業務プロセス改善は地図作りから始めよう

業務プロセス改善は多くの企業で取り組まれ、当社にも多くのご相談がありますが、「課題が多くどこから手をつけるべきなのか」「以前から取り組んでいるが大きな成果は出ていない」「ERP導入時に業務プロセスも見直したはずだが改善につながっていない」などの声を聞きます。そのような場合、スタート地点に問題があることが多いのです。

終わりのない課題、業務プロセス改善

昨年の企業IT動向調査の結果によれば、業務プロセスの効率化は、企業がITで解決したい短期的・長期的経営課題の両方においてトップとなっています。これはこの年に限ったことではなく、前年の調査結果でもトップ、その前の年も同じような結果でした。実態として、国内においては約7割の企業が業務改革や改善に取り組んでいるといわれていますが、業務プロセスの効率化や改善は企業にとって常に優先度の高い課題であり、永遠のテーマと化しています。

業務プロセス改善は、経営課題の解決や業務効率化によって生産性を高めることが主な目的ですが、社員にとって働き易い業務環境を作り、より創造性の高い仕事をしてもらうためでもあります。そのための支援ツールがITであり、昨今はERPやデジタルツールが普及していて、ほとんどのケースで業務プロセス改善はシステム導入と一体で進められています。

例えば、ERPパッケージが国内に本格上陸した1990年代は、BPR(Business Process Re-engineering)が盛んであり、それ以来BPRをともなうERP導入が多くの企業で行われてきました。しかし、ERPのようなシステム導入と並行して達成されるはずの業務プロセス改善については、期待どおりの成果が出ないこともしばしばあります。

【図1】業務プロセス改善に対する企業の期待度

まずは地図を作ることが大事

ではなぜ業務プロセス改善がうまくいかないのでしょうか、理由とは何なのでしょうか。
それは最初の目的設定が曖昧であったり、各部門が現行業務に執着していて改革意識が希薄であったり様々な原因があると思いますが、一番最初に行うべき現状分析が不足しているケースがかなり多いのではないでしょうか。

例えば、道路や鉄道の交通環境整備を行うのであれば、現状インフラマップが検討のスタート地点になりますし、ある地域の災害対策を検討するのであれば、そのエリアのハザードマップが検討のスタート地点になると思います。このように、プロジェクトの遂行にはまず現状を知ることが必要不可欠であり、「地図」は現状を知るために最も重要な土台となります。その地図上に情報を重ねることで、私たちは今その場所がどんな状況なのか知ることができます。

現状分析は、プロジェクト開始に必要な「地図」を作ることを意味します。業務プロセスを改善するにあたり、現状分析をしっかりと行わないことは、不正確な地図を片手に目的地を探すようなものなのです。
特にシステム導入をともなう場合は、現状分析をしっかり行わないと、必要な業務や要件を見落としてしまい、後々の問題の火種となることがよくあります。また、社内には様々な情報が散在していて、人によって認識が違ったり、「多分こうです」という憶測もあったりなど沢山の情報が出てきます。それらの真偽を整理して正確な「地図」を作ることで、改善に向けたディスカッションの共通土台とすることができるのです。

作戦遂行に必要な地図

次に、どのような「地図」を作ればよいのでしょうか。
コンサルティングの現場では目的によって様々な「地図」を作成しますが、現状分析で必ず作る基本的な地図としては【図2】のような「ビジネスマップ」・「プロセスマップ」・「システムマップ」の3つが挙げられます。これらの地図ができて初めて、業務プロセス改善のスタート地点に立てたと考えるべきでしょう。ただ、この地図作りはそんなに簡単な話ではありません。現状分析に必要な情報や文書が社内に完備されていることは稀で、情報がない、情報が古い、紙にしか書かれていない、範囲が広く情報が膨大…という感じで、事実確認と文書化に多大な工数がかかる作業なのです。

しかし最近は、BPM(Business Process Management)ツールやEAM(Enterprise Architecture Management)ツールなど、現状分析作業を支援するツールも数多く存在しており、これらのツールの力を借りることで、膨大な「地図」作りにかかる工数を、大幅に軽減することも可能になっています。

例えば【図3】のように、当社にて顧客企業の現状調査を行ったケースでは、現状業務の情報がほとんど文書化されていなかったため、業務部門にヒアリングをしながらプロセスマップを作成したのですが、BPMツールを使うことでプロセスマップ作成作業が大幅に効率化され、約600の業務フローを5週間で作成・電子化した事例もあります。

【図2】コンサルティングの現場で必ず作成する地図

【図3】ツールを活用して地図作りを効率化

地図をベースに作戦を考える

しかしながら、いうまでもなく業務プロセス改善は「地図」を作って終わりではありません。
改善すべき課題を収集・想定したらそれを地図にプロットし、課題を可視化します。現場部門にヒアリングをしていると、「これまでさんざん業務効率化はしているので、もう改善余地はないよ」といわれることもありますが、改善や改革のポイントは部門と部門の業務のつなぎ目である「業際」にあることが多いので、そこに着目して地図を確認してみることも重要です。

例えば、営業が受注を受けた後、製造部門は生産を行いますが、受注の変更が起きた時の業務の流れと情報の流れはどうなるのか、またサプライヤーからの部品供給に遅れが生じた時に、生産部門の生産計画とどのように連携するかなどです。

そのようにして業務課題を把握した後、作成した「地図」に課題をマッピングし、その発生地点と関係部門への影響がわかるようにします。また、各業務で使用されている情報システムについても、重複・散在・老朽化・非効率などの課題やセキュリティ上の問題がないかどうか等を検討します。抽出された課題は、経営上の課題・業務プロセスの課題・情報活用の課題・システム運用の課題などにグルーピングしたうえで、それぞれの課題に対する解決方法を検討し、最終的には解決策を適用した新業務・新システムのイメージとして新しい「地図」を作ります。

このように、業務プロセス改善において「地図」が果たす役割は非常に大きいのですが、特に【図4】の最初にある「現在の可視化」=“地図を作成 ”を疎かにしないことが重要なのです。

【図4】地図をベースに作戦を考える

レイヤーズでは、現状分析による課題の可視化をはじめとして、業務改革・プロセス改善、システム化構想、実装・定着化までをご支援します。進め方についてアドバイスをもらいたい、他社での事例を聞きたいなど、お気軽にご相談くださいませ。

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