部門、生産部門、調達部門、経理財務部門など)は、自らの組織の価値を高めるため何をなすべきかを、全体構想の中で、部門全体で練ることが重要です。
全体構想フェーズの進め方
基幹システム刷新の全体構想策定フェーズとしては、ユーザー部門の現状概要分析(業務・システム)、中長期的な目指す姿検討、一定のゴール(3年~5年)までに実現したい要件と時間軸を示した全体ロードマップ策定、本プロジェクトのプロジェクト計画策定があります。全体構想において基幹システム刷新は、一般的に中長期的な目指す姿を実現するための手段(HOW)として位置付けられます。
【図2】全体構想フェーズの内容
そのため今回は、全体構想フェーズの前編として、現状概要分析を中心にご説明します。
現状概要分析とは
現状概要分析では、現状の業務とシステムの概要を把握し、課題点を把握します。
現状業務概要分析
現状業務概要分析では、対象となるユーザー部門の業務範囲を整理したうえで、業務レベル分析と業務量分析、イキイキ度分析を行い、現状の課題を分析します。
分析にあたっては、一般的にレイヤーズ・コンサルティングの「標準業務鳥瞰図」や「標準業務一覧」に基づき分析することを推奨しています。なぜなら、対象部門の「今の業務」を出発点にしてしまうと、「本来やらなければいけないが、現状できていない業務」の検討が抜けてしまうからです。
業務レベル分析
業務レベル分析では、現状業務について、業務品質のレベルを5段階で評価します。
レベル3が「業務が定義(標準化)されている」状態であるため、レベル3未満の業務はすでに何かしらの問題が内在しているといえます。
【図3】業務レベル分析のイメージ|現状業務レベル評価
また、業務レベル分析は、親会社単体としての業務レベルと、グループ(国内子会社群、海外子会社群など)としての業務レベルを分けて分析します。一般的に、親会社単体では業務レベル3以上の業務が多いですが、子会社を含めるとレベル2かレベル1の業務が多くなる傾向があります。グループとしての生産性を上げていくためには、どの業務もレベル3以上を目指すことが望ましいといえます。このように業務レベル分析によって、今の業務レベルを適切に評価し、今後どの業務のレベルをどの程度に上げていくべきかの検討につなげていきます。
業務量分析
業務量分析では、現状業務について業務ごとに業務量を調査し、効率化余地を把握します。
また、業務量分析においては、各業務を「思考分析、情報収集、実作業、資料作成、会議」といった作業に分けて調査します。作業別の工数割合を出すことによって、外からあまり見えないその業務の内容や質が推察できるからです。業務量分析おいて、全体として工数が多く、思考分析が少ない業務は、一般的に効率化余地が高いため、これらの業務から優先して業務課題を検討していきます。
【図4】業務量分析のイメージ
さらに、業務量分析にあたっては、そもそも業務の目的は何か、なぜ必要か、無ければ困るのか、ほかの業務を変えれば無くせないかといったことを議論し、本質的に必要な業務を見極めていきます。
例えば、上流業務の品質が悪いためのチェック工数が多い場合は、チェック工数を下げることより、上流業務品質向上策を考えるべきです。このように業務量分析においては、常に業務を端から端(End to End)まで一気通貫の流れの中で検討することが重要です。業務改革での失敗は、直面した課題への対症療法に終始してしまうことに起因することが多いからです。
イキイキ度分析
ユーザー部門のイキイキ度(エンゲージメント)では分析をします。
イキイキ度は、エンゲージメント指数やモチベーション指数とも呼ばれ、社員のやる気を表す指標です。
【図5】イキイキ度分析のイメージ
イキイキ度と業務の生産性とは相関関係が強く、イキイキ度が低い部門は生産性の低い業務を多く抱えていいます。例えば、品質保証部門で顧客からのクレーム対応などを行っている場合、これらが後ろ向きな仕事と捉えられイキイキ度が低くなりますし、販売部門で請求書発行、入金チェック、消込作業などの単純業務が多いとイキイキ度が低くなります。特に、部門全体としてイキイキ度が低い場合(一般平均水準を大きく下回る場合)、部門全体のイキイキ度を上げるためには、今後どのような組織や業務へ変えていくべきかといった検討が必要になります。
現状システム概要分析
現状システム概要分析では、基幹システムの機能概要(各サブシステム含む)や、関連システムの機能概要等を整理します。
現状システム棚卸
現状システム棚卸では、基幹システムの機能概要(各サブシステム含む)や、関連システムのシステム一覧を入手し、各システムの概要(機能、構成、システム環境、制約条件等)を整理します。
さらに、基幹システムと関連システムの機能配置やデータの大まかな流れなども整理します。特に、債権管理や債務管理、原価計算、在庫管理などの機能について、販売管理システム、購買管理システム、生産管理システム、会計システムなどと、どのように関連して機能配置(機能分担)されているかには注意して確認してください。
現状インターフェース棚卸
基幹システムに関連する現行インターフェースでは、データごとにインターフェース概要(対象システム名、連携データ内容、連携方向、頻度・タイミング、エラーの発生等)を整理します。
また、連携システムが独自のスクラッチ開発(手組み開発)で老朽化している場合、インターフェース開発に影響を及ぼすため、システムごとの制約条件を確認することも重要です。
将来システム構想把握
将来システム構想把握では、現在情報システム部門で想定している現状および今後のシステム方針(アーキテクチャー、インフラ、セキュリティ等)や、システム化ロードマップ等も確認していきます。
特に、基幹システムの関連システムにおいて、基幹システムと同様にシステム刷新構想がある場合、両者間で導入スケジュール等の調整が必要になるので注意してください。また、情報システム部門に今後の基幹システム刷新における懸念点やリスクも確認が必要です。
ERP概要調査
基幹システム刷新にあたり、候補となるERPについて概要調査をします。
ERP概要調査では、ERP提供ベンダーから、製品・サービスの機能、特徴、導入企業実績、導入企業の規模や業種、過去事例における予算感などを収集し、候補となるERPを絞っていきます。
レイヤーズ・コンサルティングでは、各種のERPの導入経験から、一般的にERPが保有する標準機能のテンプレートや、それぞれの製品の特徴などの知見をもっています。全体構想策定においては、こうした情報を活用し、クライアントのERPの理解促進や、Fit to Standardのための変革ポイントの早期把握などを支援しています。
現状概要分析における課題整理
現状概要分析によって把握された課題は、課題一覧として整理します。
対象領域の全体鳥観図をつくり、現状を明らかにします。
【図6】販売管理業務の業務鳥瞰図の例
さらに、業務鳥観図に課題をマッピングし、全体感をもって課題を整理することが重要です。
特に、経営層に説明する場合、こうした全体を俯瞰した視点からの説明が不可欠です。
【図7】販売管理業務の課題マッピングの例
まとめ
今回は、「クラウド時代!ユーザー主導のERP導入とは」として、基幹システム刷新における全体構想策定フェーズの秘訣(前編)をご紹介しました。次回は、全体構想策定フェーズの秘訣(後編)として、目指す姿の検討、ロードマップ策定、プロジェクト計画策定をご紹介します。
今後の基幹システム刷新は、情報システム部門やベンダーへ丸投げはできません。ユーザー部門が主導して、ERPを Fit to Standardで導入していくことが成功の秘訣といえます。詳細な Fit to Standard でのERP導入のポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。


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この記事の執筆者
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村井 泰三経営管理事業部
バイスマネージングディレクター -
山本 晶代経営管理事業部
ディレクター -
飯田 稜大経営管理事業部
シニアマネージャー
職種別ソリューション





