2023/12/21NEW

新規事業立ち上げのフレームワークと成功に導くポイントとは

#事業戦略
企業にとって、現状維持は後退を意味します。持続的に右肩上がりの成長曲線を描くためには、新たな収益源の構築は欠かせません。利益拡大の手法として、既存事業の変革をはじめ、M&Aを活用した新事業への参入などがありますが、ゼロベースからの新規事業の立ち上げは、日本企業が取り組むべき喫緊の課題です。新規事業は短期的に成果が上がりにくく、失敗する可能性も小さくないため、保守的な経営者は積極性を示さない面があるのは否めませんが、劇的に変容していく現代社会に対応していくには、継続的に利益の一定割合を新規事業に投資し続ける必要があります。
では、どのようなプロセスを踏めば、千に三つと言われる新規事業が成功に近付くのでしょうか。肝となる未来予測やアイデア出しなどのフレームワーク、成功に導くポイントを、レイヤーズが提供する特長的なサービスを交えながらご紹介します。

1.新規事業立ち上げの必要性

企業存続へ新規事業はマスト

新規事業の立ち上げは、メリットよりも必要性の意味合いが強くなります。日本国内の産業はほぼ成熟化しているため、製品やサービスの差別化が困難な状況に陥っています。あらゆるモノが高機能・高性能となったため、顧客が求める目に見える新機能が減ってきました。既存メーカーは開発した製品をコンパクト化したり、性能を向上させるような、いわゆる予測範囲内の領域では勝負できなくなっています。プロダクト自体のイノベーションがない限り進化が期待されず、均一化した製品やサービス群は低価格競争を招き、各企業の利益を圧迫する要因にもなっています。
 
その上、事業環境は激しく変化しています。最高益を叩き出した企業がわずか2~3年後に苦境に立たされるケースもあります。さらにグローバル・ディスラプターと呼ばれるGoogleやAmazonなどが国内市場に参入し、一気にシェアを独占することも業界によっては珍しくありません。このような背景もあり、日本企業としては、新規事業の創出にトライしつづけなければならない環境下に置かれています。既存事業がいつまで続くか不透明なVUCA時代において、常に新規事業の可能性を探るのは、企業存続に向けてマストの姿勢だと言えるでしょう。

生き残るのは変化できる企業

オリックス株式会社のシニア・チェアマンで、レイヤーズの経営諮問委員長である宮内 義彦 氏は、「生き残る企業は強い企業ではなく、環境に応じて変化できる企業」と提言されています。そして、柔軟に変化するためには、単一の主要事業だけにリソースを集中するのではなく、他事業にいつでもシフトできる日頃からの“構え”が重要となります。複雑化し、何が起こるか分からない時代に“選択と集中”の思考はマッチしません。一方で新規事業に“絶対”はなく、何が成功するかも予測不能なため、経営のリスクマネジメントの観点から多種多様な布石を打つ必要があります。高度経済成長期だった50年前とはまったく違う事業環境の中、新しい事業に力を入れていくのは、日本企業に課された重要なミッションです。
 
ところが、新規事業と既存事業は全く畑が異なり、新規事業の立ち上げの経験がある方も多くありません。新規事業がローンチしたとしても、当初の売上は当然小さく、売上高1,000億円の企業で、売上高10億円の新規事業を立ち上げても、企業に及ぼすインパクトも小さいことから、新規事業への理解が得られない風潮も根強く、新規事業に継続的に投資する大企業は限られています。
 
日本企業でも、持続的な成長のために利益の一部をM&Aに回す必要性の認識は高まってきています。しかし、短期的に稼げない新規事業に投資する経営者はまだ多くはありません。日本企業に蔓延する新規事業に対するプライオリティの低さが問題点の一つではありますが、なかなか改善されないのが実情です。

2.新規事業立ち上げのフレームワーク

新規事業立ち上げのフレームワークは、『アイデア抽出』『事業モデル詳細化・マネタイズモデル検討』『実行準備』の3つのレイヤーに分けることができます。

①アイデア抽出レイヤー

『アイデア抽出レイヤー』では、時代や世代を的確に捉えた未来予測を行います。その予測を基に、複層的な視点で事業アイデアをスピーディーに抽出します。ここで大切なのは精度の高い予測を基に抽出することです。顧客ニーズの簡易検証や競合他社との差別化などの視点も交えながらアイデアを絞り込みます。未来予測~アイデア抽出までの期間の目安は2~3か月となります。

未来予測

現状のビジネス環境や社会環境をベースに新規ビジネスを検討しても、5年後には事業環境が変わってしまうことがほとんどです。30年先ではあまりにも不確定要素が多すぎるため、10年から遠くても15年先にどのような環境になるのかを予測しなければ、方向性を見誤る可能性が高まります。
 
世代動向調査も必須です。特にZ世代と言われる25歳以下は、生まれながらにもスマートフォンが当たり前の世代で、“デジタルネイティブ”と呼ばれています。40代以上とは購買行動が全く違うため、世代ごとの動向を押さえないといけません。レイヤーズでは、Z世代研究の第一人者である芝浦工業大学の原田 曜平 教授ら有識者と連携し、将来的な価値観を考えることができます。

複層的アイディエーション

米カリフォルニア州シリコンバレー発のアイデア出しの手法であるデザインシンキングが、10年ほど前から一般化し、多くの企業が導入しています。しかし、それだけでは片手落ちになります。デザインシンキングに加え、自社資源起点でのエディトリアルシンキングとぶっ飛んだ発想をするアートシンキングを加えることで、よりよいアイデアが生まれます。エディトリアルシンキングは、その企業が持っているリソースを深掘りします。人的資産や独自技術をはじめ、ブランドや顧客基盤など目に見えない無形資産を棚卸し、うまく活用するための発想法です。さらに尖ったクリエイティブを提案するクリエーター目線のアートシンキングを複合的に組み合わせることで、アイデアの切り口の抜け漏れがなく、良質なアイデアを短期間で生むことができます。
 
次に抽出した10~20のアイデアの中から具現化させるアイデアを絞り込みます。このスクリーニングでは、非顕在化ニーズの発見、実現性、事業規模、事業化までのスピード、必要な技術の探索の5つの視点でふるいをかけ、最終的には1つまたは2つにまとめていきます。

②事業モデル詳細化・マネタイズモデル検討レイヤー

『事業モデル詳細化・マネタイズモデル検討レイヤー』では、顧客や競合他社の生の声を捉えて精緻な商品・サービスを設計します。それと同時に最新のマネタイズモデルデータベースを活用し、マネタイズモデルを設計します。それらを基に事業計画の策定やアライアンス先の選定を行った上で客観的な採算性の判断を行います。これらを実施する期間の目安は3~6か月となります。

事業モデル詳細化

事業モデルの詳細化では、絞り込んだアイデアを事業化するため、アンケート・ヒアリングを通じた顧客分析、競合分析、自社分析を行います。事業イメージを描くほか詳細な設計に入り、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4Pを策定します。顧客分析や競合分析では、実際にお客様になりうる人たち、競合になりうる人たちに直接、泥臭くコンタクトし、想定する製品やサービスの設定価格やスペックについて生の声を引き出し、競合他社と差別化できるポイントを探ります。さらに一度にすべてを決定するのではなく、暫定的に製品や価格、アフターサービス、マネタイズモデルを決め、スパイラルアプローチで事業計画を精緻化していきます。
 
また、レイヤーズは『テクニカルゲートキーパー』と呼ぶ有識者500名を超えるネットワークを保有しています。新規事業のアイデアがターゲット業界のニーズにマッチするか、実現のための課題は何か、価格感は合いそうか、といった問いに対し、水先案内人として、『ターゲット業界』×『デジタル』×『UX(User Experience)デザイン』の視点からアドバイスを受けることができます。テクニカルゲートキーパーの独自のリソースを生かすことで効果効率的に事業の精錬化が可能です。

マネタイズモデル検討

マネタイズモデルの検討には、最新マネタイズモデルデータベースを活用します。レイヤーズでは、業種別・業界別マネタイズモデルテンプレート及び先端技術テンプレートのデータを蓄積しています。そのテンプレートを活用し、既存のマネタイズモデルから新たなマネタイズモデルに転換できないかを、業界のモデルごとにシミュレーションします。
 
マネタイズモデルを設計する上では、利益目標を起点に逆算して、製品・サービスを作り込むように注意しましょう。製品やサービスのコストを起点にし、結果的に利益が薄くなるのでは失敗と言えます。20%程度の営業利益を上げる前提でモデルを構築していく利益イノベーション的発想がとても重要になります。

③実行準備レイヤー

『実行準備レイヤー』では、実現可能性を見極めるPoC(Proof of Concept)を行うほか、アライアンス先の選定や交渉、営業など事業に必要な機能の立ち上げを実施します。新たに営業組織を立ち上げる場合には、採用の面接から採用後の営業担当の教育までやることは多岐に渡ります。

3.新規事業立ち上げにおけるレイヤーズの特長

新規事業の立ち上げを阻む原因は3つあります。アイデアのないパターン、アイデアはあるが、具体的なスキームを構築できないパターン、スキームまでは描けているが、遂行力が欠如しているパターンです。レイヤーズでは、各パターンそれぞれに対応できます。もちろん3つのレイヤーを一気通貫で支援することも可能です。
 
新規事業の立ち上げにおけるレイヤーズの強みは、コンサルティング目線というよりはプロデューサー的な形でローンチまでサポートすることです。立ち上げまでのプロセスでは、朝令暮改的な判断の変更やトップとのダイレクトコミュニケーションなど高度なレベルでのリーダーシップが求められます。現場部隊でも明確な役割分担が困難なケースが多く、責任も不明確になりがちです。また、大企業の新規事業では、既存ビジネスの対応を実行してきた人材をアサインしても、求められる能力にギャップがあるケースも目立ちます。そのような状況をカバーするため、机上の検討を行うだけではなく、伴走型で立ち上げのために必要なあらゆる機能を補完し、またPMOとしてリードすることも含め、プロデューサー的な立場から支援します。
 
現在、自社だけで新規事業を立ち上げることは不可能で、さまざまな企業とアライアンスを組まなければ成り立ちません。レイヤーズは新規事業に必要な機能を抽出し、具体名レベルでアライアンス候補を用意することができます。さらにアライアンス候補のトップマネジメントとリレーションを開拓・構築し、候補先のメリットも勘案しつつ、アライアンス締結をサポートします。

4.新規事業立ち上げを成功させるポイント

①ローンチまでのスピード感

何よりもスピード感が重要です。10数年前までは、新規事業を立ち上げる際、1年かけて検討し、また1年かけて具体化するゆっくりとしたプロセスが許されていました。しかし、今は遅くとも検討開始から1年以内にはローンチするスピード感がなければ、事業環境が変わってしまうリスクがあります。
 
ただ、日本の大企業には、スピードを阻害する要素が多くあります。検討結果を上申してから上層部に認められるまで2~3か月要することがザラにあります。上申についても、未経験な分野にも関わらず経営陣全員で議論して時間だけが過ぎていくのもよく見受けられるケースです。
スピードを担保するためには、新規事業をトップマネジメント直轄下に置くことが必要です。プレイヤーとなる実務責任者にも多くの権限を与えないといけません。評価についても既存の事業と同じではなく、新たな基準が必要です。売上100億円の事業から10億円拡大するのと、ゼロから1億円にする難易度では種類が異なります。また、既存事業と同じ組織では、新規事業に携わる人財が肩身の狭くなる思いするケースも多く、職場を切り分ける配慮も必要でしょう。兎にも角にも、即断即決し、即実行に移せる体制を構築しなければなりません。

②失敗に寛容な文化や風土

失敗を許容し、失敗をチャンスだと捉えるマインドセットや風土作りもポイントです。もし、ローンチした新規事業が成功しなかった場合でも、責任者や関わった人財の評価を下げるのではなく、未経験分野でのチャレンジを評価する姿勢が大切です。失敗してもまたチャレンジする機会を与えられたり、チャレンジを続けられる環境を整備することが、成功につながります。
 
そのために、一定の予算をつけ続けなければなりません。短期的に利益が出ないことを理由に投資をやめたり、3年という短いスパンで単年度黒字を義務付けたりするのではなく、社会的意義や大局的な可能性があれば、投資を続けてください。
 
また、内部だけですべてを担うのは困難を極めます。外部のコンサルティング会社など、壁打ち相手や伴走するパートナーをつけてあげないと、より良い事業になりません。専門外の領域をゼロから調べるのと、経験のあるコンサルティング会社やテクニカルゲートキーパーを活用するのとでは、スピード感も効果もまったく違ってきます。

③アイデアの“種”から新規事業を創造

世界中どこにもない全く新しい新規事業を立ち上げる方向性はお勧めしません。イノベーションに対する日本社会の寛容性の低さや法規制、日本人の発想力を踏まえると、世の中に存在しない製品やサービスを創造し定着させるのは得意ではありません。例えば、日本でドローン配送を実現させる場合、国から法的に認可が下りたとしても、安全安心が大前提の日本社会では、落下事故が起きた際、国民が不安に駆られ、反対の風潮が高まるのは想像に難くありません。
 
日本企業や日本人は新規事業の“種”になるアイデアの用途を変えて事業として大きくしたり、ターゲットを変えたりする手法の方が得意です。さらに、確立された技術を基に製品やサービスを改良した方が成功する確率も高まるでしょう。日本が世界に誇る自動車も、元々日本人が発明したモノではありません。それらの機能性をより高めたことで世界をリードしてきました。この例からも分かるように、“種”を育てる発想が大事になります。

④オープンイノベーション×熟考力

最近、多くの企業が力を入れているオープンイノベーションは、異業種の企業が集まれば何か生まれるのではという期待感があるかもしれませんが、何もアイデアがない企業が集まっても何も生まれないのが現実です。
 
オープンイノベーションと必ずセットで必須となるのは、シンプルですが、熟考する力です。難易度の高い新規事業開発に覚悟を持って向き合い、考え抜いてアイデアを絞り出し、そのアイデアを多角的にどれだけ深掘りし、磨くことができるか。携わる人たちの熱量が成否を分けると言っても過言ではありません。

⑤初期検討コストをケチらない

新規事業の成否は最初の企画から構想の“フロント”のクオリティがカギとなります。しかし、投資を抑制する経営者が多いのが現実です。事業検討の初期段階で外部のサポートを活用せず、不十分な陣容でスタートするケースも目立ちます。将来的に数百億円規模の事業を目指すのであれば、初期段階で必要な投資を惜しんでしまっては成功の可能性を萎ませます。初期に数億円投資したとしても、成功すれば投資額の回収は十分可能です。ローンチしてから改良・改善していくにしろ、最初の構想はとても重要となります。

5.まとめ

新規事業の立ち上げのキーパーソンは経営者です。事業を緒につけるにはトップの理解は欠かせません。トップ直轄でプロジェクトを強力に推し進めたり、責任者へ大きな権限を与えることで、成功の確率は高まります。大企業の経営者層の多くは既存事業の枠組みでの成功者であり、畑違いの新規事業のプロではありません。そこを自覚していただき、新規事業についての自らの感覚すべてが正解と思わない意識を持つことも大切です。事業を大きく育てていくためには、外部パートナーの客観的視点も必要不可欠な要素となります。環境変化が激しい今、内製型の新規事業開発は限界に達しており、外部パートナーを活用することが成功の秘訣です。

この記事の執筆者

草加 好弘
草加 好弘
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
取締役
事業戦略事業部 事業部長