2023/07/31

財務会計と管理会計の違いや管理会計の目的を徹底解説!管理会計とは一体?!

#経営管理
管理会計は、企業における最も重要な意思決定ツールの1つです。管理会計によって事業の実態を把握・分析し、今後の経営目標や経営方針を定め、意思決定を行っていきます。環境変化が激しくなる中では、事業の実態を早く・正しく捉えることの重要性が高まっています。管理会計を事業に適した形で導入し、どれだけ活用できるかが、企業の競争力に大きな影響を及ぼします。
この記事では、管理会計の目的や財務会計との違い、管理会計における主な業務などについて解説します。

1.管理会計とは

管理会計は、自社の経営に活用する「内部向け」の企業会計となります。外部向けの財務会計が、信頼性や企業間の比較可能性の担保を重視するのに対して、管理会計は意思決定への有用性が重視されます。そして、内部利用目的なので、決められた会計処理やルールはありません。各企業が自らの事業の業況や活用の目的に応じて自由に定義し、活用することができます。

2.管理会計の目的

意思決定に必要な会計情報を提供するのが管理会計の大きな目的です。意思決定は経営者だけでなく、中間管理職、各現場レベルでも実施され、年度単位で行われたり日次で行われたりと様々ですが、その全てが管理会計の対象と言えます。
決まったルールが無く、活用の範囲も様々であることから、管理会計を構築する際には、その活用目的(誰のどんな意思決定に活用するか)を明確にすることがとても重要になります。

3.管理会計と財務会計の違い

企業会計には、財務会計と管理会計があります。財務会計が投資家等の外部への報告が目的であるのに対して、管理会計は社内での内部利用が目的です。財務会計は、金融商品取引法や会社法等の法令に準拠し、「一般に公正妥当と認められた会計基準」(GAAP)に基づいて作成されます。GAAPには、J-GAAP(日本の会計基準)・IFRS(国際会計基準)・US-GAAP(米国会計基準)などが代表的です。
 
一方、管理会計は財務会計と違い、自社の状況やその活用目的に応じて、独自の会計処理を用いることができます。例えば、財務会計では、売上計上するタイミングが厳密に定められ、実現時に計上しますが、管理会計上は受注見込み段階で、受注可能性を乗じて売上計上するなどの柔軟な処理も認められます。
財務会計は、信頼性や企業間の比較可能性、会計処理の継続性などが求められる一方、管理会計は意思決定への有用性が求められます。
 
また、財務会計では基本的には実績しか取り扱わないのに対し、管理会計では予算や見込みなども扱います。予算や見込みは経営者だけでなく投資家にとっても非常に有用な情報ではありますが、財務会計に求められる信頼性等の確保が非常に困難なため、財務会計の対象外となっています。
 
しかし、東証などの証券取引所のルールにおいては、業績予想の開示が求められています。これらの情報も外部の活用目的で一定の定められたルールで開示はするのですが、GAAPと言われる会計基準の中では定義されておらず、金融商品取引法や会社法上の開示対象には含まれていないため、一般的には財務会計に含みません。

4.管理会計の主な業務

①予実管理

予実管理は一定期間ごとに予算と実績を比較し、事業の進捗状況と業績評価を行う業務です。策定する単位(組織/事業/製品 等)や、対象期間や見直しの頻度等、事業の状況に応じて様々な実施方法が存在します。また、その策定方法にも様々なパターンがあります。例えば、トップダウン的に目標値を提示して予算を策定する方法もあれば、事業側の達成可能な数字を積み上げて全社の予算を策定するボトムアップで策定する方法もあります。限られた期間の中で、最大限ストレッチしつつも、実現性を持った予算の策定は非常に難しく、高度なマネジメントが求められます。
また、環境変化が激しくなっている昨今では、環境変化に応じていかに予算や見込みを更新し、機能させていくかが重要な検討ポイントとなっています。

②原価企画・原価管理

予実管理の中には原価の管理も当然含まれるのですが、利益を確保するための原価のコントロールは最重要課題の1つであるため、原価管理も1つの管理会計業務として、切り出して説明されるのが一般的です。原価に関しては、製品原価を正しく把握し、原価低減を図っていく原価管理をイメージしますが、生産開始前における原価の作りこみ「原価企画」が重要になります。ひとたび生産が開始すると原価を下げることができる幅は限られてきます。それよりも企画・設計段階の方が原価を下げられる幅は大きくなります。そこで、原価企画をしっかりと行ったうえで、量産に移ることが重要になります。

③意思決定会計

意思決定を行う場面で、過去の実績や外部データなどから将来を予測し、企業価値への影響度や業績影響を把握し、意思決定を行う業務です。
上記①、②が定常的に行われる業務であるのに対して、随時必要に応じて実施される業務になります。

例えば、売価設定や顧客戦略の立案、新設備の導入是非の検討等が挙げられます。
環境変化が激しく、従来のルーティン以外の意思決定が求められることが多くなっている現在においては、特にその重要性が増している業務と言えます。

特に、迅速な意思決定が求められる中、その都度データを収集していては、適時での意思決定ができません。そこで、基礎的なデータはデータレイクなど1か所に集約し、利用可能な状態にしておくことが求められています。

5.まとめ

管理会計は、特定の定められたルールがないからこそ、企業の特色が出るものであり、時にはその仕組みそのものが企業の成長を大きく支えることもあります。代表的なものとしては、アメーバ経営やスループット会計などが挙げられます。いずれもその企業の経営を行う中で、会計的な必要情報をどう用意するかの中で生まれた管理会計のやり方です。業績が良く強い会社で、管理会計を重視していない会社は見たことがありません。
環境変化が激しくなる現在においては、管理会計の重要性は益々高まるばかりです。

お客様の声

コニカミノルタ株式会社 様
コニカミノルタ株式会社 様
管理会計についてもレイヤーズさんにフォローアップいただき、我々にないところをしっかりケアして、プロジェクトの推進につなげられたのは非常に評価している点です。
管理会計についてもレイヤーズさんにフォローアップいただき、我々にないところをしっかりケアして、プロジェクトの推進につなげられたのは非常に評価している点です。

この記事の執筆者

杉野 林太郎
杉野 林太郎
株式会社レイヤーズ・コンサルティング
経営管理事業部 兼 ERPイノベーション事業部
ディレクター
公認会計士

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