ゾウとネズミは時間の速さが違うんです!
~VUCA時代の超速経営とは~

ウクライナ紛争や台湾有事への懸念など世界の政治・経済は不透明さを増しています。一方で日本では金融緩和を継続しながら景気回復へ向かい、23年5月19日にはバブル期以来33年ぶりの株高となっています。
こうした変化の激しい時代では、これまでの常識や当たり前が通用せず、常に変化への対応をしなければなりません。即ち、「時間をかけること=リスク」であり、兎にも角にも経営スピードをアップする超速経営を実践しなければいけません。
 
今回は、VUCA時代における超速経営の実践ポイントをご紹介します。

ゾウの時間 ネズミの時間

ゾウの時間 ネズミの時間(本川達雄 著)によれば、生物の生涯の呼吸の回数や鼓動の回数がほぼ同じであり、時間の流れは生物のサイズと一定の関係があるといいます。ゾウはネズミに比べ時間が18倍ゆっくりしているそうです。もしかしたら、ゾウにはネズミが見えないのかもしれません。

【図1】ゾウの時間 ネズミの時間

これは、私たちが大企業のお客様と接する時にも感じます。大企業の皆様の時間は、私と時間の流れが違うのではないかと。これからのVUCAの時代においては、こうした時間感覚では、世の中の変化を敏感に感じることができないリスクがあります。
絶滅した恐竜にならないためにも、ネズミの時間へスピードアップした経営が必要ではないでしょうか。

超速経営とは

『時は金なり』は有名な諺ですが、これを実践できている企業が少ないのも現実です。超速経営は正に『時は金なり』を経営の中心に置く考え方です。
超速経営とは、すべてのリードタイム(L/T)を短くする経営です。

企業活動には、付加価値を生む瞬間があります。その瞬間以外の時間は、「付加価値をうまない時間=ムダな時間」と考えます。これはトヨタ生産方式における時間の捉え方と同じです。例えば、モノの付加価値を生む時間は、全体の時間の数パーセントとも言われており、殆どの時間がムダな時間なのです。

【図2】全体のリードタイムに占める付加価値を生む時間

超速経営を実現するためには、この無駄な時間を徹底的に削減し、付加価値を生む時間だけにしていくと伴に、更に企業活動スピードを上げ、全体リードタイムを短縮しなければいけません。

超速経営の効果

超速経営即ちリードタイム短縮は、企業の競争力を大きく高めます。
顧客からの要望から対応までのリードタイムを短くすることは、顧客価値を高め、差別化につながります。サプライチェーンのリードタイムを短くすることは、モノの滞留をなくし、資本効率を高め、コストを低下させます。
このようにリードタイム短縮は、マイケル・ポーターのいう「差別化戦略」と「コストリーダーシップ戦略」を同時達成する可能性を持っています。従って、リードタイム短縮を単なる改善活動と捉えるのではなく、ビジネス・トランスフォーメーション(BX)の強力な実現手段と考えるべきです。

超速経営には下記の効果があります。

【図3】超速経営の5つの効果

① 時間プレミアムの獲得
例えば、欲しいものが今日手に入るのと、数日後の手に入るのでは、多少高くても今日買う可能性が高くなります。コンビニエンスストアがあまり値引きしない理由の一つです。

② チャンスロスの低下
上記と同様ですが、お客様の手に入るタイミングが早い程、お客様に選択される可能性が高くなります。

③ 顧客価値の向上
例えば、製品開発期間が競合より1/10の会社は、競合会社が1回製品を発売する間に、10回新製品を発売することができ、お客様の要望にマッチした顧客価値の高い製品を出せる可能性が高くなります。

④ 資本コストの低下
投下資本には時間の経過とともに資本コストが掛かります。リードタイムの短縮は、時間経過に伴う資本コストを低下させます。

⑤ リスクの低下
リスクとは、人が予想することと現実の違いであり、確率と影響度の問題です。当然、一年先の予想より明日の予想の方が当る確率が高くなりますから、リードタイムが短くなれば、リスクは低下します。

情報の流れを短くする

リードタイムを短くするためには、情報の流れを早くすること、情報の滞留をなくすことが必要です。
情報が滞留するところには、必ず物理的なモノが滞留します。モノは情報の媒体です。製品が在庫として滞留していることは情報が滞留していることになります。メールボックスに溜まった未読メール、机の上に置かれた処理待ち文書など様々な情報の滞留が物理現象として現れます。
こうした物理現象の滞留(例えば在庫)をなくすことが、リードタイム短縮には必要です。

【図4】情報の滞留の物理現象

業務のサイクルを短くする

購買の発注サイクルに代表されるように人の業務は必ずサイクル化します。サイクル化は、発注情報などの滞留となって必ず波(山谷)を引き起こします。この波は、他の波と同調して更に大きな波になります。
従って、これを防ぐためには、サイクルを高速回転で回し、波を小さくしていくことが重要です。購買なら、月間発注→旬間発注→週次発注→日々発注→随時発注といったように高速サイクル化しなければいけません。

【図5】短サイクル化のイメージ

高速サイクル化のためにはそれを阻害する要因を排除する抜本改革が必要です。一般にこうした阻害要因は、過去の慣習やルールといった経路依存性によるものが多いため、このしがらみを断ち切らねばなりません。

顧客の接点に集中する

いくら良いものを生産しても売れなければ意味がありません。お客様が欲しいと思った時に欲しいものを提供する必要があります。
欲しいと思った時に欲しいものを提供することを徹底し、大きくビジネスモデルを変えたのがAmazonです。クイックデリバリーの為に、バリュー・チェーンそのものを抜本的に見直しました。翌日配送やクイックデリバリーは、最早Amazonの代名詞になっています。

また、遅延差別化戦略も有効な戦略です。遅延差別化戦略は、お客様が価値の高いと感じる部分の生産をお客様の近いところで行うことです。例えば、ファッションでは、色の流行がありますから、彩色工程を1番最後にします。

【図6】遅延差別化戦略

最近の製品はソフトウェアで制御されているものも多いため、コピー機の様にハードの性能は同じものですが、ソフトの制御で製品グレードを分けている製品も多く存在しています。こうした戦略も遅延差別化戦略の1つです。

フレキシビリティを最大化する

スピードをアップするためには、経営資源のフレキシビリティを高めることが必要です。

【図7】経営資源とフレキシビリティ化

モノやソフトウェアのフレキシビリティを高めるためには、デジタル化は不可欠です。特に、ソフトウェアを含んだモノが主流になってきている現在では、ソフトウェアファーストな考え方でモノづくりを再構築していかなければ、グローバルで勝てません。しかし、こうした点では、日本企業は大きく出遅れていると言わざるを得ません。
また、人・組織や知・ノウハウのフレキシビリティを高めるためには、ビジネスの最前線に権限を委譲することも重要です。

戦略的な受注生産に切り替える

需要を完全に予測できない以上、どんなに頑張っても見込生産による在庫は減らせません。従って、この在庫を無くすためには、受注生産に切り変えなければいけません。

受注生産に変えられるポイントの1つは、提供するリードタイムです。リードタイムが長ければ、お客様は待ってはくれません。できるだけ短納期で提供できるようにすることです。
受注→製造→納品のリードタイムを短縮するために、前述の遅延差別化戦略が有効です。お客様仕様の違いが余り無いところまでは予め生産し、最終的な顧客仕様の部分だけ製造し、リードタイムを短縮するといった方法です。

もう1つのポイントは、お客様がリードタイムを許容できる程の特別感を製品に持たせる方法です。ロードバイクの販売などが良い例です。100万円近いロードバイクを特注して、何カ月もワクワクしながら待ってくれるお客様は珍しくありません。こうした特別感のあるビジネスを創れるかもポイントです。但し、こちらはあまり超速経営とは言えませんが。

以上のように今回は変化の激しいVUCA時代を経営のスピードを最高速にして乗り切る超速経営のポイントをご紹介させていただきました。

今回、ご紹介した超速経営の詳細や事例については、是非、お問合せください。皆様と一緒に日本企業のスピードアップを達成していきたいと思っております。

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