戦略人事
戦略人事とは
戦略人事とは、従来のオペレーション主体の人事だけでなく、会社の経営戦略・目標の実現も補佐しながら人事マネジメントを行うことを指します。元々は米国ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が、著書『MBAの人材戦略』でまとめた用語で、人事部を経営者のパートナーとして位置付けています。従来の業務の安定を目指す「守りの人事」から、経営に好影響を与える「攻めの人事」へと移行することが現在求められています。
似た言葉に人事戦略がありますが、こちらは経営を考慮に入れつつも、従来の人事の範囲で成果向上を目指す点で戦略人事と異なっています。
戦略人事のメリット
戦略人事を行うことには2つのメリットがあります。
1.経営戦略を明確に定義できる
戦略人事では、経営の視点を人事が理解し、社員に伝えていく必要があります。したがって、経営戦略や理念・目標といった会社の目指す方向性を改めて見直し、定義することが必要です。結果として明確な目的意識の形成につながります。
2.効率的で迅速な人事が達成される
戦略人事では、企業目標や経営戦略といった経営視点と、人財採用・育成といった人事視点を総合して判断できるため、より企業や社員に即した人事決定をいち早く実施することが可能になります。従来は他部署との壁を作りがちであった人事が経営層や社員と積極的に情報交換できることで、社内の一体化も図れ、さらなる人事決定の改善も期待できます。
戦略人事の機能と役割
戦略人事には欠かせない3つの機能があり、3ピラーモデルと称されます。機能はそれぞれHRBP、CoE、OPEです。これらの機能は従来のバックオフィスとしての人事から、経営戦略にも携わる戦略人事に移行するための機能です。
HRBP
HRBPとは、Human Resource Business Partnerの略であり、事業成長に向けた人事とビジネスの両戦略をサポートする役割を担っている人材を指します。人事と経営を理解し、人事課題を迅速に把握し、経営の考えに照らして積極的に改善していく力が求められる、人事部門の戦略的なビジネス変革推進者です。
CoE
CoEとは、Center of Excellenceの略であり、人事機能の中心として、採用・給与体系構築・能力開発など各分野の専門家が集い、経営的な視点から人事制度を開発する集団のことを指します。具体的には、評価制度・報酬制度など各制度の構築、研修プログラムやトレーニングの開発、人事システムの設計・開発、D&I推進、ナレッジ集約、企業文化や組織の方向性の定義など組織開発を含む全社的な視点を必要とする業務が多いです。
OPE
OPEとは、Operational Excellenceの略で、日常の人事業務を担い、データを扱うオペレーションを指します。一方、従来の人事にとどまらず、テクノロジーや、戦略的なアウトソーシングといったツールを最大限に活用することによって、現場力が卓越し、競争上の優位となるようにオペレーションの最適化を実行しています。