Fit to Standardの真実
~失敗しない基幹システム導入~

基幹システム導入にあたって 「Fit to Standard」 を金科玉条として掲げて進めていったにもかかわらず、結果論としてアドオンだらけになるケースが現状では数多くあります。
また、現場にとっては動くが経営者にとって使えないシステムになっていることも多くあります。
 
今回は、ERPとはそもそも何かを振り返りながら、基幹システム導入を失敗しないための導入ポイントを紹介いたします。

VUCAの時代に求められるERPの役割

まず初めにERPが持つ2つの性格を振り返ってみます。
ERPは現場が利用する業務システムつまり「オペレーションシステム」である一方で、入力データは経営判断のための元情報となるため「意思決定システム」という性格も持ちます。システム導入の目的として、オペレーションシステムとしてはいかに生産性向上のために業務をシステム化できるかが問われ、意思決定システムとしては経営判断のためにどのようにデータ活用できるのかが重要になってきます。
VUCAと呼ばれるこの時代においては、特に意思決定システムとしての役割がより重要になると考えています。データ経営という言葉があるように、データに基づき迅速な意思決定をしていかなければ、市場環境の変化についていけなくなっていくからです。

ERPの役割の変化を捉えた場合、意思決定システムとしては活用形を意識してデータの標準型を定め、データガバナンスの確立すなわち「Fit to Data」が重要です。一方のオペレーションシステムとしては、業務改革により各社独自業務のシンプル化を図る「Fit to Process」が重要です。

【図1】ERPが持つ2つの性格

Fit to Data:経営における重要な情報を定義する

多くの企業では、経理財務部門の方々が会計システム・ERPにあるデータを加工して経営層にレポートしているかと思われます。しかし、そのレポートの源流データをきちんと押さえているという方々が意外と少ないというのも事実です。受発注等はフロント側の部門の範疇だと、ある種の壁を作ってしまう方もいます。しかし、会計システムには各種システムからの取引内容が仕訳になって連携されてきますから、適切な経営情報を提供するのであれば、データの繋がりを押さえることが必須です。

データの繋がりを押さえた上で重要なことは、どのようにデータを取得しデータガバナンスを保っていくかということです。経営へのレポートに必要な指標は何のデータで、どう取得するのかをERPの導入時に定義しておくことが必要であり、これこそがFit to Dataの考え方です。

【図2】Fit to Data のポイント

Fit to Process:聖域なき業務改革を推進する

聖域なき業務改革といえども、まずはAs-Is調査をしていくことが重要です。これを怠って網羅的に現状を確認しなかったために、要件定義フェーズ以降での手戻りや、最悪の場合には稼働後に業務が行えないといったことが発生することもあり得ます。従って、プロセスの網羅性を押さえた業務の棚卸ということを行っていくことが必要です。

【図3】聖域なき業務改革の第一歩としてのAs-Isの調査

また、従来型のプロセスの最適化を図るような業務改革では、個々の業務の最適化が優先されるため個別の仕組みや機能が必要になります。さらに、源流から下流までの繋がりが意識されていないため、必要なデータが取れずにDXを阻害することになり兼ねません。従って、聖域なき業務改革のためには付加価値を起点に業務を作っていくことが必要です。自社・ステイクホルダーにとって価値のあるデータ・業務をミッションに基づいて導出し、将来を創る仕事(VALUE)を強化し、また一方で、今必要な仕事(BASE)は徹底的にシンプル化・廃止を推進するといった取り組みが必要です。

Fit to Standardの実現に重要なシステムの“組み合わせ”

Fit to Standardを推進するにあたってもう一つ重要なポイントは、“組み合わせ”です。即ちERPの苦手分野は外部ツールを使い解決してしまおうということです。
ERPはパッケージ商品であるが故に、ベースの機能は世界レベルで最大公約数的になっています。従って各社の要件にはマッチしない機能はどうしても存在します。それをカバーする機能をアドオンで中に作りこむのではなく、外部ツールによって解決します。
一括登録であればRPA、多軸分析帳票であればBI、消し込みであればAIやFCPM(Financial Corporate Performance Management)等、ツールを組み合わせながらERPの苦手分野をカバーしていくことが昨今のトレンドとなっています。このようなツールはクラウドでの提供が増えているため、イニシャルコストを抑え、まずは導入してみることができるようになっています。

【図4】Fit to Standard を支える「組み合わせ」

ただし、クラウド型ツールは日々新しいサービスが誕生しており、ある意味ジャングル状態になっています。RPAを始めとしたインプット系や、データ変換ツール、BIツールなど様々なジャンルのツールが生まれており、最近はローコード開発ツールも出てきています。クラウド型ツールは気軽に始められるものの、上手く組み合わせていくためには製品特性を踏まえた“目利き”が何よりも重要です。必要に応じて専門家の意見も参考にしていただければと考えます。

今回は、ERPとはそもそも何かを振り返りながら、基幹システム導入を失敗しないための導入ポイントを紹介いたしました。詳細については、是非お問い合わせください。

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