価値創造本社への変革
余白創出と人財循環戦略によるパラレルアプローチ

当社では、中期経営計画・ビジョンで資本効率向上を掲げ、その目標達成に向けて構造改革に取り組む多数の企業を見てきました。構造改革の重要テーマの一つとして、「本社・間接部門の改革」についてプロジェクトとして取り組んだものの、「途中で頓挫した」「十分な成果が得られなかった」というケースも散見されます。
今回は、本社・間接部門が価値を創造する組織へと変わるための改革、その実践的アプローチとして「業務改革による余白創出」と「人財循環戦略」をパラレルで進め、改革で成果を出すポイントをご紹介いたします。

義務化対応に奔走し、オペレーションに追われる本社部門

現状、約4割の日本企業がPBR1倍割れを起こしており、資本効率が低い企業では、「金」「人」を成長分野に大胆に振り向けていく構造改革が待ったなしと言えます。資本効率向上・構造改革の取り組みとしては、「事業ポートフォリオの再構築」「粗利をしっかり確保するための値上げ・プライシング強化・コストダウン」「フレキシブルな生産体制の再構築」「キャッシュ創出力を高めるためのCCC改善」等様々な施策が挙げられますが、今回ご紹介したいのは、業種業界を問わず、改革余地が大きい「本社・間接部門の改革」です。

そもそも、本社部門とはどのような存在でしょうか?コストセンター本社、あるいは本社のせいで稼いだ利益が減る「本社費のおもし」というような見方、さらにはコングロマリット・ディスカウントを生み出す根源だと揶揄される場合もあります。しかし、本来本社部門は複数事業を束ね、横串を指し、各事業の社会価値創出や稼ぎ続ける力を高め、グループ全体での総和を超えて「プレミアム」を創造する存在であるべきです。ただ、実際の本社部門は、次々と変わる法改正や様々な開示義務化等への対応に追われて“改革疲れ”、そして“日々のオペレーションで手一杯”という実態があろうかと思います。

ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ氏が提唱している3Pillar modelに日本企業の業務の実態を当てはめると、オペレーション業務の占める割合が7割以上という企業が多数という結果が表れています(弊社調べ)。「プレミアム」を創造するには日常のオペレーション業務を減らし、戦略の担い手(Center of Excellence)や各事業部門に対する価値提供を行う存在(Business Partner)としての役割について、戦略的にやるべきことのターゲットを絞って強化していくことが求められます。

【図1】本社部門の現実

オペレーション業務からの解放により、余白を創出

まずは、本社部門を現状のオペレーションから解放することが第一歩です。そのためには、仕事に対する意識をグレートリセットする必要があります。例えば、「ひたすら業務を足し算するのではなく、業務を引き算したうえで足し算する」「人に仕事を与えるのではなく、ポスト・タスクに最適な担い手をあてがう」「続々と増える仕事に受け身で構えるのではなく、要点を絞って攻める」といったスタンス・意識へと変わることが重要です。

またその上で、仕事自体をグレートリセットすることが必須です。「①過去から漫然と続けてきた目的・効果の不明な業務を廃止」、「②社内で行う必要のない業務のBPO」、「③DXによる極力人手を介さない業務プロセスへの変革」といった3つの切り口から余白(ヒト・時間)を生み出すための具体的施策を立案し、実行していきます。(こちらの具体的アプローチや施策事例等については、また別の機会でご紹介します。)

【図2】仕事自体のグレートリセット

生み出す余白(ヒト・時間)の行き場を設計し、再投下・シフトを実行する人財循環戦略の実践

これらの業務改革によって生み出す余白(ヒト・時間)はどうするのか?この観点が抜けてしまうと、業務改革プロジェクトが頓挫する・失敗するといってよいと思います。余白を放置すれば、また新たに仕事をつくってしまい、リバウンドしてしまうというケースも多く見受けられます。生み出す余白(ヒト・時間)をどこに再投下・シフトするのかを計画的に設計・実行していくことを「人財循環戦略」と称し、推奨しています。余白をより付加価値の高い仕事にシフトする、組織を跨いで適所適材配置を行うことをパラレルに進めることで、価値創造できる本社・組織へと変わることができます。そこで、「人財循環戦略」として検討すべきポイントをいくつかご紹介したいと思います。

そもそも我が部門のプレミアム・付加価値は何なのか?これが明確になっておらず、組織内でも十分に共有されていない部門があると思われます。このような状況の場合、先ず、部門のリーダーが自分の“おもい”で我が部門のパーパス・ビジョン・ミッションを語り、言語化することが起点となります。そして、その我が部門の未来・ありたい姿に向けて行うべき“重要な仕事”を定め、生み出した余白をその“重要な仕事”に絞って充当する「戦略的な足し算」を行うべきです。部門内メンバで「今期の我が部門が注力すべき“重要な仕事”はこれだ」と共有し、各メンバの現在の仕事の役割分担の見直しも併せて行うことが重要です。これが、「(1)部門内での余白(時間)の活用・人財循環」となります。

【図3】我が部門の付加価値は何か

次に、自部門の中だけで余白を循環するのではなく、全社で効果的に循環させていく必要があります。それぞれの部門で付加価値を生む仕事、成長分野や重要課題を担うキーポジションの特定とその人財需要について、事業責任者と人事部門が一緒に議論を行って明確化します。人財需要(質・量)を企業全体で棚卸し、余白の充当先候補を定め、「(2)部門を跨いだ余白(ヒト)の活用・人財循環」として、人事異動、適所適材配置を行います。

ここまで進めたとしても、実際には、生み出した余白(ヒト)が「人財需要とマッチしない」「選ばれない・パフォーマンスがでない」といった一定数のアンマッチ・ローパフォーマーが存在するようになります。これらに対しては、企業として再挑戦の機会を提供するとともに、厳しく向き合っていく必要があります。日本企業にとっては馴染みが薄いかもしれませんが、PIP(performance-improvement-plan)をいち早く提示し、実行していくことが重要です。①現状の課題を伝え、②期待値・改善点を提示し、③自己鍛錬の期間を与えて、④改善状況をモニタリング・評価するといったプロセスを確立し、実行していくことです。このようなPIPを実施し、それでも社内でマッチしなければ社外のより輝ける場所で活躍する選択肢を提供していく「(3)社外への人財循環」を行っていくことも必要になります。

【図4】PIP(performance-improvement-plan)

以上のように、価値創造本社への変革は、「余白創出」を目的とした業務改革と、「人財循環戦略」をパラレルに実施し、余白のシフトを可能な限りスムーズに行っていくことができれば、最大の効果を発揮できます。弊社では、これらの全社的なプロジェクトの立ち上げ・実践をご支援しています。また、人財循環戦略、特に社外への人財循環では、キャリア開発や希望退職制度等の人事施策についても、各企業の経営の価値観を踏まえて立案・実行もご支援しています。ご関心をお持ちいただけましたら、是非お気軽にご連絡ください。

【図5】余白創出と人財循環戦略によるパラレルアプローチ

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この記事の執筆者

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