会計システム刷新

【第4回】会計システムの標準機能活用
・機能追加の秘訣とは

◆この記事の要約

ERPや会計パッケージを最大限に活用するには、標準機能設定・パラメーター設定・API連携の特徴を理解し、カスタマイズ開発とアドオン開発を最小化することが重要です。
そこで本稿では、会計システム刷新の成否を分ける「標準機能の使いこなし」と「Fit to Standard」の視点から、導入・拡張の考え方を体系的に解説いたします。

  • 標準機能設定の要点:パラメーター設定で業務要件をどこまで実現できるかを見極め、過度なカスタマイズやアドオンを防ぐ。
  • API連携の特徴:外部システムやクラウドサービスを安全・効率的に連携し、拡張性を高める。
  • カスタマイズ開発の留意点:標準プログラム改変による保守負荷・コスト増加を理解し、必要最小限にする。
  • アドオン開発の活用:標準機能を変更せず機能拡張できる手法として、API連携型アドオンを活用する。
ERPや会計パッケージを導入する場合、それらが用意している標準機能を利用することが前提となります。しかし、自社の業務要件をどうしても満たせない場合、「カスタマイズ開発」や「アドオン開発」が必要になります。
しかし、カスタマイズ開発やアドオン開発が余りにも多いと、後々の保守メンテナンスに支障が発生し、想定外のコストがかかり、ERPや会計パッケージを導入するメリットを打ち消しかねません。
これを防ぐには、ERPや会計パッケージの標準機能活用、カスタマイズ開発やアドオン開発について、その内容や方法、特徴を正しく理解することが重要です。
 
そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、標準機能設定、カスタマイズ開発やアドオン開発などについてご紹介します。

標準機能設定とは

ERPや会計パッケージの標準機能で出来ることとできないことを理解するうえで重要な方法論が、パラメーター設定機能とAPI連携機能です。
ここではこの2つをご説明します。

パラメーター設定機能

パラメーター設定とは
ERPや会計パッケージの標準機能は、システムの動作や業務プロセスを柔軟に調整するための設定項目があり、この設定項目のことをパラメーターといいます。
パラメーター設定では、画面上のメニューや管理画面から数値や選択肢、フラグなどのパラメーターを入力・選択することによって、システムの機能や動きが変えられます。 例えば、画面の表示項目や表示項目名を変えたり、会計伝票の承認段階数を変更したりすることができます。

【図1】パラメーター設定の役割

パラメーター設定とカスタマイズ・アドオン
パラメーター設定は、ERPや会計パッケージの標準機能の一部として提供され、これによりシステムの様々な動作を切り替えられるよう設計されています。 つまり、パラメーター設定は標準機能における追加・変更可能な部分といえます。
逆に、パラメーター設定で対応できない要件は、「カスタマイズ開発」や「アドオン開発」をするか否かを検討します。

ERPや会計パッケージの導入時の留意点
ERPや会計パッケージは、ユーザーの業務要件をできるだけ標準機能で実現するために、パラメーターで設定できる範囲を拡大してきました。したがって、パラメーター設定に詳しい技術者がいれば、「カスタマイズ開発」や「アドオン開発」の範囲を少なくすることも可能です。
しかし、パラメーター間の影響度等を熟知した技術者はあまりいません。複雑なパラメーター設定をした場合、熟練の技術者しか対応できないなど、後々の保守メンテナンスが難しくなる一面もありますので注意してください。

以上のように、ERPや会計システムの導入時には、業務要件をパラメーター設定でどこまでカバーできるかを十分に検討することが重要です。過度なカスタマイズを避け、パラメーター設定を最大限活用することで、保守性や運用効率が向上するからです。

しかし、導入前に経理財務部門の方々がこれらを自ら検証することは難しいため、ERPや会計パッケージに詳しい弊社のような水先案内人を活用することも有効です。是非その際にはご相談ください。

API連携

API連携とは
API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェア同士が互いに機能やデータをやり取りするための「窓口」や「ルール」のことです。
ERPや会計パッケージの標準機能やデータベースに安全かつ効率的にアクセスするためのインターフェースです。例えば、あるシステムの機能を外部のプログラムから呼び出したり、データを取得・更新したりする際に使われます。

【図2】API連携のイメージ

ERPや会計パッケージではAPIは標準機能の一部
APIは、外部システムや独自開発のアドオンからERPや会計パッケージの機能を利用したり、データ連携を行ったりする際に使われます。
APIは下記の特徴があるため、ERPや会計パッケージには通常このAPIが用意されています。

【図3】API連携のメリット

カスタマイズ開発とアドオン開発

ERPや会計パッケージの導入に際し、企業固有の要件を加え標準機能に変更・追加を行う方法には「カスタマイズ開発」と「アドオン開発」があります。
カスタマイズ開発とアドオン開発は一般的に異なる方法ですが、この表現はERPや会計パッケージの提供会社によっても異なるため、実際の導入にあたっては提供会社の表現にしたがってください。

また、標準画面・帳票のレイアウト変更や標準業務フローの変更等については、標準機能の範囲としている製品・サービスもあるので、どこまでが標準機能でどこまでがカスタマイズ開発やアドオン開発になるかも、提供会社に十分確認することが重要です。

カスタマイズ開発とは

カスタマイズ開発とは、ERPや会計パッケージの標準機能の画面、業務ロジックを直接修正・拡張する開発手法です。具体的には、標準プログラムの改変(変更・追加等)やデータベースの改変(項目の変更・追加、テーブルの変更・追加等)などが行われます。

【図4】カスタマイズ開発のイメージ

ERPや会計パッケージの提供会社が、データベース構造やプログラムのソースコードを開示していない場合、カスタマイズ開発は提供会社しかできません。また、データベース構造やプログラムのソースコードを開示していたとしても、カスタマイズ開発は一般的に下記の問題点があるため、推奨されません。

【図5】カスタマイズ開発のディメリット

以前は、カスタマイズ開発が可能なERPや会計パッケージもありましたが、上記の理由により昨今では、カスタマイズ開発ができる製品・サービスはあまりないようです。また、SaaS型のクラウドサービスでは、利用会社全体に影響が及ぶ可能性もあるため、カスタマイズ開発はほとんどできません。

アドオン開発とは

アドオン開発とは、ERPや会計パッケージの標準機能を変更せず、外部モジュールや追加プログラムとして機能を拡張する開発手法です。
アドオン開発は、一般的に下記の特徴があるため、カスタマイズ開発より推奨されています。

【図6】アドオン開発のメリット

アドオン開発ついては、ERPや会計パッケージのシステム環境そのものに追加する場合や、ERPや会計システムの提供会社が用意している環境に追加する場合、導入企業がシステム環境を用意して追加する場合などがあります。

ERPや会計パッケージのシステム環境そのものに追加する場合

アドオン開発には、ERPや会計パッケージのシステム環境そのものに追加することができる場合があります。利用会社からすれば、ERPや会計パッケージとは別の環境を用意しなくてもいいというメリットがあります。

【図7】ERPや会計パッケージのシステム環境でのアドオン開発

以前はこうしたアドオン開発が主流でしたが、API連携でシステム間の連携を行うことが一般的な昨今では少なくなっているようです。

導入企業がシステム環境を用意して追加する場合

API連携でシステム間の連携を行うことが一般的になってくると、アドオン開発を行うシステム環境をERPや会計パッケージのシステム環境とは別に用意して、そこに標準機能では不足するアドオン開発を行うようになってきました。また、ERPや会計パッケージの提供会社も自社製品・サービス内でのカスタマイズ開発やアドオン開発を避けるため、API連携によるアドオン開発を推奨しています。

【図8】自社が用意した環境でのアドオン開発

ただし、この方法の場合、自社でアドオン開発の環境を用意しなければいけないという面もあることに注意してください。

ERPや会計システムの提供会社が用意している環境に追加する場合

API連携でシステム間の連携を行うことが一般的な今日では、API連携でアドオン開発を行うシステム環境をERPや会計パッケージの提供会社があらかじめ用意していることもあります。提供会社がこうした環境を用意することにより、利用会社がアドオン環境を自ら構築する作業や検証する作業を減らし、ERPや会計パッケージを導入しやすくなります。

【図9】ERPや会計パッケージの提供会社が用意している環境でのアドオン開発

API連携による他の製品・サービスとの連携

APIを使えば、ERPや会計パッケージの提供会社以外の会社の製品・サービスを使うことも可能です。昨今では、クラウド型サービスとして各種のサービスが提供されていますから、アドオン開発の代わりに、これらのサービスを使うことも可能です。

【図10】API連携で他の製品・サービスとの連携

また、ローコードやノーコードによるアプリケーションソフト開発ができる環境を提供するサービスもあり、アドオン環境としてこうした環境を使うことも可能になってきています。
ただし、それぞれAPI連携には条件があるので、それぞれの製品・サービスが自社の要件に適合しているか否かを導入前に適切に確認しておくことも重要です。

まとめ

今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、標準機能設定、カスタマイズ開発やアドオン開発などについてご紹介しました。
ERPや会計パッケージのメリットを最大限に生かすためには、標準機能だけでこれらを導入する「Fit to Standard」の考え方が重要です。「Fit to Standard」については別途ご紹介します。
なお、個別のERPや会計パッケージ等による標準機能設定、カスタマイズ開発やアドオン開発のポイントについては、是非お問い合わせください。

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