事業拡大と業務量増加のジレンマ
これに対処するため、BPOやAIの活用、業務の効率化が急務となっています。
今回は、事業拡大に伴い増加する業務を如何に効率化するかのポイントについてご説明いたします。
事業拡大に伴い経理、人事の業務が増加する
事業の成長は、企業にとって喜ばしいことですが、その一方で、業務量の増加という、避けては通れない課題も伴います。特に経理や人事といったバックオフィス部門は、事業の拡大に比例してその負担が増大します。新規拠点の設立や取引先の増加、あるいは従業員数の増加によって、各種業務が複雑化し、益々これまでのリソースだけでは対応が難しくなるのです。
このような状況下で、多くの企業は「事業拡大=業務量増加」というジレンマに直面します。拡大による利益を得る一方で、増加する業務負担が社員の負担を増やし、場合によっては組織全体の効率を下げることにもつながりかねません。この課題を解決するためには、伝統的な業務のやり方の見直しが必要です。
例えば経理機能では、新規拠点の設立となれば、固定資産管理、減損管理の業務が増えていきますし、取引先が増加すれば、債権債務の管理、処理の業務も増えていきます。従業員が増えれば、経費精算の業務や各種問い合わせが増えてきます。
人事機能では、従業員が増えれば、各種手続きが増え、勤怠管理の対象も拡大するため業務量が増加します。
経理機能や人事機能に求められるのはオペレーション業務ではなく、『専門家』として法制度対応やグループ方針の策定、また『戦略家』としての事業計画立案支援、投資戦略、資金戦略、人財戦略、人財育成計画などに注力してほしい、というのが経営からの要請です。事業拡大に伴い、オペレーション業務が増加し、オペレーション業務に追われてしまうのは望むところではありません。
【図1】事業拡大に伴い増加する業務量
固定業務と変動業務の特定
事業の拡大とともに、企業内の各部門で業務量が増加するのは自然な現象です。しかし、事業が成長する中で重要なのは、増加する業務を正確に特定し、それに適切に対応することです。
業務には、事業の規模にかかわらず一定のリソースを要する「固定業務」と、事業拡大に応じて増減する「変動業務」が存在します。例えば、経理部門における月次決算や年次報告書作成などの業務は固定業務ですが、新規拠点の設立や取引先の増加に伴う債権管理や固定資産管理といった業務は、既存事業の成長・拡大に伴って増加する変動業務です。また、新規事業を展開していこうとすると、新たな会計ルールの設定、会計プロセスの追加、勘定科目の設定など、新たな業務(変動業務)が追加になってきます。
固定業務は、ある程度の予測が可能であり、リソースの配分も計画的に行うことができます。しかし、変動業務は事業の成長に応じて突然増加するため、予期しない負担が発生しがちです。これを放置してしまうと、企業全体の効率が低下し、リソースの無駄遣いを引き起こすリスクがあります。したがって、事業拡大に伴い増加する変動業務、新規事業展開に伴い発生する変動業務をしっかりと認識し、それに対して事前に対策を講じることが非常に重要です。
変動業務をしっかりと認識し、中長期の事業計画を踏まえて、どのくらいの規模で変動業務が増加していくのかを把握し、現メンバーの業務許容量でいけるのか、どのくらいリソースが不足するのかを見定めることが重要となります。
【図2】固定業務と変動業務
固定業務と既存の変動業務の効率化
まずは固定業務と既存の変動業務の中で効率化できるものを洗い出し、効率化していきます。
そのためにはまず現メンバーの全員に対して業務項目別の業務量を把握し、多くの業務工数がかかっているものを明確にして、具体的な業務内容をチェックして、業務課題を整理していきます。
例えばですが、
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- 業務プロセスが整備されておらず、都度確認しながら進めているため非効率になっているもの
- 他部門と二重になっている業務があり、業務分担の見直しが必要なもの
- 必要情報・資料が分散しており、都度情報を集める工数が発生してしまっているもの
- そもそも業務プロセスが煩雑なもの
- システムに一部不備(〇〇と□□が対応していないため手作業で紐づけ等)があり、手間が発生しているもの
といった業務が見えてきますので、廃止、簡素化、標準化、集約化、IT化、外部化といった効率化施策を実施していきます。
効率化の事例を少しご紹介すると、もう既に多くの企業で対応されているかと思いますが、単なる「問い合わせ」と、専門知識を必要とする「相談」とを切り分けて、単なる問い合わせであれば、AIを活用したチャットボットでの1次対応をすることで効率化が図られます。また、いまだに会議資料がExcelを使い、手作業で作成し、分析もExcelでやっているケースも見受けられます。会議の場で質問されても、深掘りをその場でできず次回の会議までの宿題ということで1か月後になってしまう、といったことが起きています。BIツールを活用し、BIツールのレポート画面で報告し、質問に対してもその場で深掘りして回答する形でリアルタイムに対応していくことが求められます。このようにその場でリアルタイムに対応することはスピード経営にもなりますし、経理部門の効率化にもなります。
【図3】単なる問い合わせと専門的相談の仕分け
新規事業展開のための業務効率化
新規事業展開に伴い、経理部門では新しい会計ルールの策定や、適切な勘定科目の整備、そして会計プロセスの設計といった新たな業務が増加します。経理部門に対しては、事業の透明性と効率を確保しつつ、適切な財務管理を実現するための対応が求められます。
しかし、よくあるのが新規事業の企画が通り、新規事業を実行するというときに、後追いで経理部門に相談がなされて、経理部門も期限の短い中で新ルール、勘定科目の整備などに追われてしまうことがあります。やはり大事なのは、フロントローディングで新規事業企画が立ち上がったら経理部門も参画し、一緒にビジネスを作っていく、業務、ルールを作っていくことが大事です。経理がビジネスや業務ルールの構築に積極的に関与することで、事業の成功と財務管理の質を高めることができます。
また、ビジネスプラットフォームを構築しておくことが重要となります。ビジネスプラットフォームとは、ビジネスを行うための制度・ルール、組織、業務運用基盤等の共通インフラです。
新たなビジネスモデルが生まれた場合でも、ビジネスプラットフォームに乗れば事業運営がスムーズにスタートできるようになります。こうすることにより、各現場では事業の探索と深化に専念でき、身軽な事業運営を実現できます。
ビジネスプラットフォームの構築を事業部門・子会社に任せ切りにしたり、都度その場しのぎで経理部門として対応したりしてしまうと、グループでバラバラとなり、全体最適や価値創造の足枷になってしまいますし、せっかくの「知」が属人化して暗黙知になってしまいます。ビジネスプラットフォームは経理部門が「専門家」としてしっかりと企画・構築し、運営していくことが重要となります。
【図4】経理財務領域のグループ ビジネスプラットフォーム
データでガバナンスするためにデータをガバナンスする
ビジネスプラットフォームの具体的な話を例示として1つご説明していきます。しっかりとデータでガバナンスしていくことが大事ということで、データドリブン経営というのを色々なところで耳にします。データでガバナンスしていくためにはデータ自体をしっかりとグループ全体で標準化していく必要があります。いわゆる、データをガバナンスしていくことです。経理部門では、勘定科目、各種コード体系、会計方針、処理ルール、及び会計期間の統一などが重要となってきます。
【図5】データをガバナンス
データをガバナンス(APM・COA・データ標準)することで、グループの経営情報が適正化・均質化され、そのグループ経営情報を活用し、事業部門・子会社の事業活動や各種取引をモニタリングすることが有効的になります。
【図6】データでガバナンス
このようにビジネスプラットフォームを構築していくことで、経理部門の新規事業展開による業務増加を抑制し、オペレーション業務に追われることを阻止していきます。
企業が成長していくためにも既存事業拡大、新規事業展開は必要です。そのために経理や人事の人数がどんどん増えていくことは企業としては望んでおらず、そもそも人も採用しづらいため、固定業務と変動業務を見定め、それぞれ効率化していくことが重要となります。その手段の一つとしてビジネスプラットフォーム構築は有効となります。
有効手段としてのBPO
最後に効率化の有効な手段としてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)についても触れていきたいと思います。既存事業の拡大、新規事業の展開に伴い、経理機能や人事機能については業務の効率化が急務となってきます。ポイントは、いかにしてスピーディに改革を進めるか、というところになります。このような課題に対して、BPOの活用が非常に有効です。
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業務改革のスピードアップが求められる今、BPOを通じた迅速かつ効果的な業務改善を実現していくことが重要となります。貴社の成長を加速するための最適なソリューションを、私たちが全力でサポートいたします。
今回は書面の関係上、具体的内容や事例などのご紹介ができておりませんので、是非ともお打ち合わせをさせていただきご紹介させていただければと思います。
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この記事の執筆者
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石井 哲司経営管理事業部
マネージングディレクター
税理士 -
青柳 智子経営管理事業部 兼 BPO事業部
バイスマネージングディレクター -
小野 智貴経営管理事業部
マネージャー
職種別ソリューション