会計システム刷新

【第2回】
会計システムとは何か?知っておきたいキホンのキ

◆この記事の要約

老朽化した会計システムの刷新が求められる中、ERPやクラウドサービスを前提とした「会計システムのキホン」を理解することが重要です。そのため本稿では、財務会計・管理会計の基本構造から、基幹システムとしての役割、サブシステム構成、クラウドサービス選定の要点まで、会計システム刷新の前提となる全体像をわかりやすく整理します。

  • 会計システムの役割:財務会計と管理会計を担い、取引記録から財務諸表作成までを支える仕組み
  • システム構成の基本:オンプレミスとクラウド(IaaS・PaaS・SaaS)の違いと刷新時の留意点
  • 基幹システムとの関係:販売管理・購買管理など上流システムとの連携、ERPにおける統合の特徴
  • サブシステム構成:一般会計、債権管理、債務管理、固定資産管理、管理会計など主要モジュールの役割
2000年前後に各社で構築された会計システムは、それから四半世紀が経ち大きく老朽化し、刷新の必要性が高まっています。また、昨今の技術革新の進歩から様々なクラウドサービスやAIサービスも出現しており、これらを踏まえてどのように会計システムを刷新すべきかといった声も多く上がってきております。そこで今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムの概要をご紹介します。

会計システムとは

会計システムとは、企業の財務データを効率的に管理・処理するためのソフトウェアです。日々の取引記録から財務諸表の作成、税務申告などの処理を行い、経営判断に役立つ経営情報を提供します。
主に財務会計(外部報告向け)と管理会計(内部管理向け)の機能を備えています。

会計システムのシステム構成

会計システムのシステム構成は、他のシステムと同様に基本的に以下の要素から成り立っています。
また、狭義の意味での会計システムは、アプリケーションとデータを指します。

【図1】会計システムのシステム構成

これらのシステム資源を全て自社の施設内(オンプレミス)に設置されたハードウェア上で運用・管理する形態で持つことをオンプレミスといいます。これらのシステム資源をクラウドサービスとして提供を受けることをIaaS(Infrastructure as a Service:システムを構築するためのインフラをクラウド上で提供するサービス)、PaaS(Platform as a Service:アプリケーションのためのプラットフォームをクラウド上で提供するサービス)、SaaS(Software as a Service:特定のアプリケーションやソフトウェアをクラウド上で提供するサービス)といいます。

従来はオンプレミスが主流でしたが、セキュリティやTOC(Total Cost of Ownership)などの観点からクラウドサービスの活用が主流になってきています。今後どのようなシステム構成を目指すかによって選定するERPや会計パッケージが異なります。したがって、会計システム刷新では「予めどのようなシステム構成を目指すか」を明確化することが重要です。

※ERPや会計パッケージで「クラウド型で提供」とうたっていても、SaaS、PaaS、IaaSなど様々な提供形態があるので、選定時には注意してください。

基幹システムとしての会計システム

基幹システムとは、企業の主要な業務を支える情報システムのことを指します。一般的に、基幹システムとしては下記があり、会計システムは基幹システムを構成する重要なシステムです。

  • 購買管理システム:商品や資材の発注、検収、支払、仕入先管理など
  • 生産管理システム:製造計画、工程管理、生産実績、受払・在庫管理、品質管理など
  • 販売管理システム:商品などの受注、出荷、売上、請求、顧客管理、在庫管理など
  • 人事給与管理システム:従業員情報、給与計算、勤怠管理など
  • 会計システム:仕訳、勘定、決算、予算管理など

【図2】基幹システムの全体構イメージ

会計システム以外の基幹システムを、会計システムから見て上流システムと呼ぶこともあります。それは、これらのシステムのデータが元になって、会計データが作られることに由来しています。また、これらの上流システムから会計システムへ取引データを送り、それらを仕訳に変換するインターフェースシステムを用意していることも一般的です。特に上流システムが古く、いまだ自社開発のシステムである場合、データの流れ等が複雑化するため、このインターフェースシステムが重要なシステムになります。

ERPはこうした基幹システム統合したものであり、会計システムはERPの重要な構成要素となっています。ERPではすでにデータ間が統合されているため、その範囲であれば前述のインターフェースシステムはあまり必要ありません。

※ERP(Enterprise Resource Planning)は、その名のとおり最適資源計画を作る経営意思決定システムを目指したものですが、現実的には基幹システム(各種伝票処理システム)を統合した域に依然とどまっています。

会計システムのサブシステム

会計システムは、複数のサブシステム(モジュール)で構成され、各々が特定の財務機能を担当します。これらは相互連携し、データの一元化を実現します。

【図3】会計システムのサブシステム構成イメージ

一般会計 (General Ledger: G/L、総勘定元帳)

  • 一般会計は、企業の全財務データを統合的に管理する機能です。
    (仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳などの機能)
  • 仕訳入力、勘定科目残高管理、損益計算書・貸借対照表の作成、複数通貨対応などの機能があります。

※ システム開発の世界で「General Ledger」を直訳し、総勘定元帳を「一般会計」と呼んだとの説もあります。

債権管理 (Accounts Receivable: A/R)

  • 債権管理は、取引先への売掛金や未収金の計上・回収を管理する機能です。
  • 請求書発行、債権計上、入金消込、残高管理、与信管理、遅延債権管理などの機能があります。
  • 販売管理システムと連携することが多く、販売管理の機能になる場合もあります。

債務管理 (Accounts Payable: A/P)

  • 債務管理は、取引先への買掛金や未払金の計上・支払を管理する機能です。
  • 請求書処理、支払期日管理、支払処理、残高管理などの機能があります。
  • 購買管理システムと連携することが多く、購買管理の機能になる場合もあります。

固定資産管理

  • 固定資産管理は、建物、機械設備、備品等の固定資産を物件単位で管理する機能です。
  • 取得、資産登録、減価償却、資産台帳管理、除却管理、税務対応などの機能があります。

経費管理

  • 経費管理は、旅費や各種の経費の計上を管理する機能です。
  • 従業員旅費精算・立替払精算、取引先の請求書処理などの機能があります。

資金管理

  • 資金管理は、預金、有価証券、貸付金、借入金などを管理する機能です。
  • 計上、回収、返済、残高管理、期日管理、利息管理などの機能があります。

管理会計

  • 管理会計は、セグメント別損益管理、予算立案と実績管理を行う機能です。
  • 事業セグメントに応じた収益費用区分集計、配賦、予算入力、予算集計、予実比較、予実差異分析などの機能があります。

原価管理

  • 原価管理は、棚卸資産等に係る原価計算機能です。
  • 材料費・労務費・経費計算、部門費計算、仕掛品等の原価計算、売上原価計算などの機能があります。
  • 原価管理は会計システムではなく、生産管理システムの機能としている場合が一般には多いようです。

連結会計

  • 連結会計は、複数のグループ企業の会計データと連結会計を管理する機能です。
  • データ取得、合算、資本連結、内部取引消去、未実現利益消去などの機能があります。

会計システムとして販売されていますが、一般会計をベースに必要なサブシステムを個別に購入するといったように、サブシステムが個別に提供されているケースもあります。このような場合、独立したサブシステムを組み合わせただけのケース(サブシステム間でマスターやデータが統合されていない等)もあるので、導入時に注意が必要です。

また、固定資産管理、経費管理、資金管理、管理会計、原価管理、連結会計は、一般会計・債権管理・債務管理とは別の会社が提供している製品・サービスを購入していることも多いようです。

販売や購買の商慣習(取引条件、回収・支払条件等)等が複雑な場合、販売システムや購買システムで債権管理機能や債務管理機能を持つ場合も少なくありません。この場合、会計システムの債権管理機能や債務管理機能との切り分けが問題になるので、導入時に検討が必要です。

まとめ

今回は、ERPや会計システムパッケージによる「会計システム刷新のキホンのキ」として、会計システムの概要をご紹介しました。今後の会計システム刷新は、ERPや会計パッケージに限らず様々なクラウドサービスやAIサービスを活用して「真に経営に資する情報システム」を実現する必要があります。個別のERPや会計パッケージ、クラウドサービスの活用のポイントについては、是非お問い合わせください。

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