コンポーザブルERP
コンポーザブルERPとは
コンポーザブルERPとは、複数の機能部品をレゴブロックのように組み合わせて必要機能群を表現するシステムモデルです。ガートナー社が2020年に提案しました。
従来の単一巨大なERPとの対比的な概念となります。
コンポーザブルERPの利点
前述のようにレゴブロックのごとく、機能追加や仕様変更が容易に可能になります。つまり、ビジネスの変化に応じ、トライ&エラーの形でシステムモデルを変えることができます。
従来のERPは、いろいろな業種のいろいろな機能を全て備えているため、自社に必要ではない機能も購入することになります。コンポーザブルERPでは、必要な機能のみを集めてシステムモデルを組み上げるため、システム投資は相対的に安価になる期待が持てます。
コンポーザブルERPの課題
従来のERPは、業務をERPに合わせる“Fit to standard”手法が推奨されました。
これは、業務変更の「痛み」を伴う反面、レディメイドのERPモデルに否応なく合わせ込むため、議論の余地がありません。
対して、コンポーザブルERPは、セミオーダーメイドです。この柔軟さが仇となり、といった課題が発生することとなります。
- レゴブロックを各部門がそれぞれ選択でき、統一モデル化への利害対立が生まれる。
- レゴブロック単位にデータを保持することになり、データの一元性が損なわれ、業務横断的なデータ利活用を阻害する。
- ガバナンスをしっかりしないと、どんどんレゴブロックが追加され、システムモデルが複雑化、理解不能になる。また、セキュリティホールが生まれる可能性がある。
これを回避するためには、相応の能力を持った担当者が必須になります。
この担当者に求める能力は、次のようなものになるでしょう。
- 自社のビジネス環境と、その変化の理解
- 上記の変化を、プロセスとデータ、インフラからなるシステム機能への変換
- 世の中に存在するコンポーネント(レゴブロック)の、信頼性を含めた知識
- 今後のIT技術動向
- レゴブロックの組み上げの設計(アーキテクチャデザイン。ここで、データ一元管理の仕組みも考える)
- 適切な運用が行われているかの監視
- IT投資効果
将来展望
しばらくは、特に会計・人給などの間接部門機能は現在のERPをコアに使い、販売・生産・物流等の直接機能は個別パッケージまたはスクラッチ開発する形態(「ポストモダンERP」と呼ばれることもある)が主流となるでしょう。
これを、クラウドサービスの組み合わせで実現する傾向が高まると推測します。
データは、データレイク上に集約してBIで参照したり、AIで解析したりを可能とします。
時の経過につれ、パッケージやマイクロサービスの形で提供されるコンポーネントが増加してきたら、真の「コンポーザブルERP」の時代の幕開けになると考えます。