人事部門の生産性を高める超速構造改革

この記事の要約

本記事では、人事部門の生産性を高める構造改革について解説します。日本企業のグループ経営で増えやすい問い合わせや調整工数を踏まえ、例外処理の最小化、BP・CoE・OPEの役割分離、SSC・BPO活用、SLO/KPIによる品質・コスト管理と事例を整理します。

この記事を読むとわかること

  • 人事部門で構造改革が必要な理由
  • 人事オペレーションの例外処理を最小化する方法
  • BP・CoE・OPEの違いと役割分離の考え方
  • SSC・BPOを活用して人事の工数を減らすポイント
人事部門は、制度改定・法対応・個別事情への配慮など「変化点」が多く、手作業や調整に工数がかかっております。その結果、経営が期待する人材戦略(配置・育成・エンゲージメント等)に十分な時間を割けていない状態が常態化しています。本記事では、日本企業のグループ経営で起きやすい“人を抱えすぎる構造”を踏まえ、SSC(シェアードサービス)・BPO・BP/CoE再設計を組み合わせて、人事を少数精鋭で回し、価値を生む人事へと進化するための実践ポイントをご紹介します。

なぜ今、人事の「構造改革」が必要か

日本企業では海外と比べて労働生産性にギャップがあります。もちろん、前提や数値の取り方により多少増減があるとはいえ、ギャップがあることは真実だと思いますし、そのギャップをどう埋めるかは重要な経営課題と考えます。では、人事はその課題にどう向き合うべきでしょうか。答えは、個人の頑張りではなく“構造”を変えることです。 特に、グループ会社を多く持つような大企業では、勤怠・申請・異動・昇給・昇格などの処理が多様化し、問い合わせや例外処理が増えやすく、工数が雪だるま式に膨らみます。この状態では、価値を生む「攻めの人事」に時間を割けません。

構造改革の狙いは、以下の3点です。

  1. 標準化して集約する
  2. 統制することで継続的な取り組みをする
  3. 価値を創出する機能へ人員・工数を再配分する

【図1】国別の労働生産性比較

「オペレーション過剰」の状況を断ち切る設計の起点は“例外処理”の最小化

人事の仕事が重くなる最大の原因は、実は「通常処理」よりも「例外処理」です。誰かの事情で申請が遅れた、マスタがバラバラ、ルールが曖昧で都度判断に時間がかかる…こうした例外が積み重なるほど、確認・調整・手戻り対応に時間が取られます。これを放置したままBPOやシステム/ツール導入をしても、非効率を“そのまま”残してしまい、工数削減が限定的なものとなります。 そこで、以下の3点を起点として改革を推進いたします。

  • オペレーション棚卸し:
    例外の理由を「制度」「ルール」「データ」「教育」「権限」に分解します。
  • 標準化単位の決定:
    会社別ローカルを「残す必然」と「慣習」に分け、後者から統合していきます。
  • サービス設計:
    SLO/KPI(処理日数、一次回答率、差戻し率など)で合意形成します。

【図2】人事工数の偏り(オペレーション過剰)

BP・CoE・OPEの分離で「人事の時間」を取り戻す

次に問われるのが組織の役割設計です。人事は同じ部署の中に、以下の3つの機能が混在しやすい構造にあります。

  1. 日々の処理(OPE)
  2. 制度・専門領域(CoE)
  3. 事業と向き合う(BP)

混在すると何が起きるでしょうか。緊急の処理が常に優先され、日々の“複雑な業務”に追われ、“本来の仕事”に集中できなくなります。重要なポイントは「仕事を減らす」より先に「仕事の種類を分ける」ことです。

  • OPE(Operational Excellence):
    標準化・データの構造化を踏まえて“少数精鋭で回る”運用へ。
  • CoE(Center of Excellence):
    制度改定、人材開発、働き方改革等、価値創出に専念するための業務へ移行します。
  • BP(Business Partner):
    単なる御用聞きではなく、人材投資・配置・要員計画を踏まえて、事業の付加価値の源泉となる立ち位置へと進化します。

以上のことが必要となります。役割と権限の再定義を行うことにより、人事は「処理する組織」から「事業を動かす組織」へ移行することが可能となります。

【図3】BP・CoE・OPEの役割分担と改革イメージ

SSC・転籍BPOで“構造的に”工数を減らす

OPEを少数精鋭化するには、SSC(集約)とBPOをどう組み合わせるかが核心となります。
ここで大切なのは「外に出せば終わり」ではなく、移行後も運用品質を管理できる状態を作ることです。

ポイント

  • ノンコア業務の切り分け:
    まずは、徹底的にBPO化することを前提に、バリューチェーン上で必要不可欠な業務のみ“内部”に維持していくことが必要となります。
  • リソースの行き先を先に決める:
    余剰となる人員の活用方法をあらかじめ検討しておくことが必要となります。特に、BP/CoEへ再配分するなど、求められる要素を明確にしていきます。
  • 移行計画の現実性:
    構造改革を推進するとともに、データ整備・育成を並走させ、移行後に破綻しないスケジュールにします。

改革を推進するための前提

  • 雇用・配置への配慮:
    転籍や役割変更に対しては丁寧な説明が必要不可欠です。
  • 標準化への抵抗:
    子会社固有業務の背景を理解しつつ、例外対応が残る場合の背景を明文化し、将来振り返るときの材料とします。

【図4】改革前→効率化施策(SSC/BPO)→ 改革後の姿(リソースシフト)

事例:SSC+BPOで“攻めの人事”へ再配分し、改善を継続させる

あるグループ企業(従業員数数千〜1万人規模、複数拠点・複数事業)では、給与・勤怠・申請の運用が会社ごとに分かれ、問い合わせ対応も分散していました。そこで、、以下の順で改革を実行しました。

  1. SSCに業態・特性ごとに整理した業務をパターン化して集約
  2. 定型処理はBPOへ移管
  3. SLO/KPIで品質とコストを管理
  4. 捻出した余力をCoE(制度改定・人材開発)へ再配分

結果として、移行完了後6〜12か月で、工数を約20〜30%削減し、FAQ整備と標準化により問い合わせ件数も約15%削減し、CoEが企画に使える時間を確保できました。ポイントは外部化そのものではなく、KPIで運用品質を“管理可能”にした点です。

【図5】BPO前提でKPI(SLA等)により人員・品質をコントロールする考え方

まとめ

生産性を高める省力化を実現するためには、現在の業務の大多数を占めるOPEをいかに小さくしていくかがポイントとなります。複雑なOPEを解きほぐし、

  1. 標準化
  2. システム/ツール化の徹底
  3. 基本的にはBPOとして推進する(社内に残るものは、バリューチェーン上の重要業務)

とし、改革を推進することが必要不可欠となります。

【出典】
・【図1】:OECD the world’s economic database

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