2025/05/29NEW
なぜ企業はこぞってERPシステムを導入するのか

ERPとは何か
ERPと聞くとシステムを連想する方が大半かと思いますが、本来のERPはEnterprise Resource Planningの略で、経営資源最適化を意味するものです。すなわち、企業全体の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を有効活用するため、業務を横断的に管理し、経営の効率化を図るための概念・手法です。ERP=システムのイメージがついたのは、シームレスに統合された一つの基幹システムがERPと称して登場し、それまで業務機能別に作りこまれたシステム群から置き換えることで、“経営資源最適化”を実現する動きが広まったためです。したがって、統合型システムの導入はあくまで手段であり、導入が直ちに経営資源最適化に結びつくわけではなく、業務の進め方も合わせて変えないと本来の意味での“経営資源最適化”は実現しません。経営資源最適化のためにどんな情報が必要か、どのような業務にしていきたいか、といったところから検討することが求められます。そして、管理対象が経営資源であることから、検討範囲は特定の業務領域だけに収まらず、調達・製造、物流・販売を管理するSCM領域、顧客・営業活動を管理するCRM領域、企画・設計・保守を管理するPLM領域を巻き込んでの検討が必要となります。
なぜ、ERPシステムを導入するのか
ERP=システムではないことをふまえ、ERPを実現するためのシステムをERPシステムとして使い分けます。では、多くの企業ではなぜERPシステムの導入を行うのでしょうか。
導入の背景は企業により様々ありますが、大きく分けると2つに大別されます。
まず、会社全体・グループ全体のデータ把握の質・速度を押し上げることが挙げられます。グローバル化・多拠点化・多品種化が進む昨今、SCMの高度化が求められています。こうした状況下で従前のシステムが乱立した状態では、経営分析や集計を行う際に様々なところから情報をかき集めて紐づける必要が出てきます。さらに、システムごとに形式や入力方法が異なるとデータをクレンジングや変換する作業に骨を折らなければなりません。その結果、必要なデータを作り上げるまでに多大な時間を要し、データの正確性の担保も難しくなります。この状況をあらためるため、ERPシステムの導入により、データを一か所で整然と管理し、リアルタイムに近い形で正しいデータにアクセスできるようになります。
次に、経営資源の効率化が挙げられます。企業は成長・成熟を続ける中で、分業が進んでいき、他部署・他事業の業務が見えづらくなりがちです。その結果、自分が業務を行う際に必要な情報を聞いて回る、あるいは方々から問い合わせを受ける、といったように、本業とは異なる付帯業務に割かれる時間が増えていきます。これを改善するため、各担当者がERPシステムに必要情報を登録することで、システムを見れば必要な情報を相互にすぐに確認し活用することが可能となります。加えて、近年はパッケージ化されたERPシステムが展開されております。パッケージシステムは保守やアップデート対応をメーカー側で行うことが基本となる関係で、これを使用することで、システム保守に割く人員も他業務に充当することが可能となります。
ERPシステム導入の進め方とポイント
様々な業務領域でDX化が進む中、経営資源を最適化するため、ERPシステムの新規導入や既存システムからの更改への取り組みも活発になっています。その理由としては、個別最適の業務/システムを全社最適化した一気通貫のものに置き換えたい、あるいはカネ・モノの情報を集約することで限られた経営資源を有効活用したいというニーズがあるためです。しかし、導入活動がなかなかうまくいかない、何とか導入したとしてもうまく使いこなせていないという企業が散見されます。その原因としてよくあるのは、ERPに期待することが社内で統一できていないことです。経営層は他社の後塵を拝することのないようにDXを掲げる、IT部門は日ごろの運用保守の負担を軽減したい、エンドユーザーは目の前の仕事を効率化したい等々、思惑が異なることが大半です。その結果、業務の効率化が思うように進まず現行業務の焼き増しになる、業務に合わせて標準機能外のアドオンを多数つくりこんでしまう、
その結果開発期間が延びて費用もかさみ、保守の手間も減らなくなります。
【図1】ERPに期待することの齟齬
こうした事態にならないためには、ERPシステム導入の初手として、
- 導入目的を明確にして経営層・利用者・運用者の各ステークホルダーとコンセンサスを得ること
- 現状把握を着実に行い、目的達成までに障壁となる問題点を洗い出すこと
- 問題解決のための全社としての改革テーマを設定すること
がポイントとなります。弊社ではこれを「基本構想」と位置づけ、要件定義に先だって会社全体として上記の意思統一を図ることが必要と考えています。
【図2】ERP導入におけるフェーズの考え方
具体的には、まず現状業務を詳細に調査・分析し、概念としてのERP=経営資源最適化の余地のある問題点を拾い上げることが必要です。そして炙り出した問題点を解決に必要となる改革テーマを設定し、全社で認識を合わせます。場合によっては、現状の問題点がどの程度非効率を起こしているのか定量的に分析するため、業務量調査をすることも効果的です。こうすることで、要件定義フェーズ以降、判断に迷った時の道しるべが明確となり、先述のような失敗を防ぐことができるのです。
まとめ
ここまでERPの本来の目的に照らし合わせて、ERPシステム導入のポイントについて紹介してまいりました。弊社では様々な業態の製造業のクライアントを中心としてERPシステム導入の支援をしております。扱う製品や生産形態等の違いはありますが、既存の業務を丁寧に調査すると、たどり着く真因としての課題は意外にも類似していることが多く見られます。DX化を推進したいもののどこから手を付ければいいか分からない、効果的な業務改革を行いたい、といったニーズがありましたら、お気軽にお声掛け下さい。