DXで「昭和の会社」から抜け出せ!

DX(デジタルトランスフォーメーション)の掛け声が始まってから数年たちますが、DXが上手くいっている会社は少ないのではないでしょうか。
多くの会社で、DXが今までのような効率化やコストダウンの取り組みになってしまっています。
DXは、20年先30年先まで続く企業として、企業価値を向上するための取り組みであり、単なる効率化やコストダウンではありません。また、DXで失敗をしているケースは、テレビCMでも「昭和か!」とツッコミが入るような「昭和の会社」と呼ばれる企業群に多く見受けられます。
 
今回は、DXによって「昭和の会社」から脱却するポイントをご紹介します。

「昭和の会社」ってどんな会社?

「昭和の会社」には2つの特徴があります。

1つ目は、未だに「昭和のシステムが動いている」ことです。
失われた30年の間に情報システムはコスト削減の対象とされ、投資対効果を問われ続け、ツギハギだらけのシステムとなりました。その結果、未だに「黒い画面」のホストコンピュータのシステムが動いています。これはひとえにコストカット中心の経営がもたらした大失敗であり、日本企業のDXが一向に進展しない大きな足枷になっています。

2つ目は、「昭和のおじさんだけが元気」なことです。
当社のモチベーション調査によれば多くの会社で、昭和生まれのおじさんだけが元気で、若い人や女性のモチベーションが低く、多様性が掛け声倒れとなっています。その結果、新入社員の1/3が数年で辞めるようなことになっています。これも、まさに失われた30年の中での日本企業の低迷の要因であり、今後の成長の足枷になるものです。

【図1】多くの日本企業のイキイキレベル(エンゲージメント)

会社の未来を創る「明日の仕事」を創り出す

このような状態から、DXによって日本企業をどのように復活させるべきでしょうか。

まず考えなければいけないのは、DXそれ自体よりも「仕事」そのものを抜本的に変える必要があるということです。即ち、「今後の10年先や20年先の企業を支えていく仕事は一体何か?」と言うことを見つめ直す必要があります。「今やっている仕事」ではなく、「今までやらなければいけなかったが、できなかった仕事」それを見つけて実行していくことです。

【図2】「明日の仕事」を創り出す

当社では、仕事を3つに分類します。
すぐにやめたほうがいい仕事
② 今できている仕事
今までやらなければいけなかったが、できていなかった仕事

①は「廃止」し、②は「効率化」し、③は「創造する」、これが基本です。
②の「今できている仕事」は、効率化するため、デジタルテクノロジーを活用して徹底的にシンプルにします。③の「今までやらなければいけなかったが、できていなかった仕事」は、そもそも今までやっていなかった仕事ですから、ゼロベースでシンプルに考えます。シンプルイズベスト、正に究極の真理です。

2つの仕事へのデジタルテクノロジーの活用

デジタルテクノロジーの活用については、上記の②と③の仕事に対して行います。

【図3】7つのキーテクノロジー

「今できている仕事」での活用

前述のように、②の「今できている仕事」は、主にデジタルテクノロジーを活用して効率化を主眼とした改革を進めます。RPAやローコード開発などを使い、今まで手作業で行われていたものを自動化したり、クラウドサービスを使い、今まで紙やメールで行っていたことをデジタル化したりしていきます。
こうしたデジタルテクノロジーの活用は、システム部門主導からユーザー部門主導へと移ってきています。しかし、ITガバナンスをしっかりしていかないと、20年以上前に流行った「EUC(エンドユーザーコンピューティング)の悪夢」の再現になりますので注意してください。

「今までやらなければいけなかったが、できていなかった仕事」での活用

それに対して、③の「今までやらなければいけなかったが、できていなかった仕事」は、一般的に付加価値の高い仕事が多いため、創造性を生み出したり、人間の思考を補助したり、付加価値を高めたりするようなデジタルテクノロジーを活用することになります。
ビックデータ解析やAIの活用、これらはまさに③の仕事のやり方を変える方法です。特に、ChatGPTに代表されるような生成AIの登場により、この領域での生産性の劇的な向上は、大いに期待されるところでもあります。

会社の明日を担う若手を中心としたDX推進

こうしたデジタルテクノロジーを利用した改革は、若手を中心に実施すべきです。

特に、今のZ世代と呼ばれる20代を中心とした世代については、デジタルネイティブと言われ、常にスマホやタブレットで日常的にネットにつながっていることが普通の世代です。そうした彼らから見れば、多くの企業にまだ残っているホストコンピュータや、オフコン時代からの「黒い画面」は、まさに生きた化石を見ているようなものなのです。こうした化石システムに慣れてしまった世代が、DXを推進することはできません。プロジェクトは若い方にも参加してもらい、前例踏襲ではないプロセス変革を進めていくことが重要です。

ある会社の経理部門では、若手の離職が問題になっていました。
計算・集計だけの事務作業を数年やることは、若手にはキャリア形成にならないと映ったからです。
そこで、CFO自ら「業界随一のグローバルCFO組織となる」をビジョンに掲げ、「計算屋からの脱却」を合言葉に経理部門のミッションを見直し、若手の経理部メンバーを巻き込みながらDX推進をしました。
その結果、若手がRPAやローコードツールの伝道師となり、他の部門の改革も支援できるようになり、モチベーションも大変向上しました。

【図4】経理部門における明日の仕事プロジェクト

経営者は「20-30年続く企業になるために何が必要か」を問う

経営者がDXを進める上でのポイントは、目先の投資対効果を考えるのではなく、それが経営的に必要かどうかを判断することです。

DXを進める会社でよく見受けられる光景が、DXでどれだけ効率化が進むのか、DXでどれだけコストが削減されるか、などをトップマネジメント自らが問いかけ、結局中途半端なDX投資になってしまっていることです。経営者がDXの本質を理解せずに、掛け声だけで「DXをしろ」と言っておきながら、DXの各種投資案件が出てきた時にはそういった議論に陥って、投資案件を見送っていることもよく見受けられます。

【図5】投資対効果はあるのか

そもそもDXは20年先30年先まで続く企業として、企業価値を向上するために推進していくべきものであり、単なる効率化やコストダウンではありません。しかし、単なる効率化やコストダウンがDXと勘違いしている経営者が多すぎるのも、日本企業の残念な点ではないでしょうか。

また日本企業のシステムは、増築しすぎた昭和の旅館とも揶揄されています。即ち、昭和に出来上がった本館に対して、少しずつ安普請の増築を繰り返し、複雑怪奇な迷路のようになった旅館のようなものです。投資対効果を問われ、未だにこうしたシステムの改修を行おうとしている企業も少なくありません。
もう昭和のシステムに対して手を加えるのは、時間とお金の無駄です。
これを機会に、全く新しいものを作るほうが、急がば回れになるのではないでしょうか。

今回は、DXによって「昭和の会社」から脱却するポイントをご紹介しました。
詳細については、是非お問い合わせください。

ソリューションに関するオンライン相談ソリューションに関するオンライン相談 最新情報をお届け!メルマガ登録最新情報をお届け!メルマガ登録
この記事に興味をもったらメールで送信して共有! ×

この記事の執筆者

お仕事のご相談や、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。
セミナー開催予定など最新ニュースをご希望の方はメルマガ登録をお願いいたします。