会計不正
会計不正とは
会計不正とは、財務諸表の利用者を欺くために、財務諸表に意図的な虚偽表示を行ったり、必要な開示を行わなかったりすることです。具体的な例として、売り上げの架空計上や費用の不計上、資産の評価替えや架空計上、負債の評価替えや不計上等があります。
会計不正が発生する要因
一般的に、不正のトライアングル(①動機、②機会、③正当化)が成立したときに不正が起きるとされています。
①動機
動機とは、不正を実行させる事情や圧力のことです。例として、業績の悪化や予算の未達、ノルマに対するプレッシャー等が挙げられます。
②機会
機会とは、不正の実行を可能または容易にする外部環境のことです。例として、ガバナンス体制の不備や複雑な組織体制、経費申請や決済の承認の形骸化等が挙げられます。
③正当化
正当化とは、不正の実行を是認するような心理的事情のことです。例として、処遇や待遇への不満や業績を重視しすぎる企業文化等が挙げられます。
会計不正の影響
会計不正を行ったことが発覚した場合、企業に大きなマイナスの影響を与えることになります。社会的な信頼を失うことはもちろんですが、詐欺罪や特別背任罪に問われる可能性があり、民事上・刑事上の責任を追及される可能性もあります。例えば、「有価証券報告書もしくはその訂正報告書であって、重要な事項につき虚偽の記載のあるもの」を提出した場合、金融商品取引法の定めにより、個人に対しては10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科されます。また、企業に対しては、7億円以下の罰金が科されるだけでなく、課徴金納付命令が下される可能性もあります。そして、会社や役員に対して株主から損害賠償請求を起こされる可能性もあります。さらにそれだけでなく、上場企業は上場廃止になる恐れもあります。
会計不正を防止する内部統制
アメリカでは、エンロン事件に代表されるような企業の会計不祥事を規制するために、SOX法(アメリカ企業会計法)が制定されました。日本では、SOX法を参考にしたJ-SOX法が制定され、企業の内部統制が義務付けられました。内部統制の目的は、①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の順守、④資産の保全です。これらの目的は同時に達成すべき目標であり、ある目標を達成するために他の目標を犠牲にするようなことがあってはなりません。
会計不正は一度でも行われると、以降も辻褄を合わせるために何度も繰り返し行われます。そのため、会計不正の発生要因である、不正のトライアングルの各要素(①動機、②機会、③正当化)を考慮した内部統制システムの構築をすることが重要です。