組織風土改革のポイントは『北斗神拳』

私の世代では、「北斗の拳」は非常にハマったアニメであり漫画でした。週刊少年ジャンプの発売を心待ちにしていたのを覚えています。「北斗の拳」は、独特の世界観と魅力的なキャラクターたちが登場し、「おまえはもう、死んでいる」「ひでぶっ」「我が生涯に一片の悔いなし」などの流行語も生み出し、一大ブームを巻き起こしました。
今回は組織風土改革について(ちょっと無理矢理なところもありますが)、その「北斗の拳」と結びつけてご説明させていただきます。

「北斗の拳」の魅力的な登場人物

「北斗の拳」は、週刊少年ジャンプにて連載されていた漫画で、1983年から1988年まで全245話に渡って連載されておりました。作画は原哲夫先生、原作は武論尊先生でした。TVアニメは1984年10月にスタートしています。当時小学生だった我々の心をガッツリと捉えた伝説的な作品です。舞台は世紀末で、核戦争により文明社会が失われて、暴力が支配する世界となっており、北斗神拳の伝承者であるケンシロウが愛と悲しみを背負い救世主として様々な敵と戦い、自らも成長していく姿が描かれた漫画です。

北斗の拳ではとにかく魅力的な人物が登場し、自分は誰が好き、誰に憧れる、と子供のころよく話をしていました。
北斗神拳ではラオウ、トキ、ジャギ、そしてケンシロウ。南斗六聖拳では、ケンシロウからユリアを奪ったシン(殉星)、南斗水鳥拳のレイ(義星)、ユダ(妖星)、盲目の闘将シュウ(仁星)、「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」という名言が有名なサウザー(将星)、この5名の登場人物が小学生の心を鷲掴みです。南斗六聖拳のもう一人は実はユリア(慈母星)で、南斗最後の将です。また南斗の正統血統者であるユリアを守護する五人の拳士、南斗五車星としての、風のヒューイ、炎のシュレン、山のフドウ、雲のジュウザ、海のリハクも小学生をワクワクさせました。

【図1】「北斗の拳」登場人物
参考文献:原哲夫、武論尊『北斗の拳』

この作品の魅力は、単なるアクションシーンの連続にとどまらず、人間の精神性や道徳的な葛藤を深く掘り下げています。ケンシロウの旅は、単に強敵を倒すことだけでなく、愛と喪失を通じて自己を見つめ直す旅でもありました。

「北斗神拳」と「南斗聖拳」の違い

「北斗の拳」では、北斗神拳と南斗聖拳が二つの武術スタイルとして登場しますが、北斗神拳は「陰」、南斗聖拳は「陽」として語られ、二つのスタイルは、それぞれ独自の特徴と哲学を持ち、作品の深いテーマと緊張感を生み出しています。

まず、北斗神拳は、内部からの破壊を目的とした武術です。このスタイルは、相手の体内の「秘孔」を正確に突くことにより、内部からの破裂を引き起こし、敵を死に至らしめます。この技術は非常に高度で、その知識と技術は一子相伝で受け継がれてきました。北斗神拳は、静かでありながらも圧倒的な破壊力を持ち、作品の中で多くの魅力的なシーンを描き出しております。

一方、南斗聖拳は、外部からの破壊を特徴とします。このスタイルは、敵を切り刻むような攻撃で、速さと敏捷性に焦点を当てています。南斗聖拳は一子相伝ではなく、ケンシロウの時代には108派存在し、それぞれが独自の技術とスタイルを持っています。南斗聖拳は、活動的で爆発的な性質が作品にダイナミズムを加えています。

【図2】「北斗神拳」と「南斗聖拳」の違い
参考文献:原哲夫、武論尊『北斗の拳』

この二つのスタイルの対比は、「北斗の拳」の核心的なテーマの一つです。内部と外部、静と動、陰と陽といった、相反する要素のバランスが、この物語を独特なものにしています。北斗神拳の冷静かつ計算されたアプローチと、南斗聖拳の熱狂的でダイナミックなスタイルは、物語の中で絶えず緊張感を生み出し、読者を引き込む要素となっています。

ここまで好き勝手に「北斗の拳」について語ってきてしまいましたが、いよいよ、組織風土改革のポイントについて説明をしていきたいと思います。

組織風土改革の敵「経路依存性」

経路依存性とは、過去の選択や決定や、歴史によって決められた仕組みや出来事に縛られる現象で、一度特定の方向性やパターンが確立されると、それから逸脱することが難しくなり、将来の選択肢が制限されてしまいます。絡み合って硬直化した状態となります。

イノベーションを起こすために多様な人財ということでダイバーシティがバズワードとして各企業で取り組んでいます。しかし、同質性の人財ばかりではイノベーションが生まれません。多様性を!と舵を切るにしても、同質性の人財で構成された組織は、新卒一括採用、終身雇用、メンバーシップ型、評価制度などと絡み合って硬直化しています。その結果、ダイバーシティだけを掲げても経路依存性から抜け出せずうまくいかないことが多く見受けられます。

過去を守っていては勝てません。過去のやり方を捨て、思い込み(固定観念)を捨て、パラダイムシフトをしてくことが重要です。今日のような変化の大きい時代に今もなおPDCAサイクルを重視し、ありもしない「日本的経営」といった幻想に囚われていては始まりません。年長者の言うことは正しいという思い込みや、頑張れば勝てるという思い込みを捨てて、過去からの制度も見直し、時代にあわせていくことが必要です。

組織風土改革においても「経路依存性」が障害となります。経路依存性が、過去の成功体験や慣習が強固な基盤を形成し、新しいアイデアや変更を受け入れにくくするためです。成功体験は組織文化の一部となり、従業員は新しい方法よりも既存の方法に固執しやすくなります。組織風土改革を成功させるためには、この経路依存性を打破する必要があります。

では、「組織風土改革のポイント、北斗神拳」について説明していきたいと思います。

組織風土改革のポイントは北斗神拳!

組織風土改革のためには、社内(内部)のメンバーが一体となって、変革のポイント(秘孔)をついて、経路依存性を打破(破壊)していくことが重要となります。まさしく北斗神拳!(無理矢理感が半端なく、大変申し訳ございません)

組織風土改革は、社内のトップ、ミドル、現場が一体となって推進していく必要があります。1年2年で成果は出ません。北斗神拳のように2000年の歴史!とは言いませんが、組織風土改革の「遅効性」の特徴を理解し、早くて3年、普通で5年、遅ければ7年、10年とかかるものだと覚悟が必要です。時間がかかりますが、長期戦がゆえに、そこで作られた優れた組織風土は、そう簡単には真似のできない最強のものとなります(まさしく北斗神拳!)。
従って、トップマネジメント層に風土改革の「遅効性」を理解してもらい、覚悟を持ってもらうことを改革スタートの前にしっかりと伝えることが重要です。トップマネジメント層はえてしてせっかちですので、効果が遅れてくることを最初に伝えることが重要です。

次に変革のポイント(秘孔)がどこかをしっかりと明確にする必要があります。そのためにも、組織風土、業務、活力の3つの視点からの現状分析(現状の視える化)が重要となります。実は多くの企業で支援をさせていただくと、その会社の皆様の認識が、「普通の鏡」に映した綺麗な姿でしか認識していないことが多く見受けられます。我々(レイヤーズ)の調査結果をもとに「真実を映す鏡」で、本当は見たくない姿、聴きたくない事実、言いたくない現実を、忖度なく見せることで、自分たちの『不都合な本当の姿』を認識してもらうことができます。真実の鏡でもって本当の姿を見せることで全社一体となって危機感を共通認識にしてもらい、組織風土改革の変革ポイント(秘孔)を明確にしていきます。

【図3】真実を映す鏡

「秘孔」をついて組織風土改革したA社

最後はA社の事例をご紹介いたします。
A社は8つの事業が存在し、親会社が販売した商品を管理・運用・保守するサービス業です。ただし、親会社の販売数自体が減少傾向であり、また親会社が管理・運用・保守をグループ会社以外にも委託する方針を打ち出したため、A社自身で新規事業を開発し、新市場を開拓していく必要がありました。
しかし、社内のメンバーは言われたことを真面目にこなし、マイナスをとにかく生まないようにする、受動的・消極的な人財ばかりでした。

先ず現状分析として、活力(エンゲージメント)が現状はどのレベルかを分析しました。3.8あればエンゲージメントは高く、3.2では要注意というもので、A社は3.41という決して「良い」とは言えないレベルでした。データを分析していくと、8つの事業で比較した際に、事業部のVisionが明確で、浸透している事業部は、エンゲージメントも高く、また、業績も良いということが見えてきました。

【図4】ビジョン浸透度とエンゲージメントの相関

また褒めたり認めたりしている度合い、成長機会の提供度合い、などについて、事業部長の認識レベルを確認し、実際に現場側のレベルとの乖離を見ました。その結果、乖離が小さい部門は現場エンゲージメントが高いという結果が出ました。事業部長がしっかりと現場の状況を理解しているかどうかがエンゲージメントに影響を与えていたのです。

【図5】事業部長と現場の乖離の視える化

そこで事業部長が大きな一つの変革ポイント(秘孔)であることを明確にし、事業部長の意識改革からスタートしていきました。

紙面の関係上詳細をこちらでは控えますが、それ以外にも「ありたい姿」の策定や、改革推進者による合宿及び各現場での草の根運動、横の繋がりを持てる「場(趣味での交流会、最新事例共有会)」も用意し、しょんぼり職場だったA社も強くて良い会社へと変革し、イノベーション創出、生産性向上を実現しました。

少し前半で北斗の拳について紙面を多く取りすぎましたが、まとめていきますと、風土改革のためには、経路依存性を打破し、過去の慣習や成功体験に固執することなく、新しいアイデアやアプローチを受け入れる柔軟性が必要です。
これを実現するには、組織全体でとにかく学ぶ姿勢と変化を受け入れる革新の文化を育むことが重要で、危機感をみんなで理解し、変革の必要性を腹落ちし、推進するリーダーシップの存在が不可欠です。経路依存性に対抗するには、意識的な努力と組織全体のコミットメントが求められます。

今回は、組織風土改革において大切なポイントについてご紹介しました。事例の詳細など是非ともご紹介したいと思いますので、お問い合わせいただければ幸いです。

参考文献:原哲夫、武論尊『北斗の拳』

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