会計システム刷新

【第3回】今どきの会計システム刷新方法の秘訣とは

◆この記事の要約

老朽化した会計システムの刷新は、多くの企業にとって喫緊の経営課題です。
そこで本稿では、スクラッチ開発とERP・会計パッケージ活用の違い、統合型と専用型の選択、密結合か疎結合かという設計思想、オンプレミス型とクラウド型(SaaS含む)の比較など、「会計システム刷新のキホンのキ」を体系的に整理し、今どきの刷新方法の秘訣を独自視点で解説します。

  • スクラッチ開発とERP・会計パッケージ活用の違いと選択ポイント
  • 統合型パッケージと専用型パッケージの特徴と設計思想の確認
  • 密結合・疎結合などERPの設計思想と拡張性の見極め方
  • オンプレミス型とクラウド型(SaaS・IaaS・PaaS)の違いとクラウド活用の前提
2000年前後に各社で構築された会計システムは、それから四半世紀が経ち大きく老朽化し、刷新の必要性が高まっています。また、昨今の技術革新の進歩から様々なクラウドサービスやAIサービスも出現しており、これらを踏まえてどのように会計システムを刷新すべきかといった声も多く上がってきております。会計システムの刷新方法には、スクラッチ開発、ERP活用、会計パッケージ活用、クラウドサービス活用等様々な手段があります。そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システム刷新の方法をご紹介します。

スクラッチ開発かERP・会計パッケージ活用か

会計システム開発の実現手段は、「スクラッチ開発(作る)」と「ERP・会計パッケージ活用(買う)」があります。

スクラッチ開発
スクラッチ開発は、ソフトウェアやシステムをゼロから開発する方法です。
開発期間やコストがかかる一方、自社業務に適用した独自性の高いシステムを構築できます。しかし、その後の保守メンテナンスを自らが実施しなければならず、また、消費税対応に代表されるような制度対応時に自社による多大な開発負担が生じます。

ERP・会計パッケージ活用
ERP・会計パッケージ活用は、既存のERP・会計パッケージを導入する方法です。
開発期間やコストを抑えられる一方、ERP・会計パッケージの標準機能では賄いきれない業務が生じる可能性があります。この標準機能で賄いきれない業務を新しく多大にシステムへ作り込んだ場合、結果としてスクラッチ開発とあまり大差がないので注意してください。

スクラッチ開発かERP・会計パッケージ活用か
業界業種によって異なりますが、会計システムに係る業務は、販売管理や生産管理、購買管理などに比べて、独自性がなく競争領域ではない傾向にあります。したがって、余程の個別要件がない限り(公共系や金融系の企業ではこうした要件が多いようですが)、スクラッチ開発はあまりお勧めしません。
2000年以前は自社独自の会計システムを作ることもありましたが、最近はERP・会計パッケージ活用(買う)が主流であり、それぞれの製品・サービスも追加機能開発等を行い、標準機能も充実してきています。したがって、レイヤーズではERP・会計パッケージ活用(買う)を推奨します。

ソフトウェアパッケージとしての会計システム

システムを買う場合、以前は「ソフトウェアパッケージ」を購入することが主流でした。ソフトウェアパッケージとは、特定の機能や業務を実現するためにあらかじめ開発・設計され、製品として提供されるソフトウェアのことをいい、一般的にハードウェアにインストールし、設定を行うだけで利用可能な形態で提供されています。ソフトウェアパッケージは、その業務で必要と考えられている「標準機能」を中心に構成されています。

こうしたソフトウェアパッケージの提供形態にも、統合型と専用型があります。

統合型パッケージ
統合型は、基幹システムソフトウェア群の一部として会計システムがあるパターンです。
ERP(Enterprise Resource Planning)と称して提供されているものは、統合型にあたります。
ERPは、「企業資源計画」と訳され、企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を統合的に管理・最適化するためのシステムやソフトウェアのことです。ERPの本来の意味は、「経営戦略としてのポートフォリオ戦略に応じた資源配分計画のための意思決定を支援するシステム」の意味ですが、現実には企業の日々の取引(伝票)を正確に記録するシステムとしての役割が強いといえます。しかし、企業の様々な業務(販売、購買、在庫管理、生産管理、会計、人事など)を一つのシステムで一元管理し、業務の効率化と情報の共有を実現しするためには、このERPが必要です。

専用型パッケージ
専用型は、会計システム単独で製品化しているパターンです。
しかし、当初会計システム単独で提供していた提供企業が、その後会計システムだけでなく販売管理や生産管理、購買管理、人事管理等の製品を並行的に開発・販売し、それらを含めて「ERP」と称していることも多いようです。

統合型パッケージか専用型パッケージか
このように最近では統合型と専用型の区分けが曖昧になっています。したがって、会計システムだけを入れるなら、自社要件にあったものを選択すればいいということになります。
しかし、統合型と専用型では、そもそもの設計思想が異なることが多いため、各製品の設計思想がどのようになっているのかを吟味することが重要です。特に、会計システム以外の基幹システムへの拡張を将来想定している場合は、機能構成やデータ構成、拡張容易性等に注意してください。

ERPの設計思想の違い(密結合か疎結合か)

会計システムとしてERPの導入を考えている場合、密結合か疎結合かも一つの判断材料になります。

【図1】密結合型ERPと疎結合型ERPのイメージ

密結合型ERP
密結合型ERPは、構成する機能やデータベース構造について全体最適を目指して設計されています。
機能間の連携が強いため、会計システム単独の導入であっても他の機能の導入も必要になってきます。

疎結合型ERP
疎結合型ERPは、個々の機能を連携したものであり、機能やデータベースの重複をある程度認めて設計されています。各機能単位での導入が前提となっているため、会計システム単独の導入が他の機能に関連なく可能なERPです。

これらは各社の製品・サービスの開発設計思想の違いであり、各社の製品・サービスを紹介するホームページ等でもわからないことが多いので、是非お問い合わせください。

オンプレミス型かクラウド型か

ソフトウェアを買う場合、システム資源をどこまで自社でもつかによって、オンプレミス型とクラウド型の構築に分かれます。

【図2】オンプレミス型かクラウド型か

オンプレミス型
ソフトウェアパッケージを買う場合は、ソフトウェアやシステムを自社の施設内(オンプレミス)に設置されたサーバーやハードウェア上で運用・管理する形態(オンプレミス型)が一般的です。
オンプレミス型の場合、ソフトウェアのバージョンアップ等を自社の都合で行うことが可能です。
また、ソフトウェアの標準機能で賄えない場合、追加開発の範囲が広く、自社の要件に合わせることも比較的可能です。

クラウド型
最近では、ソフトウェアパッケージを買うのではなく、クラウドとうたってSaaS(Software as a Service:特定のアプリケーションやソフトウェアをクラウド上で提供サービス)型で提供される会計システムサービスを購入するケースもあります。しかしながら、柔軟性とスケーラビリティが高い半面、ソフトウェアのバージョンアップ等はサービス提供者側が主導するケースも多いようです。
当初からSaaS型で提供されている会計システム中には、比較的小規模の企業群からサービスを開始し、徐々に規模の大きな企業に提供を拡大してきたというサービスもあります。SaaS型を検討する場合には、自社の規模を考慮して、導入実績企業の規模等を参考に検討してください。

また、同じくクラウドとうたっていますが、SaaSではなくIaaS(Infrastructure as a Service:システムを構築するためのインフラをクラウド上で提供するサービス)や、PaaS(Platform as a Service:アプリケーションのためのプラットフォームをクラウド上で提供するサービス)を前提に、クラウドにクライアント用の個別環境を構築して提供しているケースもあります。この場合、オンプレミス型と同様に、ソフトウェアのバージョンアップ等を自社の都合で行ったり、追加開発の範囲が広かったりしますので、SaaS型とどこが違うのか確認することが重要です。

まとめ

今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムの構築の仕方をご紹介しました。今後の会計システムの構築は、AI等の技術革新のスピーディーな活用等のポジティブ要因と、システムの保守メンテナンスやそれにともなうIT人財の問題等のネガティブ要因から、クラウドサービスの活用が主流になると予想されます。個別のERPや会計パッケージ等による構築やクラウドサービスの活用のポイントについては、是非お問い合わせください。

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