物理的な場所なんていらない!
バーチャル・シェアードサービスセンターとは

NTTは約3万人の従業員を原則リモートワークの働き方にすることを発表し、2024年4月時点でNTTコミュニケーションズのリモートワーク率は75%となっています。このように各社でリモートワークが一般的になり、仕事は会社でするものから場所に関係なくできるものに変わってきています。
今まで支店や営業所、工場、子会社など場所の制約から地域ごとに存在している間接業務も今やフルリモートで実施できます。そもそもこうした間接業務は、地域や組織ごとでやる必要はありません。
 
今回は、デジタルテクノロジーを使いリモートワークを前提としたバーチャル・シェアードサービスセンター(バーチャルSSC)のポイントをご紹介します。

バーチャル・シェアードサービスセンターとは

事業部門やグループ会社の間接業務(オペレーション業務)を集約化することをシェアードサービスといい、間接業務を集約して運用する組織がシェアードサービスセンター(SSC)です。
ここで言う間接業務とは、経理や人事、総務、法務、情報システムといった業務が代表的です。
SSCは各グループの共通業務を一律で引き受けることにより、業務効率化・品質向上を目的にして親会社内の組織や子会社として設置されます。

また、SSCは分散している業務と人を物理的に集めることが一般的なため、異動・転勤などで集めることが難しく集約化が進んでいない企業も見受けられます。しかし、リモートワークが定着している今日では、人を物理的に集める意味は薄れています。

【図1】リモートワークはニューノーマル

バーチャル・シェアードサービスセンター(バーチャルSSC)は、リモートワークを前提としているので人を物理的に集める必要がありません。場合によっては時間の制約も受けません。バーチャルSSCは、リモートワークが一般的になる時代において、今後のSSCの主流になるのではないでしょうか。

場所にこだわらない組織をつくる

バーチャルSSCを作る場合の第一歩は、各組織の間接業務を実施している人財をSSCに異動させます。
この時場所的に移動する必要はありません。現在の組織にいながらSSCの所属とするのです。
バーチャルに集約するといった観点から、このSSCはバーチャル組織または分散型組織と言えます。
ここで重要なことは、SSCのトップがこれらの人財に対して指揮命令権、レポートライン、人事権などを持つことです。

【図2】SSCトップが指揮命令権、レポートライン、人事権を持つ

こうしたSSCトップの権限強化は、業務を標準化していく場合の成功要因になります。なぜなら現在の組織に所属しながら業務の標準化を進めると、所属組織の部分最適のエゴから標準化が頓挫するケースが多いからです。各組織の人財をSSCに所属させることにより、SSCが強力にその組織と交渉し、全体最適となる業務の標準化を進めていくことができるのです。

バーチャル化のために業務から紙を無くす

更に、こうして標準化された業務をバーチャルで実施していくためには、場所の制約によらない業務フローを創る必要があります。当然、請求書や領収書、社内承認書類など紙によるやり取りが存在したのでは、これを実現できません。
業務フローを徹底的にデジタル化し、ペーパーレス化を進めることにより、誰でも場所に関係なくその業務が実施できるようになります。例えば、今まで所属した組織に場所的な席をおいていたとしても、業務は「別の組織の別の業務」を実施することができます。

デジタル化には、「基幹システムに係わる業務のデジタル化」と「基幹システムの対象外の業務のデジタル化」があるため、ここではそれぞれのポイントを解説します。

基幹業務システム上の業務領域から紙を無くす

基幹業務システム上の業務領域から紙を無くすには、現在の基幹業務システムの変更や改修を伴います。

特に、2000年以前に構築した基幹業務システムの場合は、紙を前提としているシステムが多いため、デジタル化の阻害要因になります。これらは各社独自でスクラッチ開発をしたものが多く、仕様も複雑で改修が困難なシステムも多々あります。もし、こうした化石のようなシステムで改修が困難な場合は、システム刷新が必要になってきます。

2000年~2010年に構築した基幹業務システムの場合は、ERPをベースに構築したケースが多くなっています。しかし、当時の開発はシステムに業務を合わせるより、業務にシステムを合わせる開発をしているため、アドオンが非常に多く、これまた改修が困難なケースもあります。また、ERPベンダーから保守切れを迫られているケースも多くあり、この場合もシステムの刷新が必要になってきます。

システムの刷新には時間がかかるため、それまでは紙をデジタル化する事(スキャナ保存等)に頼らざるを得ません。コロナ対応や電子帳簿保存法対応などで、応急処置的に紙の部分のみをデジタル化した企業も多く見受けられますが、これを機会に後述のように各種クラウドサービスなどを利用して、部分的にでもシステム刷新をしては如何でしょうか。

【図3】紙の部分のみ応急処置的デジタル化事例

また、古い基幹業務システムを前提として紙が多い場合は、紙のデジタル化処理センターをSSC内に設けることも必要になります。

基幹業務システムの対象外の業務領域から紙を無くす

基幹業務システムの対象外の業務領域から紙を無くすということは、例えば、購買申請(紙)→ 発注(紙)→ 検収(紙)→ 請求書受領(紙)→ システム登録(メールでやり取りしている場合も含む)といった全ての業務フローをデジタル化していく事です。
これについては、クラウドサービスを活用することが実務的には有用です。たくさんのクラウドサービスが開発・提供されているので、自社の対象業務に合わせた利用が可能になってきています。

【図4】クラウド購買システムの導入事例

クラウドサービスの利用で問題となるのが、基幹システムとの関係です。
業務フローやシステム機能が重複してしまうことがあります。
もし、前述のような古いタイプの基幹システムを利用している場合は、クラウドサービスの業務フローやシステム機能を利用する方が、業務効率的にも内部統制的にも効果的なケースが多くあります。

また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)による電子帳簿保存法の要件適合性の確認(「認証」)を受けたものもあります。従って、こうした効果を狙って、その部分を基幹システムから移行してはいかがでしょうか。

全国から人財や知恵をバーチャルに集める

今までのSSCは、物理的な場所があったので、その場所に勤務することが一般的でした。しかし、リモートワークを前提としたバーチャルSSCなら、全国から人財をバーチャルに集めることができます。今まで支店、営業所、子会社で業務を行っていた人財をそのままの勤務地で活用できます。
当然、標準化してデジタル化した業務は、リモートで誰でも実施できます。繁閑差や休暇取得などに応じて柔軟な業務の割り振りも可能です。

標準化ができていない業務やデジタル化ができていない業務は、SSCの業務改革専門チームを中心に改革していきます。今までならこうした取り組みは、その場所に行かなければいけませんでしたが、Webミーティングが一般的になった今日では、それぞれの場所から現状業務の洗い出し、業務フロー作成、課題整理、標準化施策検討、標準フロー作成などが可能です。また、こうした業務改革には、各地で業務を行っている経験者なども参加し、衆知を集めて検討を進めることもできます。

【図5】業務改革専門チームによる業務改革の徹底

バーチャルSSCなら、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やクラウドソーシングも広い業務領域で可能になります。昨今ではこうしたサービスプロバイダーも増えていますので是非活用ください。

尚、SSCの業務は固定化・硬直化しやすいので、前述のように業務改革専門チームを必ず設置し、業務改革の徹底やBPOの最適化を心がけてください。

スキルマップをつくり、人財を育成する

バーチャルSSCにおいては、業務に応じたスキルマップが不可欠になります。今までの様に対面でそれぞれの人の仕事を見て評価することができないからです。それぞれの業務に応じてスキルマップを作成し、それぞれの方がどんなスキルを持っているか、期待する役割・スキルに対してパフォーマンスレベルはどうかを明確にしなくてはいけません。

【図6】スキルマップイメージ

これらを明らかにした上で、各人のキャリアプランに応じた育成が必要です。こうした育成にも当然オンライン教育を取り入れ、どの場所の人でも適切に教育が受けられる環境を整える必要があります。

特に、SSCに単なるオペレーション人財として集めたのでは、人財活用として残念なSSCです。それぞれの方の成長を考え、「将来ビジネスアドバイザーになりたい」「スペシャリストになりたい」「ワークバランスのとれたオペレーターになりたい」といった希望に合わせて、キャリアプランと育成方法を用意します。

【図7】専門スキルを活かし自己成長を感じるとイキイキ度が上がる

SSCの役割も、事業部門に対するビジネスパートナーの役割(戦略家)、専門家集団の役割(専門家)、オペレーションサービス提供集団の役割(実務家)を明確化して組織設計をすることが重要です。
また、リモートワークによるモチベーションの低下といったことも考えられますので、是非1on1ミーティングを取り入れ、悩みや不安に寄り添いながら成長を促すように心がけていってください。

今回は、デジタルテクノロジーを使いリモートワークを前提としたバーチャルSSCのポイントをご紹介しました。前述のように、バーチャルSSCは、リモートワークが一般的になる時代においてSSCの主流になると予想されますから、更に詳しい内容にご興味のある方々は、是非弊社までお問い合わせください。

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