CFO・Xへの道

今の経理財務部門では、将来なくなっていく?

FP&A、SSC、BPO、AI活用、DXなど様々なキーワードが注目され、「今までどおりの業務はいずれなくなる」、「これまでどおりの働き方を変えていかないといけない」と周りをじわじわと固められている経理財務部門。
 
ただ実態は、「変わらなきゃいけないと頭では分かっているけれど、目の前の日々の業務に追いまくられ結局現状維持と変革着手は先延ばし」という企業が多いのではないでしょうか。
 
・自分がいるあと数年の間は、このままでいいやと考えている部門長
・10年以上やってきた担当業務をこの先もずっと続けて、少しずつでもお給料が上がればいいやと考えている担当者
 
そんな人が多いのもJTC(Japanese Traditional Company)の特徴です。
 
今回は、変わらないといけないと頭で分かっているのなら、CFO組織として何からどう手を付ければいいのか、その具体的な一歩を踏み出す手立てをご紹介します。
 
【CFO組織とは】
CFOを核に熱き思いと冷徹な計算で企業価値創造をドライブする集団
広くは、経営戦略、経営管理、財務会計、ファイナンス戦略、税務戦略、内部統制、リスクマネジメント、監査、サステナビリティ、IR等の領域を担当

経理財務部門の実態

コンサルティングサービスを通して数多くの経理財務部門の方々に関わってきましたが、まじめで努力家な方々が多いですし、やるべきことをいかに効率的・有効に行うかという改善能力が非常に高いと感じます。
一方で、ルールどおりにきちっと行うことが重視されてきたため、現状を変える・新しいことをやるということにやや消極的ということも感じます。
経理財務部門長の方々とお話をすると、変革に対し従業員の理解を得るのが難しいということもよく耳にします。

しかし、レイヤーズ・コンサルティングが経理財務部門で働く方々を対象に行ったアンケートからは、オペレーション業務に6割を割いている現状に対し、今後は中期経営計画や事業計画の策定・管理、意思決定のための情報提供・アドバイスといったビジネスアドバイザー機能や、会計方針策定、ルール・プロセス等の整備・展開、業務効率化や生産性向上施策実行といった専門家・企画機能にもっと注力していきたいと考えているという結果が得られました。
調査結果から実際に経理財務部門で働いている方々は、少なからず変革意欲を持っているということが分かりました。

では、どんなステップで変革を起こしていけばいいのでしょうか。

【図1】経理財務部門で働く従業員の実態①

【図2】経理財務部門で働く従業員の実態②

まずは改革の余力を生み出す

目の前の業務に忙殺されて新たなことに取り組めない、変革のための検討ができないという場合、まずは現行業務の削減・効率化による余力創出が必要となります。
業務プロセスの見直しやシステム化を図ってもよいですが、ミニマムに最短距離で確実に効果を出すには思い切ってBPOを活用することをお勧めします。
すでにマニュアル化されている業務や複数人で担当している業務などは手離れがよいので、まずはそこから外に出してみて空いた工数で変革に取り組んでいきます。

経理財務部門の業務は、ほとんどがBPOの検討対象となります。
支払処理や経費精算は外部化できそうだけど、我々の業界は特殊で専門性が高いので特に入金管理は外部化できないといった声をよくお聞きします。
しかし、入金消込をAIを活用して自動化する技術などは既にシステムに実装されていますし、パターンを学習すれば外部の人員でもシステムでもやれないことはないのです。

また、BPOに出すことによって業務がより標準化され、効率化されるというメリットもあります。BPO活用はなにも恒久的なことではなく一時的な活用を前提にしてもよいので、二の足を踏まずにまずは余力を作ってしまうということをお勧めします。

どんな方向に変わっていくべきか

これまでの経理財務部門の仕事の多くはオペレーション業務といえます。
決められた業務をルールに則り処理していくことなので、外部化しやすく多くは将来AIやDXに代替されていくと言われています。
今後、貴重な人財を従事させておくべきはオペレーション業務ではなく、戦略に関わることや将来の意思決定に関わること、また会社の基盤(従業員が働くためのプラットフォーム)を整えることになってきます。

従って、これまでの経理財務部門の枠組みを超えて、CFOを支えるCFO組織として位置付け・役割を再定義し人員を再配置することが必要になります。
当社ではよくCFO組織に必要な機能を御三家モデルとして説明していますが、そのうち戦略家・専門家の機能がより重要になってきています。

【図3】CFO組織としての3つの役割~御三家モデル~

新しい役割を担うための、初めの一歩としての経験を積む

戦略家は狭義のFP&Aと言えるので、経営企画・経営管理の側面がより重視されます。
目指すべきは、事業部門長の右腕として事業経営上の意思決定に必要な情報を提供し、意思決定のサポートをしていく事業FP&Aや、会社全体の経営意思決定のサポートをしていくコーポレートFP&Aです。
しかし、今伝票作成や決算処理、財務諸表作成等を担当している人にいきなりFP&Aの役割を担ってもらうのは難しいため、まずは管理会計の実践を積むことが重要です。

例えば、事業別・地域別・製品別等の予実分析や見込分析等の数字を出すだけでなく、各事業部門の予実報告やアクションプラン検討の場に立ち会い、事業戦略に対し財務的観点に基づく確認・アドバイスを行っていくことや、目的に沿った管理会計上の各種分析とそれに基づく戦略検討・意思決定を行うことなどの実践を積んで、いずれ各事業部門や子会社をCFOとして担っていくというのが1つの道です。

もう1つの専門家ですが、これは何も会計や税務についてだれよりも知識がある人を指しているわけではありません。知識やノウハウがあることだけではなく、プラットフォーマーとしての役割を果たすことが専門家として重要です。
プラットフォーマーとは、会社としての基盤や仕組みを整える人ということです。
税務知識をベースに新しい取引における税務処理方法を検討するということも専門家の役割ですが、新しい業務ツールを導入してそれを社内に展開することや、現行の業務プロセスを見直して改善を図り定着させていくことも専門家の役割です。知識やノウハウをベースに他の従業員が働きやすくなる、各自の役割を全うするための手助けをする役割と捉えると分かりやすいかと思います。

専門家として人を育てるには、現状を変化させる・改善するという経験を積むことが重要です。
そのためには社内のプロジェクトに配属してみることがお勧めです。
法制度対応やシステム導入など様々なプロジェクトがあると思いますが、そこで経験したことを定常的な組織・役割で担っていける人財に育てていきます。

【図4】一般的な戦略家・専門家・実務家の役割

どう進むべきなのか、会社が示し、各自が志向する

戦略家、専門家としてのあるべき姿だけを思い描くと、理想としては理解できても中々踏み出せないかと思いますが、具体的に何から始めるかということをイメージしてみると、実は今でもできることだったり、既に社内のどこかでやっていることだったりするのではないでしょうか。

今経理財務部門に所属する方々は、自分は何に向いていてこれからどんなキャリアを築いていきたいかを改めて考えなくてはならない局面にきています。
戦略家を目指すか専門家を目指すか、実務家であるならこれまでどおりのオペレーションではなくより付加価値の高い業務として何ができるか、はたまた事業部門への転換を図るか、いずれにせよ今の仕事にしがみついたままでは数年後には自分の仕事が社内にはなくなっているかもしれません。

会社は組織や業務分掌の壁を取り払い、変革の方向性を示し、変革のための余力を生み出し、その余力で社内の人財が新たな役割で変革を始めてみる、その一歩を始めることで変革のスタートを切ることができます。

経理財務部門の進む道はこれまでの枠組みの延長戦上にはありません。
変革実行の手段を基に、初めの一歩を踏み出していきましょう。

今回は、変わらないといけないと頭で分かっているのなら、何からどう手を付ければいいのか、その具体的な一歩を踏み出す手立てをご紹介しました。
詳細については是非お問い合わせください。

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