2023/02/14

ESGとは?読み方や意味、環境・社会・ガバナンスの簡単解説

#経営管理
国際連合(以下、国連)が責任投資原則(PRI)を提唱したのが2006年。それを契機に気候変動に対する長期的なリスクマネジメントや企業の長期的成長の観点からESG投資が脚光を浴び、今では投資家の間で定着した投資手法になりました。また、コーポレートガバナンス・コードでは、2022年から東京証券取引所プライム市場への上場企業に対し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が要請され、取り組みを表明する企業も増えてきています。この記事では、ESGが重要視される背景やSDGsについて解説していきます。

1.ESGとは

ESG(イーエスジー)とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取った略称です。2006年に国連が提唱した責任投資原則(PRI)を契機に生まれました。現在は企業が長期的に成長していくため、ESGの観点から事業機会やリスクを把握し、ESGに積極的に取り組んでいくことが重要だと考えられるようになりました。企業の収益創出を評価するベンチマークであり、『投資家目線』の基準と言えます。

2.ESGが重要視される背景

ESGへ取り組むこと自体が企業の長期的な成長を支える経営基盤の強化となり、投資家から評価されます。逆にESGに取り組まない企業は、企業価値が損なわれるリスクを抱えられるとされ、投資対象に選ばれない可能性が非常に高まります。また、2015年9月、世界最大の年金組織であるGPRI(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名したことで、ESG投資が加速していく流れができました。
 
東京証券取引所プライム市場への上場企業に対しては、コーポレートガバナンス・コードで気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が要請されました。早ければ、2023年にも有価証券報告書にESGを含むサステナビリティに関する情報開示が義務付けられる見通しとなっています。もはやESGを包括したサステナビリティ(持続可能性)への取り組みは、企業経営と切っても切り離せない密接不可分な関係となっていると言えるでしょう。

3.ESGとSDGsとの違い

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」と訳されます。国連が2030年までに持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17の目標と169のターゲットを設定しました。ESGは企業や投資家を対象としていますが、SDGsはE(環境)やS(社会)の領域が中心で、企業や投資家だけでなく、国や自治体、国際機関、NGO等のあらゆるステークホルダーが関わりを促しています。つまり、『投資家目線』のESGに対し、SDGsは『一般市民目線』と言えます。ESGに取り組むことで、結果的にSDGsという目標の達成につながるという関係となります。

4.SXとの違い

SXは、サステナビリティ・トランスフォーメーションの略です。企業がESGやSDGsの考え方を取り入れた事業・製品・サービスを提供し、持続的な成長を目指すという概念です。2050年を見据えた長期的な企業の在り方としては今後、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)の各領域を盛り込んだ上で基本戦略や事業戦略を策定しなければ、持続的な成長につながらず、生き残れなくなります。
 
SXは、ESGやSDGsを推進することで、より将来の価値を生み出すような付加価値を持った株価市場価値の形成を目指します。ESGは『投資家目線』、SDGsは『一般市民目線』ですが、SXは『企業目線』の位置づけとなります。これら3つの概念は似通っていますが、ステークホルダーの違いによって、どれに重きを置くかが変わってきます。
 
弊社といたしましては、企業戦略にESGやSDGsを取り込むことが主流となっていることから、それを戦略の核に据えて、SXに取り組んでいくことが最重要であると考えています。

5.ESG投資の種類

ESGの観点から企業を評価し、投資先を選定するESG投資は非財務情報の重要性の高まりを受け、機関投資家だけでなく、個人投資家の間でも広がっています。世界のESG投資の統計を発表している世界持続可能投資連合(GSIA)は、ESG投資を7種類に分類しています。

①ネガティブ・スクリーニング

化石燃料の発掘など環境破壊につながる事業をしていたり、武器等の倫理的ではないものを製造したりしている特定の業界や企業を投資対象から除外する投資手法です。除外される業界や企業の例としては、原子力発電、化石燃料、武器、ポルノ、アルコール、たばこ、動物実験等があります。

②ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス

欧州で1990年代から始まり、ESGの評価が高い企業は中長期的に高い業績が期待できるという視点で投資対象を選定する手法です。環境や人権、多様性等、ESGのテーマごとに基準を設け、総合的に評価が高いものを選んでいきます。

③国際規範スクリーニング

北欧で2000年代から始まり、国連の各機関をはじめ、国際労働機関(ILO)や経済協力開発機構(OECD)が定めるESG分野の国際規範を基に、その基準を満たしていない企業の株式や債券を投資対象から除外する投資手法です。基準とする規範については投資家が判断します。

④ESGインテグレーション

既存の投資先判断の中に、財務情報だけでなく、非財務情報を織り込むことで投資配分の判断を行うという投資手法です。重視する財務情報と非財務情報の割合は投資家が判断しますが、企業の競争力を測る上で有用なため、今後、さらなる成長・拡大が見込める手法です。

⑤サステナビリティ・テーマ投資

太陽光発電などの再生可能エネルギー、水等特定のテーマを設定し、関連する企業の株式や債券に投資する手法です。世界的にみれば少数派ですが、日本では馴染みのある投資手法となっています。

⑥インパクト・コミュニティ投資

社会や環境に対して大きなインパクトを与える企業に投資する手法です。財務パフォーマンスを多少犠牲にしてでも社会や環境へのインパクトを重視する手法と、社会や環境へのインパクトと財務パフォーマンスのどちらも追求する手法があり、そこを投資家が判断するのがポイントとなります。

⑦エンゲージメント/議決権行使

上記6つは投資対象を選定するための手法でしたが、エンゲージメント/議決権行使は、投資先との関わり方に関するものです。エンゲージメントは、ただ投資をするだけではなく、株主の立場から企業に働きかけることを意味します。議決権行使はエンゲージメントよりも踏み込んで企業の意思決定に関わる対応となり、『物言う株主』とも呼ばれ、委任状争奪戦に発展する場合もあります。

6.まとめ

ESGをはじめSDGs、さらにSXと似た概念はありますが、ESGに取り組む意義は、社会課題を解決したり、インパクトを与える製品・サービスによって社会的価値を提供し、利益を出すことで企業価値を向上させることです。ひいてはそれが企業にとって重要なステークホルダーである投資家に配慮することにもつながります。ESGに取り組むことで、企業が長期的かつ安定的に成長する道筋をつけることができれば、従業員のロイヤリティやエンゲージメント、モチベーション等の向上にもつながり、人的資本の観点からも好循環のサイクルを生むことができるでしょう。

この記事の執筆者

薄井 賢治
薄井 賢治
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部
プロフェッショナルディレクター
公認会計士

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