データ基盤活用で押さえるべき
「ガバナンス組織」のいろは

この記事の要約

本記事では、全社データ基盤を維持・発展させるガバナンス組織について解説します。データ基盤の重要性、CDO・データアーキテクト・データスチュワードの役割、組織内連携、持続的運用と支援例を紹介します。単なるシステム構築にとどまらない体制づくりや、スモールスタートから全社展開する考え方も扱います。

この記事を読むとわかること

  • 全社データ基盤にガバナンス組織が必要な理由
  • CDO・データアーキテクト・データスチュワードの役割の違い
  • ガバナンス組織を機能させる連携と開発工程の進め方
  • 全社データ基盤を持続的に運用し、全社展開するためのポイント
データドリブン経営の推進や、生成AIを利用した社内データの利用を進めていくうえでは、社内のデータを1つの大きな“ハコ”(全社データ基盤)に蓄積することが近道です。しかし、ただ“ハコ”を作るだけでは、継続的な利用や発展は見込めません。そこで本記事では、全社データ基盤を維持・発展させるために、必須となるガバナンス組織の必要性や役割について解説いたします。

全社データ基盤の重要性とガバナンス組織の必要性

データドリブン経営やAI活用の必要性が高まっている中、社内のデータを包括的かつ効率的に活用することが、昨今の大きな経営課題の一つとして挙げられます。全社データ基盤は経営判断や業務効率化の中核を担う重要な資産であり、上記の経営課題への解決策として大きく貢献できるソリューションです。
一方、膨大かつ多様なデータを一元管理し、継続的に活用するためには、単なるシステム構築にとどまらず、組織的なガバナンス体制の構築が不可欠です。

ガバナンス組織は、データの品質維持、セキュリティ確保、法令遵守、そして戦略的活用を支える意思決定の中枢として機能します。特に経営層にとっては、データ基盤の信頼性と活用価値を最大化するために、データガバナンス組織の設計を課題の一つとして捉える必要があります。このガバナンス組織は、全社横断的な業務・システム要件の調整や、全社データ戦略の策定・実行、リスク管理の観点からも重要な役割を果たします。ガバナンス組織を組成せずに全社データ基盤の運用をしてしまうと、誤ったデータや使えないデータが次第に全社データ基盤に流入・蓄積してしまったり、データ漏洩やセキュリティインシデントが発生したりする恐れがあります。

ガバナンス組織を適切に設計するためには、適切な役割とその定義付けが肝要になるため、次章でその詳細を記します。

【図1】ガバナンス組織の必要性

ガバナンス組織の中核役割―― CDO(Chief Data Officer)、データアーキテクト、データスチュワード

全社データ基盤のガバナンス組織は、主に3つの専門的役割で構成されます。

CDO(Chief Data Officer)

CDO(Chief Data Officer)は、企業の経営戦略と連動したデータ戦略の策定およびデータガバナンスの最終決定者です。データ活用の方向性を示し、組織の横断的な調整を推進します。また、全社に対して全社的なデータ活用を促し、データの民主化を主導します。いきなり役員クラスのCDOという役職を設置することが難しい場合は、将来的なCDO候補者をデータマネージャーとしてアサインし、育成していく事例が多いです。

データアーキテクト

データアーキテクトは、データモデルの設計やシステムアーキテクチャの構築を担当し、技術的な基盤を支えます。拡張性や柔軟性を確保しつつ、セキュリティやコンプライアンス要件を満たす設計が求められます。また、ガバナンスを維持していくための規定やルールの策定を行います。規程やルールは定期的な見直しを行い、実態に即した形で適宜最適化を行います。

データスチュワード

データスチュワードは、業務現場の要望を咀嚼し、質の低いデータや誤ったデータが基盤に入らないよう管理する「データの番人」です。現場とガバナンス組織の橋渡し役として、データ品質の維持と運用ルールの徹底を担います。全社データ基盤の推進においては、業務や機能ごとに担当領域を定め、領域ごとにデータスチュワードのアサインを行います。担当する領域の業務とシステムに精通している人員をアサインすることが重要です。

これら三者が連携し、戦略・技術・現場の視点を融合させることが、全社データ基盤の持続的な価値創出の肝となります。

【図2】ガバナンス組織のポジションと役割

ガバナンス組織設計のポイントと組織内連携の強化

ガバナンス組織を効果的に機能させるためには、役割ごとの責任範囲を明確にしつつ、組織内の連携を強化することが重要です。

CDOは、経営層と現場の橋渡し役として、戦略的な意思決定を迅速に行い、データアーキテクトやデータスチュワードと密に連携して、現場の課題や技術的制約を把握します。データアーキテクトは、技術的な視点から最適なデータ基盤設計の提案を行います。さらにデータ基盤の開発者に対して、要件の伝達や調整を行います。データスチュワードは、日々のデータ品質管理を通じて、現場の声をフィードバックします。フィードバックの内容によってはデータアーキテクトと相談のうえでデータセットの改善やダッシュボードの改良・新規追加等の検討を行います。これらの連携を促進するために、定期的な会議や情報共有の仕組みを設けることが肝要です。

また、開発工程の中では各工程にマイルストーンを設けます。業務要件定義ではデータスチュワードが主体となり、ユーザーと共に成果物を作成します。システム要件定義に移る段階では、データスチュワードからデータアーキテクトに要件および成果物の説明と引き継ぎを行います。システム要件定義ではデータアーキテクトが主として実行しますが、データスチュワードは適宜Q&A対応を行います。また、システム要件定義後はデータアーキテクトから開発者へ要件を引き継ぎます。各工程でCDOが最終承認者となり、全社データ基盤への実装可否を判断し、要件ごとの優先度設定を行います。

ガバナンス組織の権限と責任を明確にし、経営層の支援を得ることで、組織横断的な調整やルール遵守を徹底できます。さらに、変化するビジネス環境に対応するため、柔軟な組織運営と継続的なプロセス改善も欠かせません。

【図3】ガバナンス組織の連携イメージ

経営層が推進すべきガバナンス組織の持続的運用と文化醸成

全社データ基盤の価値を持続的に高めるためには、ガバナンス組織の設計だけでなく、その運用と企業文化の醸成が不可欠です。

データ基盤の構築を進めていくうえでは、一足飛びに大きな成果を求めるのではなく、まずはスモールスタートで小さな成果を生み出し、成功体験を積み重ねることが重要です。活動初期は限定的な人員でプロジェクトを発足させ、ある程度の知見が蓄積し、人材の育成が進んだ段階で全社的な活動として広げていきます。その際、初期プロジェクトメンバーはデータ品質やセキュリティの重要性を浸透させるため、教育・啓発活動を推進し、新たなデータスチュワードをはじめとした担当者の育成にも注力すべきです。

全社的にガバナンス組織がうまく稼働した際には、活動成果を定期的に評価し、改善点を抽出してPDCAサイクルを回すことで、組織の成熟度を高めていくことができます。加えて、これらの持続的な運用を支えるためには、経営陣の積極的な参加も必要不可欠です。経営層が率先してデータドリブン経営を推進し、ガバナンス組織を支える文化を醸成することが、全社データ基盤の発展的な活用と企業競争力の強化につながります。

ガバナンス組織立ち上げにおけるレイヤーズのご支援例

レイヤーズ・コンサルティングでは、全社データ基盤の立ち上げに際し、ガバナンス組織の組成支援も多く実施しております。

これまでガバナンス組織が全くなかった企業の場合は、本記事の第1章から第2章で記載した3つの役職を全て内製するのではなく、レイヤーズが一部の役割を代替することが多いです。具体的には、データアーキテクトはシステム的な知見が必要なため、レイヤーズで代替し、基礎となるドキュメント類(概念データモデルやガバナンス規定等)の作成を行い、お客様ごとに合った型を作っていきます。その中で、データアーキテクトの候補となる方々に教育を行っていき、伴走しながら育成を支援します。

また、第2章記載のとおり、CDOはまずデータマネージャーとしてアサインを行っていくことが多いです。最初はどういった戦略や方針決定をすればよいのかわからない場合が多いため、レイヤーズで作成したデータ戦略や方針のレビューを中心にお客様に行っていただきます。また、データ基盤を構築・実装していくうえでの社内調整や社内認知度向上施策を検討していただきます。レビューを行っていく中で、ガバナンスの知識が身についていくため、徐々にデータ戦略や方針策定についての知見を蓄積し、自立していくことを最終的に目指していただきます。

レイヤーズでは、全社データ基盤の新規構築や、構築済みのデータ基盤のさらなる発展に向けたご支援を多数実施しております。ぜひお気軽にご相談ください。

【図4】ガバナンス組織組成と成長のご支援事例

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。