ユーザー主導のERP導入

【第5回】全体構想策定フェーズの秘訣は何か(後編)

◆この記事の要約

基幹システム刷新を経営に承認させるには、全体構想策定フェーズ(グランドデザイン)で「目指す姿(3年~5年)」「全体ロードマップ」「プロジェクト計画」を示し、基幹システム刷新を手段(HOW)として位置付けることが重要です。そこで本稿は、ユーザー部門主導・Fit to Standardにつなげる具体的な検討手順を整理します。

  • 目指す姿検討:部門MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と現状課題を踏まえ、ゴール時点の目指す姿と目指す業務レベルを定義。
  • 組織方針の要点:戦略家・専門家・実務家(御三家モデル)で役割を整理し、実務家業務の効率化やアウトソーシング(BPO)でリソースを再配分。
  • 取り組みテーマ検討:DX施策やIT基盤構築を含め、基幹システム刷新が全体の中でどう位置付くかを明確化。
  • 全体ロードマップ/プロジェクト計画策定:優先順位付けと3年~5年の時間軸で人的リソース集中を避け、次フェーズに向け社内承認を得る計画を作成。
基幹システム刷新を進めようとする場合、基幹システムに関する部分だけでの検討では、何を実現したいのか、経営効果はどうなのかが不明瞭なケースも少なくありません。こうした目的や効果が説明できないため、基幹システム刷新を経営層に説得できず、ズルズル既存システムを使い続けている企業もよく見受けられます。基幹システム刷新においては、一般的に主管部門であるユーザー部門の中長期的な目指す姿、一定のゴールで実現したい要件、そこまでに何をすべきかとロードマップなどを描いた全体構想を策定し、基幹システム刷新はそれらを実現するための手段(HOW)として位置付けることが重要です。 
そこで今回は、「クラウド時代!ユーザー主導のERP導入とは」として、基幹システム刷新における全体構想策定フェーズの秘訣(後編)をご紹介します。

全体構想策定フェーズとは

全体構想策定フェーズの位置付け
全体構想策定フェーズ(グランドデザイン)は、プロジェクトの全体像や基本方針を定める最初のフェーズです。

【図1】全体構想フェーズの位置付け

この全体構想の可否によって、プロジェクトが経営に承認されるか否かがかかっています。
したがって、主管部門であるユーザー部門(販売部門、生産部門、調達部門、経理財務部門など)は、自らの組織の価値を高めるため何をなすべきかを、全体構想の中で、部門全体で練ることが重要です。

全体構想フェーズの進め方
基幹システム刷新の全体構想策定フェーズとしては、ユーザー部門の現状概要分析(業務・システム)、中長期的な目指す姿検討、一定のゴール(3年~5年)までに実現したい要件と時間軸を示した全体ロードマップ策定、本プロジェクトのプロジェクト計画策定があります。全体構想において基幹システム刷新は、一般的に中長期的な目指す姿を実現するための手段(HOW)として位置付けられます。

【図2】全体構想フェーズの内容

そのため今回は、全体構想フェーズの後編として、目指す姿検討、全体ロードマップ策定、プロジェクト計画策定を中心に説明します。

目指す姿検討とは

目指す姿検討では、現状概要分析の課題を踏まえ、ユーザー部門の中長期的な目指す姿を検討します。

部門のMVV検討

部門のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)検討では、会社として中長期的にミッションやビジョンに対して、各部門の存在意義は何か、どんなミッションを果たすべきか、どんな姿を目指すべきか、大切にすべき価値観は何かなどを検討します。部門のMVV検討によって、各部門としてイキイキとした組織像や、社員の働きがいのある組織像を明確にします。

【図3】MVV検討のイメージ

目指す姿検討

目指す姿検討では、全社方針、各領域の戦略、部門MVVと現状課題を踏まえ、3年~5年といった期限を設け、その終了時点(ゴール)での目指す姿を明らかにします。

【図4】目指す姿の事例

目指す業務レベル検討

目指す業務レベル検討では、目指す姿や各部門のミッションから見て、それぞれの業務の目指すレベルを検討します。検討にあたっては、レイヤーズ・コンサルティングの標準業務鳥瞰図や標準業務一覧に基づき、「本来やらなければいけないができていない業務」を見つけます。
次に、期限(3年~5年)を設け、今後目指すレベルを定義します。そのうえで、目指すレベルの業務の姿を検討し、同時に強化すべき業務、効率化すべき業務も明らかにします。

【図5】業務レベル分析のイメージ|目指す業務レベルの設定

目指す姿実現に向けた組織方針検討

目指す姿実現に向けた組織方針検討では、グループ全体としてのミッションや目指す姿を実現するための組織方針を検討します。

戦略家・専門家・実務家の定義(御三家モデル)
レイヤーズでは、グループの機能別組織を、戦略策定やビジネスアドバイザーとしての戦略家、機能の専門家集団としての専門家、機能のオペレーションを担う実務家の3つの役割(御三家モデル)から定義することを推奨しています。例えば、昨今話題に上がっているFP&A(Financial Planning & Analysis)機能は、経理財務部門の戦略家機能に該当します。

【図6】御三家モデルとは

部門のリソース配分は一般的に実務家が中心であり、戦略家と専門家のリソースが不足しています。目指す姿を実現していくためには、実務家業務の効率化を進めて、そのリソースを戦略家と専門家に再配分することが重要です。レイヤーズでは、実務家業務をいったんアウトソーシング(BPO)し、その余力で変革を進め、変革のスピードと効果をより早期に実現することを推奨しています。

グループとしての務部門の組織方針検討
グループとしての部門の戦略家・専門家・実務家の配置方針を検討します。戦略家は事業ラインに合わせて配置し、専門家はグループ本社に配置し、実務家は地域統括会社や現地に配置し、そのうえで各々具体的役割・レポートライン・事業との関係等を定義していきます。

【図7】グループにおける戦略家、専門家、実務家の配置イメージ

例えば調達部門であれば、全社の調達戦略を考える調達企画部門は本社HQや新しい技術・材料、新規サプライヤーなどの情報を管理し、技術蓄積をする調達技術センターは本社、グローバル調達を行っている調達部門は地域統括、ローカル調達を行っている調達部門は現地、といった配置を検討します。

当然企業ごとに事業の数、事業展開エリア、重要とする機能、子会社の沿革等が異なるので、この配置は企業ごとに異なります。また、環境に対応するスピードやリスク等も踏まえ検討することも重要です。

目指す姿実現のための取り組みテーマ検討

目指す姿実現のための取り組みテーマ検討では、特定の期限(3年~5年)において、各業務の目指すレベルを実現するための取り組みテーマや改革施策を明らかにしていきます。

【図8】目指す姿実現のための取り組みテーマの明確化

目指す姿を実現する取り組みテーマとしては、IT基盤構築やDX施策などもあります。IT基盤の取り組みテーマとしては、基幹システム刷新がその一部を構成するだけの場合も多くあります。したがって、目指す姿がどういうもので、その姿を実現するためにどのようなIT基盤が必要で、そのなかで基幹システム刷新がどう位置付けられるのかについて明確にすることが重要です。

全体ロードマップ策定とは

全体ロードマップ策定では、目指す姿実現のための取り組みテーマについては、優先順位付けを行い、その優先順位にしたがって、通常3年~5年のロードマップを検討していきます。

【図9】全体ロードマップのイメージ

ロードマップ策定においては、各取り組みテーマの時間軸を考慮し、特定期間に人的リソースが集中しないように検討することが重要です。どうしても人的リソースが必要な場合、グループ全体での人財活用や外部リソースの活用なども検討してください。

プロジェクト計画策定とは

プロジェクト計画策定では、本格的なプロジェクトとして立ち上げるためのプロジェクト計画を策定します。次フェーズに進むためには、一般的に社内承認が必要です。プロジェクトの規模等によって承認プロセスが異なるため、各社の社内ルールに則ってプロジェクト計画の承認を得てください。

【図10】プロジェクト計画の目次例

まとめ

今回は、「クラウド時代!ユーザー主導のERP導入とは」として、基幹システム刷新における全体構想策定フェーズの秘訣(後編)をご紹介しました。今後の基幹システム刷新は、情報システム部門やベンダーへ丸投げはできません。ユーザー部門が主導して、ERPを Fit to Standard導入していくことが成功の秘訣といえます。詳細な Fit to Standard でのERP導入のポイントについては、是非レイヤーズ・コンサルティングにお問い合わせください。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。