新規事業成功のカギはアイデア発想力に非ず
特に、日本は少子高齢化・人口減少に伴って国内市場は縮小トレンドにあり、日本企業にとって新規事業は成長戦略の軸として重要な位置付けになっています。
しかし、日本の大企業では、「新規事業を立ち上げたが規模が小さなものばかり」「独自の技術はあるが大きな事業になる道筋が見えない」といった声を多く聞きます。
今回は、日本の大企業が新規事業を立ち上げる際の課題、およびスケールする新規事業立ち上げのポイントについてご紹介します。
新規事業の成否はアイデアよりも立ち上げの実行力
先述のとおり、経営環境の変化のスピードが増し、既存事業の陳腐化が早まる中、新規事業開発の重要性がますます高まっています。しかし、ある調査会社の新規事業に関する実態調査によれば、新規事業開発はアイデア抽出後に立ち上げまで至り、さらに単年黒字化まで到達する事業は17%になり、中核事業化する事業に絞ると僅か4%にとどまります。
特に注目すべき点は、ビジネスモデル検討や事業計画策定等のビジネスモデル詳細化のフェーズよりも、事業立ち上げ準備・立ち上げのフェーズで撤退している事業の割合が約4割を占めているという事実です。新規事業の成否には、構想・計画だけでなく、立ち上げの実行プロセスが大きく左右していることが分かります。
では、新規事業の立ち上げフェーズにおいて、どのような課題・ハードルがあり、多くの事業が撤退に追いやられているのでしょうか。
大企業における新規事業立ち上げの最大の課題は売上確保
大企業の新規事業立ち上げにおいてよく指摘される課題は、次の5つに大別されます。
1.立ち上げがスケジュールどおりに進まない
2.オペレーションが回らない
3.売上が確保できない
4.市場ニーズをつかみきれない
5.協業条件がスムーズに決まらない
上記の中でも事業立ち上げが頓挫する大きな要因として、「3.売上が確保できない」が挙げられます。顧客獲得のために社内の既存の販売チャネルを活用しようとしても、営業部隊としては自身の既存事業の営業が優先となるために十分な協力が得られにくいことがあります。また、新規の販売チャネルを開拓するにも時間を要するため、立ち上げ直後の売上が低迷する壁に突き当ります。
今回は、事業立ち上げ後の売上を確保し、さらに事業規模をスケールさせるためのポイントとして、「営業戦略・体制構築」および「M&Aを含んだ協業アライアンス構築」について事例を含めてご紹介します。
【図1】大企業で見られる新規事業立ち上げフェーズにおける課題
売上確保の打ち手:顧客獲得のための効果的な営業手法・体制構築
新規事業においては、立ち上げ時期の少ないリソースで効果的・効率的に顧客を獲得していくことが必要不可欠であり、そのための最適な「営業戦略・体制構築」が必要になります。
営業手法・体制の検討にあたって重要なことは、それ自体の検討を始める前に、まずはどのような営業手法・体制が最適解なのかを見極めることです。具体的には、初めにターゲット顧客の仮説を設定し、ターゲット顧客に対して実際にヒアリングすることで、顧客獲得上のポイント(顧客の購買意思決定の特性・ハードル等)を掴み、効果的・効率的な営業手法・体制を可視化します。
当社が新興電力会社の営業体制構築を支援した事例では、ターゲット顧客にヒアリングした結果、電力サービスは競合他社間で大きな差別化ポイントが無く、顧客は一度電力会社を決めたら自分から他社に乗り換えることはほとんどないことが分かりました。そのため、「個宅訪問によるプッシュ型営業」が有効であること、また「乗換手続きが簡単なら少しでもお得な電力会社を選択する」という顧客側の購買意思決定のニーズが抽出できました。
「個宅訪問営業」に関しては、既存サービスで個宅訪問に強みを持っていたグループ会社の営業部隊に対して当グループ会社の商品と電力サービスのバンドル営業を行うことを提案し、グループ会社の営業部隊の協力を得て早期に個宅訪問に強みを持つ営業部隊の立ち上げを行いました。また、「乗り換え手続きが簡単な営業手法」については、タブレット上で電力会社の使用料情報を基に乗り換え時のコストシミュレーションをその場で即時算出し、電子サインで契約が完結できるツールを開発することで、顧客が乗り換える際のハードルを下げて早期獲得を実現しました。
そして、実際に営業した結果を継続的に営業手法・ツールにフィードバックして改善するループを短期間で運用し、早期の営業ノウハウ・マニュアルの確立を実現しました。
【図2】新興電力会社における営業体制構築支援のステップ
売上確保の打ち手:M&Aを含む協業アライアンス構築
前述では、新規事業立ち上げ後の売上確保に向けた営業手法・体制構築のポイントをご紹介しましたが、立ち上げ後の拡大フェーズにおいては「M&Aを含んだ協業アライアンス構築」も事業規模拡大の面でインパクトの大きい手法になります。
グローバルでも日本でも共通して、新規事業の成功企業は拡大フェーズの初期段階でM&Aを積極的に行っています。ある調査では、M&Aを行わなかった/あるいは3件以下のM&Aしか行っていない企業に比べ、拡大フェーズの初期段階で4~5件のM&Aを行った新規事業は、期待を大幅に上回る確率が倍以上に高かったといいます。
建設関連事業者の事例では、“都市開発”の新事業領域進出に向けて自社の強みである電気設備工事・運用保守領域に加え、バリューチェーンの上流にあたる“都市開発”の企画・コンサルティングに強みを持つ事業者や、土木・建築を強みとする建設会社を積極的に買収し、“都市開発”を上流から下流まで自社グループで担える体制構築に向けて事業規模を急速に拡大させています。
また、自社で開発した新規ソリューションの販路拡大においては、販売先の関連事業会社をM&Aすることで、短期間で販売チャネルを獲得するとともに、売上確保および導入実績を獲得することができます。販売後もM&A先の企業とソリューションの継続的な改善に向けた共同開発等も可能であり、M&Aによるシナジー創出が期待できます。
当社では、M&Aを含む協業アライアンス構築支援を行っており、当社が洗い出した協業先候補にクライアントと同行訪問しながら有望協業先を絞り込みつつ、協業先企業が抱える課題に合わせてクライアントの提供サービスを見直し・ブラッシュアップして再提案というサイクルを繰り返して協業合意という流れで支援を行っております。
このほか、新規事業のアイデア抽出から事業モデル検討、立ち上げまでの様々なフェーズでのご支援をお客様に最適な形でご提案するサービスを展開しております。
もし興味をお持ちいただけましたら、お気軽にご相談ください。
【図3】協業アライアンス構築支援の流れ
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この記事の執筆者
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草加 好弘取締役
事業戦略事業部 事業部長 -
三世川 洋平事業戦略事業部
マネージャー
職種別ソリューション